特別受益に時効はない!持ち戻しに該当する3つのケースと知っておくべき3つの事

  • 贈与税

「父は生前、兄の為に学費や留学資金、家賃を払っていたけどこれは特別受益に当たるのかな。もう20年以上も前の話だけど、相続の時に考慮されるのだろうか。」

「そういえば父は生前、妹夫婦に家を購入していた。これは特別受益じゃないの?相続の時に話をしてもいいのか。いつまでなら認められるのかしら」

特別受益とは、相続人の中で亡くなられた方から特別な利益を受けることをいいます。
特別受益については亡くなられた方の相続財産と合算して、遺産分割をしなければならない(特別受益の持ち戻し)と定められています。これは生前の贈与分を相続の際に配慮することにより、相続人間の平等をはかるための制度です。

では、特別受益の持ち戻しには時効はあるのでしょうか?
今回は、特別受益における時効、また特別受益を主張できるケースとは?また特別受益の免除についてもご紹介します。

1.特別受益の持ち戻しに時効はない

特別受益とは、特定の相続人が亡くなられた方から遺贈や生前贈与により特別に受けた利益を言います。
相続財産を分割する際に、特別受益を受けた相続人が他の相続人と同じ額の財産を引き継ぐとなると、引き継いだ財産の内容に不公平が生じます。
そこで、遺産分割協議の際に、特別受益を相続財産に加えて相続分の計算をおこないます。これを特別受益の持ち戻しといいます。持ち戻しの対象となる特別受益に時効はありません20年、30年以上前の贈与であっても、特別受益として相続財産として持ち戻しされます。

2.特別受益に該当する贈与3つのケース

特別受益に該当する贈与は相続財産として持ち戻します。特別受益に該当する贈与とはどのようなものがあるのでしょうか。
特別受益にあたるかあたらないかの判断は、亡くなられた方の生前の経済状況、社会的地位にも左右されますが生前贈与があった場合、ほとんどのケースが特別受益にあたると考えられるでしょう。

ケース①婚姻・養子縁組のための贈与
・持参金・支度金
・高額な嫁入り道具

ケース②生計の資本としての贈与
・大学以降の学費で医学部進学あるいは留学した学費
・不動産購入の資金
・事業の開業資金
・扶養の範囲を超えた生活費
・現金・預貯金・投資信託・株式・土地や建物(無償使用を含む)など

ケース➂遺贈・死因贈与
・遺言によって遺贈された財産
・亡くなったら財産を渡すと贈与契約された財産

3.特別受益には持ち戻し免除がある

特別受益の持ち戻し免除とは、特定の相続人に財産を引き継ぎたい場合に、贈与者(亡くなられた方)が「特別受益は持ち戻しの対象にしない、免除する。」という意志を示されている場合、特別受益の持ち戻しは免除されます。その意志の示し方は2つあります。

3-1.遺言書の意思表示による免除

遺言書に生前贈与されたことと相続財産への持ち戻しは免除する、という内容が記されている場合は免除されます。遺言書による遺言者の意志は、法定相続よりも優先、尊重されます。

3-2.意思表示の推定規定による免除

遺言書による意思表示がなくても、意思表示があったものとして持ち戻しを免除される場合があります。
婚姻年数20年以上の配偶者に対する一定の居住用財産の贈与があった場合や、亡くなられた方への介護に対する贈与である場合などです。

特別受益は持ち戻す物として、相続人の公平を保つために定めていますが、亡くなられた方の意思を尊重するために持ち戻しの免除も設けられています。遺言書は最優先されるものといえます。

4.遺留分減殺請求の場合は10年以内が対象

遺留分とは、法定相続人が最低限相続できる財産の割合です。「遺言による侵害」または「生前贈与による侵害」があった場合、法定相続人は贈与を受けていた相続人に対して遺留分を請求することができます。これを遺留分減殺請求と言います。遺留分は遺言書による持ち戻しの免除が有効であっても侵害されません。遺留分の範囲内で遺言書の効力は求められます。

遺留分を計算する場合、相続発生より遡って10年以内の贈与が対象となります。注意が必要なのは、10年以上前の贈与に対しては遺留分の計算に含まないという事です。

5.特別受益における知っておくべき3つのこと

特別受益において知っておくべきことを3つご紹介します。

5-1 .特別受益を持ち戻した場合の相続分の考え方

特別受益があった場合は、遺産分割協議の際にその分を相続財産に加えて相続分の計算をおこないます。最終的には、特別受益を受けた相続人の相続分から、特別受益の財産分を差し引きます

※特別受益があった場合の相続割合の計算について詳しくはこちらをご覧ください。

5-2.特別受益は証拠を揃えて主張する

特別受益は遺産分割協議の際に主張する必要がありますが、そのためには証拠が必要です。
亡くなられた方の通帳や、不動産の登記事項証明書等を確認して特別受益に当たるものがないか確認します。
遺産分割協議が整わない場合には家庭裁判所へ調停の申し立てをおこない、それでも合意できない場合は審判となり、裁判官が相続分を決定します。

5-3.特別受益が主張できる相手は相続人のみ

亡くなられた方が生前にどこかの団体に寄附をしていたり、お世話になった方などに贈与していた場合にはその方に対して特別受益の主張をすることはできません。
特別受益であることを主張できる相手は亡くなられた方の相続人だけです。

6.まとめ

特別受益とは、特定の相続人が亡くなられた方から遺贈や生前贈与により特別に受けた利益です遺産分割協議の際に、特別受益を相続財産に加えて相続分の計算をおこない、相続人の間での公平を保ちます。これを特別受益の持ち戻しと言います。持ち戻しの対象となる特別受益に時効はありません。20年、30年以上前の贈与であっても、特別受益として相続財産として持ち戻しされます。

ただし、特別受益は相続人の公平を保つために定めていますが、亡くなられた方の意思を尊重するために遺言書等による意思表示により持ち戻し免除される場合があります。

また、遺留分侵害請求により最低限相続できる財産の割合を特別受益を得た相続人へ求める場合には、相続発生より遡って10年以内の贈与が対象となります。注意が必要なのは、10年以上前の贈与に対しては遺留分の計算に含まないという事です。

他の相続人が特別受益を得ているのではないか、持ち戻しをしたいがどのようにしたら良いかなどご不明な点等がございましたら是非お気軽にお近くの税理士にお問い合わせください。

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