遺言書より遺留分の権利の方が強い!遺留分でもめない遺言の残し方

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「最近は息子に世話になる機会が増えてきた。親の面倒は自分がみるから!という長男の思いがとても嬉しい。息子のことを考え、財産を引き継がせる遺言書を作成しようと考えている。妻や娘と差をつけてしまうことは良くないことなのだろうか・・・?」

遺言書について調べていると「遺留分に注意」となっていて、具体的にどのような注意が必要なのか、詳しく知りたいと思いますよね。

相続に対するご自身の本当の思いを遺言書に残すわけですから、実現されない遺言書では、作成する意味がありません。

本記事では、これから遺言書を作成される方に向けて、遺留分の意味と考え方についてご説明いたします。

1.遺言書で遺留分に注意が必要な理由は「相続争いを避けるため」

財産の分け方が偏った遺言書が残されていたら、納得できないと思う相続人もいるでしょう。遺留分は、相続人が最低限相続できる財産の割合であり、法律で守られています。

この遺留分を無視されてしまった相続人が、財産を多くもらった相手に対し、遺留分を請求して、揉めてしまうケースは少なくありません。

遺言書が原因で争いになることを避けるため、遺留分を考慮して、遺言書を作成されることをおススメいたします。遺産分割において、遺留分を請求する権利は、遺言書より優先されることになります。

図1:遺言書を書くときは遺留分に配慮する

2.遺言書を書くときの3つの遺留分ポイント

遺留分が保障されない相続人の方もいます。遺留分を主張できる権利がなければ、遺言書の内容が最優先事項となります。

以下の3つの遺留分ポイントをふまえ、ご自身の相続人のケースに応じた遺言書の内容をご検討ください。

2-1.ポイント1:遺留分を守ってあげなければならない人はだれか

奥さま以外の方は、相続できる順番が法律で決まっています。第一順位はお子さま、第二順位はご両親、第三順位はご自身のご兄弟です。

先順位の相続人の方がいない場合、次順位の方が相続人となります。この順番に該当する方と、奥さまが常に相続人となります。

相続人の中で遺留分が保障されている方は、奥さま、お子さん(お子さんが既に亡くなられている場合はお孫さん)、ご両親(ご両親がすでに亡くなられている場合は祖父母)に限定されています。

ご兄弟の方には遺留分の権利は認められていません。

図2:遺留分が保障されている方とは?
遺留分が保障されている方とは?

※法定相続人について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

2-2.ポイント2:具体的に配慮する遺留分の割合とは

最低限相続できる割合である遺留分とは、具体的には相続できる割合(法定相続分)の半分が限度とみなされています。

法定相続分は相続する方によって違いますので、遺留分の割合も変わってきます。表1の一覧表をご確認ください。

表1:法定相続人と遺留分の割合
法定相続人と遺留分の割合

※法定相続分について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

2-3.ポイント3:遺留分の具体的な計算事例

具体的な計算事例をご説明いたします。

【事例1】できるだけ長男に相続させる内容の遺言書を検討している

相続財産:3,000万円 
法定相続人:配偶者、長男、長女の計3名
遺留分の割合:配偶者1/4 長男1/8 長女1/8

配偶者の遺留分:3,000万円 × 1/4 = 750万円(法定相続分は1,500万円)
長女の遺留分:3,000万円 × 1/8 = 375万円(法定相続分は750万円)

3.遺留分に配慮する遺言書は公正証書遺言が一番オススメ

遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

自筆証書遺言は、手軽に書けますが、書式の不備があると無効になります。公正証書遺言は、費用がかかりますが、公証人という専門家が作成を代行しますので、書式の不備で無効になることはありません。

ご自身の思いを確実に残すことができるよう、遺言書は公正証書遺言がオススメです。

図3:公正証書遺言と自筆証書遺言
公正証書遺言と自筆証書遺言

※遺言書について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

4.どうしても遺留分に配慮できないときの2つの対策

遺言書を作成するならば、遺留分に配慮すべきであることをご理解いただけたと思いますが、それでもなお、すべての財産を特定の相続人だけに相続させたい思いが強く、遺留分に十分な配慮ができない場合のとるべき対策について2つご紹介いたします。

4-1.相続人全員に説明しあらかじめ同意してもらう

遺言書があれば、亡くなられた方の最後の思いとして、最優先されるべき内容と理解されますが、相続人同士の話し合いで全員が納得するのであれば、どのような分け方をしても問題はありません。

そのため、お元気なうちに、相続人になる方々にご自身の思いを伝え、財産の分け方について全員に納得してもらうことができれば、相続のとき、遺留分で争うことは避けられる可能性があります。

遺留分は相続人の権利なので、放棄することもできます。納得のいく話し合いができ、相続人になる皆さんの意思で遺留分の放棄手続きを家庭裁判所でおこなっていただければ、遺言書の内容は確実に実現できます。

4-2.遺言書の付言に理由と思いを書き記す

遺言書には、遺言者の方の願いや、財産を分けた理由、その経緯を自由に書くことができる「付言」を最後に記すことができます。

付言事項は、法的な拘束力はありませんが、遺言書を受け取った相続人の方に遺言者の方の思いを伝え、理解してもらうことができます。

付言は、相続人の方々に遺言者の方の願いを伝える手段として、とても重要な役目を担います。

5.遺留分の請求はすべて金銭で求められることになった

相続人となる方々との話し合いや、遺言書に付言を書き残す対策をしても、相続が発生した状況によっては、遺留分を請求される可能性があります。

遺留分に関する法律は、2019年7月の相続法の改正において、「遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求」に変わりました。
今までの遺留分減殺請求の規定では、相続財産が不動産と預貯金だった場合、それぞれの財産に対して遺留分を返還することが基本となっていました。そのため、不動産が共有名義となり、権利関係が複雑になるデメリットがありました。
「遺留分侵害額請求」では、遺留分はすべて金銭で請求されます。不動産が共有名義となる心配はなくなりましたが、遺留分に応じるためには、遺留分相当の金銭を準備しなければなりません。

金銭をすぐに用意できない場合、支払いの猶予を求めることはできますが、最悪な場合は相続した不動産を売却せざるをえない事態も考えられます。
遺留分を請求された場合のことを想定し、遺言書の内容を検討していく必要があります。

※遺留分侵害額請求権について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

6.まとめ

財産の分け方に偏りのある遺言書を作成する場合は、相続人が最低限相続できる割合である遺留分に配慮します。遺留分は請求されたら、遺言書よりも優先されるため、必ず応じなければなりません。

遺留分の権利が保障されている相続人は、奥さまとお子さんとご両親です。ご兄弟に遺留分の権利はありません。遺留分の具体的な割合は、法定相続分の半分を限度とします。

遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。それぞれ利点と欠点がありますが、確実に思いを伝えるためには、公正証書遺言が一番のオススメです。

遺留分の対策としては、何よりも相続人全員から理解を得ることです。相続人同士が納得していれば、遺留分を心配する必要はありません。

また、遺言書にご自身の相続への思いを自由に書くことができる付言を最後に書いておくことも、相続人の方々の合意への後押しになるでしょう。

遺言書は、ご自身の願いや考えを相続人の方に伝え、できるだけ相続手続きをスムーズに進めてもらうためのものです。

遺言書がもめ事の原因になっては意味がありません。遺留分の意味を理解し、できる対策を講じながら、実現できる遺言書の作成をご検討ください。

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