【遺言書の検認とは】検認しないと相続手続できない!申立て4STEPと注意点

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「検認とはどんな手続きなのかしら…。」
「遺言書を検認しないとどうなるの?」

お父さまの遺言書を見つけて、どうしたらよいのだろうか、「検認」が必要だと聞いたけれど「検認」ってなんだろう、とお困りではありませんか。

遺言書は亡くなられた方の最後の意思として最大限に尊重されるため、法定相続よりも優先されます。遺言書が作成されていた際は、「検認」の手続きをおこなって遺言書の存在や内容を明確にしておかなくてはなりません。

本記事では、遺言書の検認とは何か、遺言書の種類により検認の要不要があるということ、検認の申立て手続きの流れについて詳しくご説明いたします。

検認のときに遺言書の無効を主張したいとお考えの方に向けて、注意点も参考にしていただければと思います。

1.「検認」とは遺言書の存在と内容を確認する手続き

「検認」とは、遺言書の存在と内容を確認する手続きです。家庭裁判所で相続人の立ち合いのもと行われます。検認で行うことは下記2つです。

【検認で行うこと】
①相続人に対し遺言書の存在と内容を知らせる
②遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認日現在における遺言書の内容を明確にして、偽造・変造を防止する

検認は、遺言者の意思を実現するために遺言書の内容を不正に書き換えることを防ぎ保全する目的で行います。遺言書の書式に不備があるかを確認するなど有効無効を判断する手続きではありません。そのため、検認手続き後に遺言が無効になることもあり得るということに注意が必要です(5-3参照)。

2.法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言は「検認」が必要

遺言書の種類は公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3つです。すべてに検認が必要なわけではありません。

公正証書遺言は2人の証人の立ち合いのもと、公証役場の公証人によって作成された遺言書です。原本は公証役場に保管されるため偽造や改ざんの心配がないことから、検認は不要です。また、法務局における保管制度を利用した自筆証書遺言も検認は不要です。

一方、法務局の保管制度を利用せずご自宅や銀行等で見つかった自筆証書遺言は検認が必要です。秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま公証人と証人2人以上に遺言書の存在だけを公証役場で証明してもらう遺言書です。秘密証書遺言も遺言者自身が保管するため検認が必要です。

表1:保管制度を利用していない自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認が必要
保管制度を利用していない自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認が必要

図1:法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は検認不要
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は検認不要

※公正証書遺言について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

3.遺言書の検認をしないと相続手続きができない

遺言書の検認を家庭裁判所で行うのは大変だ…、遺言書の内容に相続人全員が納得しているから検認しないで遺産分割してもよいのではないかとお考えかもしれませんね。

遺言書の検認をしないと相続手続きを進めることができません不動産の名義変更や預金の払い戻しの際、検認済みの遺言書の提出を求められます。法務局や金融機関等は、遺言書により誰がどのような割合でどの財産を取得するのかを確認しますが、検認済みの遺言書を提出することにより、遺言書の存在を相続人全員が知っており、偽造や変造がされていないことを証明できます。

【遺言書が必要な相続手続きの例】
・不動産の名義変更(相続登記)
・預貯金の払い戻し、名義変更
・有価証券の名義変更

4.遺言書の検認手続きの流れ

遺言書の検認は、遺言者の最後の住所地にある家庭裁判所に申立てを行います。遺言書は作成後に自由に内容を変更したり撤回したりすることができるため、複数の遺言書が発見されることもあります。遺言書が2通以上ある場合は、すべての遺言書を検認しましょう。

内容が重複していない部分は双方とも有効であり、重複している部分については原則として、日付の新しい遺言書を優先して相続手続きを進めます

4-1.検認の申立てができる人

検認の申立人は、遺言書の保管者(遺言執行者が多い)または遺言書を発見した相続人です。

4-2.必要書類と費用

まずは申立ての必要書類を準備します。申立て費用は、遺言書1通に対し800円です。連絡用郵便切手代は家庭裁判所ごとに定められていますのでお問い合わせください。その他、戸籍謄本(1通450円位)、除籍謄本(1通750円位)等の取得代金がかかります。

【必要書類】
①申立書
②遺言者の出生から亡くなられるまでのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
③相続人全員の戸籍謄本
④遺言者のお子さん(およびその代襲者)が亡くなられている場合は、その方の出生から亡くなられるまでのすべての戸籍謄本

*相続人と遺言者の関係により追加で書類の提出が必要な場合があります。

 

【費用】
①検認費用:遺言書1通に対し800円(収入印紙)
②連絡用郵便切手代
③必要書類(戸籍謄本等)取得費用

 

4-3.検認手続き4STEP

検認の申立て手続きは4STEPで行います。

【STEP①】家庭裁判所に申立て:申立書と必要書類を提出します。


【STEP②】検認期日の通知:家庭裁判所から相続人全員に検認期日の通知書が送付されます。


【STEP③】検認:家庭裁判所は申立人・相続人の立ち合いのもとで遺言を開封し、遺言の用紙や内容、日付などを確認して「検認調書」を作成します。


【STEP④】「検認済証明書」の申請:相続手続きで必要となる検認済証明書を取得します。
遺言書1通につき150円の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。また、遺言書の内容によっては、この時に「遺言執行者選任申立て」をします。

家庭裁判所に申立てをしてから「検認済証明書」を受けとるまで約1ヶ月かかります。

検認には手続きの期限がありませんが、期限のある相続手続き(相続放棄や相続税申告期限)に間に合わない可能性がありますので、相続開始後すみやかに申立てをしましょう。

※遺産相続の期限について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

5.遺言書の検認の3つの注意点

「遺言書は開封してはいけないと知らずに開封して中身を見てしまった…」「検認期日にどうしても外せない仕事がある」「亡くなられた方の生前の言動からこのような遺言書を書くはずがない!!」といったお悩みや発見された遺言書に納得がいかないこともあるでしょう。

遺言書の検認の3つの注意点についてご説明します。

5-1.検認前に遺言書を開封してはいけない

遺言書を発見した場合、勝手に開封してはいけません。5万円以下の罰金が科せられることもありますので注意が必要です。ただし、検認前に開封してしまっても遺言書の効力がなくなったり相続権を失うことはありません。

図2:検認前に遺言書を開封してはいけない
検認前に遺言書を開封してはいけない

※遺言書の開封について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

5-2.申立人以外の方は検認に欠席してもよい

検認の実施日には申立人は必ず出席しなければなりません。申立人以外の相続人は欠席しても構いません。また、弁護士など代理人に出席を依頼することもできます。相続人全員がそろわなくても検認手続きはおこなわれ、欠席した方には「検認済通知書」が送付されます。

なお、検認の内容は「検認調書」に記載されますので(4-3参照)、「遺言書検認調書謄本」を申請することにより把握することができます。

5-3.検認で遺言書の無効は判断されない

検認は、遺言書の有効無効を判断する手続きではありません(1章)。遺言書がご本人の筆跡ではない、あるいはご本人が遺言の内容を理解せずに作成したのではないかなど偽造・変造に疑いがあり、遺言書の無効を主張したいとお考えかもしれません。このような場合は、検認後に裁判所に遺言無効確認の訴訟を申立てる必要があります。

図3:検認で遺言書の無効は判断されない
検認で遺言書の無効は判断されない

※遺言書の無効について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

6.まとめ

「検認」は、遺言書の存在と内容を確認する手続きです。公正証書遺言と法務局で保管されていた自筆証書遺言以外の場合に必要です。検認は、遺言書の証拠保全を目的としているため、書式が法律に沿ったものであるか等の有効無効を判断するものではありません。

遺言書の検認をしないと、相続手続きを進めることができません。不動産の名義変更や預金の払い戻しなどを行う場合には、「検認済証明書」付の遺言書の提出を求められます

検認は家庭裁判所に申立てが必要で、完了まで1ヶ月程度かかります。事前に準備が必要な亡くなられた方の戸籍謄本等は複数の市町村役場から取り寄せることもありますので、すべて収集するまでにかなりの時間を要することもあります。相続には期限のある手続きがありますので、相続に強い専門家にご相談されることをおススメ致します。

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