親の遺言を探したい!公正証書遺言の遺言検索システムを利用する方法
- 遺言
「お父さんがまだ元気だった頃、公正証書遺言を作ったと言っていたな。公正証書遺言は、どのように探すのだろうか」
「お父さんの葬儀が終わってやっと一息ついたところで相続手続きについて調べていたら、『遺言書を探しましょう』とある。家にはないようだけど、もしかしたら公正証書遺言を残しているかもしれない…」
亡くなられた方が遺言書を残していた場合は、遺産分割において法定相続よりも遺言書の内容が優先されます。そのため相続が発生したらまず行わなければいけないのが遺言書の有無の確認です。
遺言書は、全文自筆で作成する自筆証書遺言、公証役場にて遺言者の口述を元に公証人が作成する公正証書遺言、封緘した遺言書の存在を公証人に証明してもらう秘密証書遺言の3種類があります。
これらのうち公正証書遺言は全国の公証役場で検索することができます。
本記事では、公正証書遺言の検索の手続きについて詳しくご説明します。
目次
1.公正証書遺言は全国の公証役場で検索できる
公正証書遺言の存在の有無は、全国の公証役場の「遺言検索システム」で検索できます。平成以降に作成された公正証書遺言については、作成公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等について、遺言情報管理システムにデータベース化されており全国どこの公証役場からでも照会できます。
2.公正証書遺言の検索システム利用概要
公正証書遺言の遺言検索システムは、相続人などの利害関係人のみ検索することができます。本章では公正証書遺言を検索できる人や費用、必要書類、注意点についてご説明します。
2-1.公正証書遺言を検索できる人
相続発生後に公正証書遺言を検索する場合は、法定相続人や遺言で指定された受遺者、遺言執行者といった利害関係人とそれらの代理人に限り、検索することができます。なお、相続発生前は遺言書の秘密保持のため、遺言者とその代理人しか検索することはできません。
【相続発生後に公正証書遺言を検索できる人】
・法定相続人
・受遺者(遺言により指定された方)
・遺言執行者
・上記の代理人
2-2.検索の費用と必要書類
公正証書遺言の検索は無料です。
【相続発生後、相続人などが検索する際の必要書類】
①遺言者が亡くなられた事実を証明する除籍謄本等
②遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本(利害関係人であることを証明する書類)
③申出人の本人確認書類:下記⑴⑵のいずれか
⑴マイナンバーカード、運転免許証等の顔写真付き公的身分証明書
⑵実印および印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
【代理人が検索する際の必要書類】
①遺言者が亡くなられた事実を証明する戸籍謄本等
②遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本(利害関係人であることを証明する書類)
③相続人(利害関係人)の実印を押印した委任状および印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
④代理人の本人確認書類:下記⑴⑵のいずれか
⑴マイナンバーカード、運転免許証等の顔写真付き公的身分証明書
⑵実印および印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
公正証書遺言の検索では遺言の内容まで確認することはできません。遺言書原本が保管されている公証役場で閲覧や謄本の請求手続きが必要です。なお原本の閲覧は1回につき200円、謄本の発行は1枚につき250円の手数料がかかります。
3.公正証書遺言の検索4STEP
公正証書遺言の検索の手続きは4STEPです。
図1:公正証書遺言の検索4STEP
図2:照会結果通知書の例
必要書類を揃えて最寄りの公証役場で検索手続きを行うと、遺言検索システム照会結果通知書が交付されます。検索の結果、公正証書遺言がある場合は閲覧や謄本交付の請求の手続き(4章参照)へ進みます。
4.公正証書遺言の閲覧・謄本交付の請求
公正証書遺言が存在することが分かった場合は、原本の所在地の公証役場で閲覧や謄本交付の請求の手続きをすることができます。
2019年4月1日から、遺言公正証書等の原本を保管する公証役場が遠隔地である場合には、最寄りの公証役場で手続きをすることによって、公正証書遺言の正謄本を郵送で請求することができるようになりました。郵送請求の場合は、署名認証が必要なため認証1件につき2,500円の手数料がかかります。
請求できる人と必要書類は、検索時と同様です。
5.自筆証書遺言は法務局の保管所で確認する
遺言者から「遺言を保管している」と話を聞いていたが、公正証書遺言を検索しても見つからないことがあります。もしかしたら作成された遺言書は自筆証書遺言で、法務局の保管制度を利用している可能性があります。
「遺言書保管事実証明書」の交付請求(1通につき800円)やデータによる遺言書の閲覧は、遺言書の原本が保管されている遺言書保管所に関わらず、全国どこの法務局においても手続きをすることができます。請求できる人は相続人、受遺者等と遺言執行者等になります。
※自筆証書遺言の保管制度について詳しくはこちらをご覧ください。
6.まとめ
公正証書遺言は全国どこの公証役場でも検索することができます。
遺言書は亡くなられた方の最後の意思表示で尊重されるべきとされており、遺言書の内容は最優先されます。そのため相続が開始したら、まず初めに遺言書の有無を確認する必要があります。
遺言書を残しているかどうか分からない場合は、念のため最寄りの公証役場で検索することをおススメいたします。
公正証書遺言の検索では、遺言書の内容までは開示されません。内容の閲覧や謄本の交付請求を行う場合は、別途手続きが必要になります。