ふるさと納税の控除はいつ?控除額と正しく控除されたか確認する方法
- 所得税
「ふるさと納税をして税金が控除されるのはいつかしら。」
「ふるさと納税をして控除される税金はいくら位かな。」
「ふるさと納税をして税金がきちんと控除されたのか心配…。」
ふるさと納税は、ご自身の応援したい自治体に寄付をした場合に、寄付金額について所得税・住民税から控除を受けることができます。
控除される金額には上限がありますが、上限枠内でふるさと納税すると、実質、自己負担額2,000円で、寄付をした地域の特産品などのお礼の品(返礼品)を受け取ることができる魅力的な制度です。
本記事は、ふるさと納税の所得税・住民税がいつ控除されるのか、いくら控除されるのか、正しく税金が控除されたのかを確認したい方に向けて、ふるさと納税の税金の控除の仕組みについて、詳しくご説明いたします。
「ワンストップ特例制度」を利用された方は住民税のみの控除となりますので、5章を参考にしてください。
目次
1.ふるさと納税すると所得税と住民税が控除される
ふるさと納税で自治体に納付した金額は寄付金として扱われ、寄付金控除の対象です。確定申告することで、住民税・所得税の控除を受けることができます。(4章参照)
控除される金額は、寄付をした金額から2,000円(自己負担額)を差し引いた金額です。ただし、控除には上限額があり、収入や家族構成により異なりますので、ご自身の上限の目安を把握しておくことが大切です。
図1:ふるさと納税の控除額の計算式
所得税と住民税では控除の適用方法が異なります。所得税からの控除は、ふるさと納税をおこなった年の所得税から控除されます(2章参照)。住民税からの控除は、ふるさと納税をおこなった翌年の住民税から控除されます(3章参照)。
表1:会社員の方の年収・家族構成別の納税上限枠
※ふるさと納税のしくみについて詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
2.所得税の控除(還付)は確定申告の1~2ヶ月後
所得税の控除は、確定申告時に指定した口座へ振り込まれます。会社員の方は毎月の給与から所得税が源泉徴収されていますよね。この所得税は概算なので、年末調整で正しく計算しなおしますが、ふるさと納税の寄付金控除は、年末調整で対応していません。医療費控除や住宅ローン(初年度)控除を受ける方などと同様に、確定申告をして控除分を還付してもらいます。
確定申告後、実際に所得税の還付金を受け取るのは、ふるさと納税をした翌年の4~5月頃になります。
図2:所得税の控除は確定申告の1~2ヶ月後に一括還付される
2-1.所得税の控除額の計算方法
所得税の控除額は以下の計算式で求めます。所得税率は課税される所得金額により決まります。
図3:【所得税の控除額の計算式】
*令和19年まで所得税の税率は復興特別所得税の税率を加えた率となります。
*控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限です。
表2:所得税率表
【事例①】
年収600万円
家族構成:専業主婦の奥さまと高校生のお子さん1人
控除上限額:6万円(表1より)
所得税率:10%(課税所得金額195万円を超え330万円以下)
*課税所得金額=給与収入(年収)―(給与所得控除+その他の所得控除)
(上限額6万円までふるさと納税をした場合)
所得税からの控除=(6万円-2,000円)×10%×1.021=5,921円
5,921円が所得税から控除されます。
※所得税の課税対象額(源泉徴収票の見方)について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
2-2.国税還付金振込通知書にて控除を確認する
所得税の還付金額は確定申告書控えの「還付される税金」欄に記載されています。還付金が振り込まれるときに送付される「国税還付金振込通知書」(葉書)で確認することもできます。医療費控除など他にも受けている控除がある場合には、合算された金額が記載されることになります。
図4:国税還付金振込通知書にて支払金額を確認
3.住民税の控除はふるさと納税の翌年6月以降
住民税から控除される場合は、翌年6月以降の1年間で控除されます。住民税は、前年の収入に応じて翌年6月から納める後払いとなっているので、月々の住民税がふるさと納税の控除分だけ軽減されるということになります。
図5:住民税の控除は翌年6月以降月々減額される
3-1.住民税の控除額の計算方法
住民税の控除には「基本分」と「特例分」があり、控除額の計算式は以下のようになります。
図6:【住民税の基本分の控除額の計算式】
*控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
図7:【住民税の特例分の控除額の計算式】
*住民税からの控除(特例分)が住民税所得割額の2割を超えない場合は、上記計算式となります。
*住民税からの控除(特例分)が住民税所得割額の2割を超える場合は、控除の対象となる特例分は住民税所得割額×20%が上限となります。
【事例②】(事例①の場合の住民税額)
年収600万円
家族構成:専業夫婦の奥さまと高校生のお子さん1人
控除上限額:6万円(表1より)
所得税率:10%(課税所得金額195万円を超え330万円以下)
(上限額6万円までふるさと納税をした場合)
住民税の控除額(基本分)=(6万円-2,000円)×10%=5,800円
住民税の控除額(特例分)=(6万円-2,000円)×(100%-10%-10%×1.021)=46,278円
住民税の控除額は基本分と特例分を合計して
5,800円+46,278円=52,078円になります。
☆所得税が5,921円(2-1参照)、住民税が52,078円の控除となり、合計して57,999円
控除額の合計がおよそ58,000円となり、「寄付した金額6万円-自己負担額2,000円」となるので、控除が正しくおこなわれたことが分かります。
3-2.住民税決定通知書にて控除を確認する
所得税の控除は、毎年5~6月頃にお住いの自治体から送付される「住民税決定通知書」で確認することができます。(会社員の方はお勤め先から配布されることもあります。)住民税決定通知書の書式は自治体により異なりますが、「寄付金控除額」もしくは「税額控除額」の欄に記載されています。
図8:住民税決定通知書の税額控除欄で確認
*「市町村の税額控除額」と「都道府県の税額控除額」を合計した金額になります。
4.ふるさと納税を確定申告する場合
ふるさと納税の寄付金控除を受けるためには、「確定申告」あるいは「ワンストップ特例制度の申請」のいずれかの手続きが必要です。
もともと確定申告が不要で寄付先が5つ以内の会社員の方(給与所得者)は「ワンストップ特例」を利用できますので、5章も参考にしてください。以下の方は確定申告が必要です。
【確定申告が必要な方】
(1)自営業者や個人事業主(フリーランス)の方
(2)医療費控除を申請する方
(3)住宅ローン控除をうける方(初年度のみ)
(4)副業による所得が20万円を超えるサラリーマンの方
(5)年収2,000万円を超えるサラリーマンの方
(6)2ヶ所以上から給与をもらっている方
(7)事業所得や不動産所得がある方
(8)寄付した自治体が6箇所以上の方
図9:ふるさと納税の控除は確定申告やワンストップ特例の手続きが必要
確定申告の際は、寄付をした自治体から送付される「寄付金受領証明書」を添付して提出しますので大切に保管しておきましょう。
※ふるさと納税の確定申告・ワンストップ特例について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
4-1.申告期限は翌年3月15日まで
確定申告期間は、原則としてふるさと納税をした翌年2月16日~3月15日です。確定申告の期限に間に合わなかった場合等は、翌年1月1日から還付申告をすることもできます。還付申告の申告期限は5年です。
【2021年1月1日~12月31日にふるさと納税をおこなった方の申告期間】
確定申告:2022年2月16日~3月15日
還付申告:2022年1月1日~2026年12月31日
4-2.正しく控除されていないときは更正の請求をする
ふるさと納税の控除額を確認した際、控除がされていなかったり、控除額が少ない場合には、確定申告の提出期限より5年以内であれば、「更正の請求」の手続きをすることにより寄付金控除を受けることができます。控除額の計算が合わない等、正しく控除されているか不安な方は、最寄りの税務署に問合せしましょう。
5.確定申告不要で「ワンストップ特例」を利用する場合
「ワンストップ特例」とは、ふるさと納税をしたあとに、確定申告不要で寄付金控除が受けられる制度です。
確定申告は自営業の方や不動産収入がある方などが対象となっていますので、お勤め先から給与を受け取っている会社員の方は、通常は確定申告をしていませんよね。
ふるさと納税の利便性を高めるために、寄付金控除の申告以外に確定申告をする必要がない方は「ワンストップ特例」を利用することができます。
【ワンストップ特例を利用できる方】
(1)確定申告をする必要がない給与所得者であること
※1ヶ所からの給与、年収2,000万円以下、医療費控除なしなど
(2)寄附先した自治体が5箇所以内であること
図10:同じ自治体に複数回寄付しても1自治体とカウントする
5-1.ふるさと納税の翌年6月から住民税のみ控除される
ふるさと納税の「ワンストップ特例」を利用した場合は、翌年6月以降、1年間の住民税のみ控除となります。所得税の還付はありません。確定申告をすると所得税と住民税から控除されますが、ワンストップ特例の住民税の控除と控除総額は同じになります。
5-1-1.住民税の控除額の計算方法
住民税の控除額は寄付金額(上限額内)から2,000円を差し引いた金額となります。
毎月の住民税支払額から(寄付した金額-2,000円)÷12が減額されます。
図11:ワンストップ特例を利用すると住民税のみ控除される
5-1-2.住民税決定通知書にて控除を確認する
住民税決定通知書の寄附金税額控除欄に記載されている「控除されている税」の合計金額が「寄付した金額-2,000円」であれば控除が正しく行なわれたということがわかります。
ワンストップ特例制度を利用した場合、所得税からは控除されませんので、控除額を確認するには、「住民税決定通知書」のチェックのみ(3-2参照)でOKとなります。
5-2.【注意】ワンストップ特例の申請期限は翌年1月10日まで
ふるさと納税の申込みが完了すると、自治体からワンストップ特例の申請書が送付されてきます。申請期限は、ふるさと納税をおこなった翌年の1月10日必着です。同じ自治体に複数回申し込んでいる場合は、その都度申請書の提出が必要になります。
期限までに申請をおこなわないとワンストップ特例を利用できません。間に合わない場合は、翌年3月15日までに確定申告をすることで控除を受けることができます。何度も申請書を提出するのが面倒な方や、年1回の手続きで済ませたい方は、はじめから確定申告を選択することもできます。
図12:ワンストップ特例の申請は寄付の都度必要
5-3.確定申告をするとワンストップ特例の申請が無効になる
ふるさと納税のワンストップ特例を申請していた場合でも、のちに医療費控除等のため確定申告をする必要が出てくることがありますよね。ワンストップ特例と確定申告は併用できませんので、ワンストップ特例を申請済みの分は無効となり、確定申告に切り替えることになります。
確定申告では、ワンストップ特例により申請済みの分も含め、その年1年間におこなったすべての寄付金控除をしましょう。なお、確定申告が優先されるため、各自治体に連絡は不要です。
6.まとめ
ふるさと納税で受けられる寄付金控除には所得税と住民税があります。
税金の控除を受けるためには、確定申告(翌年3/15まで)またはワンストップ特例制度(翌年1/10まで)の手続きが必要です。
所得税の控除は、確定申告後1~2ヶ月で指定口座に振込みで還付され、住民税の控除は、寄付をした翌年6月から1年間、毎月の住民税が軽減されます。
寄付金の控除額は「所得税からの控除」「住民税(基本分)からの控除」、「住民税(特例分)からの控除」の合計金額となります。きちんと控除されているかチェックしましょう。
ふるさと納税の確定申告をされた方は、所得税と住民税を別々に計算する必要があり、特に控除金額の算出が難しくなっています。
ご自身のふるさと納税がきちんと控除されているか不安のある方は、お住いの税務署に問い合わせされることをおススメいたします。