遺言代用信託と遺言信託は全く違う?目的にあった信託を利用しよう
- 遺言
遺言代用信託と遺言信託は、言葉が似ていて紛らわしい名称ですね。いったいどのような違いがあるのでしょうか。遺言書に関係するサービスなのでしょうか・・・?
簡単に説明すると、「遺言代用信託は、遺言書の代わりとなるサービス」のことであり、「遺言信託は、遺言書作成から執行までのサービス」のことです。
どちらも、いざという相続のときに、大切なご家族が困らないようにしておくための便利なサービスです。
本記事は、遺言代用信託と遺言信託はいったいどういうものなのか、基本的なポイントを分かりやすくまとめています。疑問解消にお役立ていただければと思います。
目次
1.遺言代用信託と遺言信託のサービス内容は“全く違うもの”
遺言代用信託と遺言信託は、ともに遺言に関係するサービスではありますが、全く異なるサービスです。
遺言を書き記した遺言書は、ご自身が財産をどのように引き継がせたいと考えているのか、そのお気持ちを相続人の方々に伝えるための書面ですよね。遺言書の効力は、ご自身が亡くなられた後に生じ、遺産分割協議よりも優先されるものとなります。
しかし、ただ遺言書を残しただけでは、万が一相続人全員が、遺言の内容に納得しなければ、ご自身の思いが実現しない可能性があることをご存知ですか。
遺言書の代わりとなる遺言代用信託は、「契約された遺言内容を確実に実現する仕組み」です。また、遺言信託は、「遺言書を作成・保管し、信託銀行が遺言執行者となって遺言内容を実現させる仕組み」となります。
内容は異なりますが、どちらも「遺言をより確実に実現するための信託サービス」です。
2.遺言代用信託と遺言信託の違い
遺言代用信託と遺言信託の違いについて、より詳しく確認してみましょう。
図1:遺言代用信託と遺言信託の違い
※法定相続人について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
※公正証書遺言について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
※遺言執行者について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
2-1.遺言代用信託とは
遺言代用信託は、生前に信託銀行と契約し、財産を預け、生存中は財産の運用、及び管理をおこなってもらい、ご自身が亡くなられた後は、あらかじめ指定したご家族に、財産を引き継ぐことができるサービスです。
個々の事情に合わせて、すぐに必要となる葬儀費用や当面の生活資金を一時金という形で受け取ってもらう、もしくは、年金式として月々定額を信託銀行から給付してもらい、長期に渡り、残されたご家族の生活を支援することも可能なサービスです。
信託された財産は、分割協議に関係なく、スムーズに、大切なご家族に引き継ぐことができます。
図2:遺言代用信託の仕組み
※遺言代用信託について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
2-2.遺言信託とは
遺言信託は、信託銀行などがおこなう遺言書の作成と保管、執行に関するサービスとなります。信託銀行がご自身の意向に沿って、遺言書作成のお手伝いをいたします。
遺言書は、公正証書遺言書に限られ、公証役場にて遺言書の作成をした後は、信託銀行が正本を保管します。
原本は公証役場での保管となります。
相続が発生すると、信託銀行などが遺言執行者として、遺言を実現するために手続きをおこないます。
図3:遺言信託の仕組み
※通知人:遺言者が亡くなられた事実を信託銀行等に連絡する人で遺言信託申込時に指定します。
3.遺言代用信託と遺言信託のどちらを選ぶ?判断する2つのポイント
遺言代用信託と遺言信託のどちらを利用すべきか、お悩みの場合の判断ポイントをお伝えします。
3-1.遺言代用信託は「生前の財産管理と確実な財産の承継」がしたいとき
遺言代用信託は、ご自身亡き後に奥さまやお子さんの生活が心配な方に適しています。
あらかじめ亡くなられた後の財産の受取額や、受取方法を契約で決めておくことができますので、確実に財産を引き継ぐことが可能です。
相続人に未成年の方がいらっしゃる場合などに、財産管理を目的として利用される方もいます。また、ご自身が認知症を発症するなど、判断能力が低下した時点で財産管理を「信託銀行等受託者」に移すという契約をしておけば、成年後見制度を利用せずに財産管理をすることができます。
図4:遺言代用信託に財産を信託して管理・運用する
3-2.遺言信託は「遺言書の作成から執行までをサポート」してほしいとき
遺言信託は、遺言書の作成、保管、執行までをトータルでサポートしてもらいたい方に適しています。
亡くなられた後は、財産の調査から煩雑な相続手続きまで、信託銀行などが遺言執行者となり、遺言書の内容に沿って実現していきますので、相続人同士のトラブルを防ぐことができます。
ご自身のお世話を献身的にしてくれた第三者の方に財産を引き継ぎたい、あるいは大切な財産を寄付して社会に役立てたいなど、相続人以外に財産を引き継ぎたいという場合にも適したサービスとなります。
図5:遺言信託で遺言書の内容に沿って財産を分配する
4.まとめ
遺言代用信託は、財産の運用や管理が特長で、亡くなられた後に財産をスムーズに引き継ぎたい方、残されたご家族の生活保障をお考えの方に適したサービスとなります。
遺言信託は、遺言書の作成・保管・執行まで、相続の煩雑な手続きをすべて信託銀行などに任せたい方に向いています。円満に財産の引継ぎがしたい方にお勧めです。
遺言代用信託と遺言信託は、サービス内容や目的が全く異なっていることがお分かりいただけたと思います。ご自身の状況やお考えに合うサービスを選んで、万が一の相続に備えておきましょう。