年金の手続きはすみやかに!相続時の年金の手続きと遺族年金・一時金
- 相続手続き
「夫が受け取っていた年金の手続きをしないといけない。」
「夫が生活を支えてくれていたから、これからの生活が心配。私がもらえるお金はあるかしら?」
ご家族が亡くなられると市役所の手続きなど色々な手続きを行わなくてはなりません。ご主人が公的年金の受給を受けていたら、年金を停止する手続きも行わなくてはいけません。また、ご主人がご家族の生計を支えていたら、残された奥さまが受け取れる遺族年金や一時金についても確認する必要があります。
本記事では、公的年金を受給していた方が亡くなられた場合の年金停止の手続きと未支給年金の請求手続き、残されたご家族が受け取れる遺族年金や一時金について詳しくご説明します。
目次
1.相続が発生したら年金の手続きをすみやかに行う
相続が発生した際、年金関係で行う手続きは主に2つあります。
1つ目は、亡くなられた方が年金を受け取っていた場合、年金の受給停止と未支給の年金を受け取る手続きです。
2つ目は、ご遺族がどのような年金や一時金を受け取れるかを知り、請求する手続きです。遺族年金や一時金は請求しなければ受け取れません。手続きの請求期限がありますので、すみやかに手続きを行いましょう。
図1:年金の手続き
2.亡くなられた方の年金受給を停止する
年金は年6回、偶数月の15日に前月、前々月分が支給され、亡くなられた月の分まで受け取ることができます。年金は後払いですので、年金受給の停止の手続きをすると未支給の年金が発生します。未支給年金については3章でご説明します。
図2:年金支給
2-1.年金受給権者死亡届を提出
日本年金機構に個人番号(マイナンバー)が登録されている方は、「年金受給死亡届」の提出を省略できます。
個人番号を登録していない場合、年金の受給停止の手続きは、「年金受給者死亡届」を管轄の年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。窓口に直接持参する他に郵送でも手続きができます。必要な書類は、亡くなられた方の年金証書と死亡の事実がわかる書類(戸籍抄本、死亡診断書、住民票)です。
受給停止手続きの期限は、国民年金は亡くなられてから14日以内、厚生年金は亡くなられてから10日以内です。
図3:年金受給権死亡届と期限
表1:年金受給者死亡届のチェックリスト
手続き | 年金受給者死亡届の届け出 |
請求先 | 管轄の年金事務所 |
手続きする人 | だれでも |
提出書類 | □年金受給者死亡届 |
必要書類 |
□亡くなられた方の年金証書 □戸籍抄本・死亡診断書のコピー・死亡届の記載事項証明書(死亡の事実を証明できる書類) |
2-2.手続きが遅れたとき過払いの年金を返還しなくてはならない
年金の受給停止の手続きが遅れ、亡くなられた翌月以降の分の年金も受け取ってしまうと、。過払い分の返還をしなければなりません。葬儀が終わりましたら、すみやかに手続きを行いましょう。
3.未支給年金の請求をおこなう
2章で記載しましたが、年金は2か月ごとの後払いなので、未支給の年金が必ず発生します。年金受給権者死亡届を提出する際、一緒に未支給年金の請求を行います。
3-1.未支給年金を請求できる遺族
未支給年金を請求できるのは、亡くなられた方と生計を同じくしていたご遺族です。請求できる順位があり、①配偶者②お子さん③ご両親④お孫さん⑤祖父母⑥ご兄弟姉妹⑦それ以外の3親等内の親族の順で請求できます。先の順位の方がいる場合、後順位者は受け取れません。同順位の方が2人以上いた場合は、そのうちの1人がした未支給年金の請求は全員のために全額についてしたとみなされます
請求できるご遺族がいない場合は、未支給年金の請求はせず、年金受給権者死亡届のみ提出します。
図4:未支給年金を請求できるご遺族の順位
3-2.未支給年金請求書を提出
未支給年金請求書と年金受給者死亡届は複写になっていますので一緒に年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。
未支給年金を請求する際の必要書類は、亡くなられた方の年金証書と戸籍謄本(亡くなられた方と請求する方の身分関係が証明できる書類)、亡くなられた方の住民票と請求される方の住民票(生計を共にしていたことがわかる書類)、受け取りを希望する金融機関の通帳または口座番号がわかるものです。必要な書類は、下記のチェックリストで確認してください。
図5:未支給年金の請求書
表2:未支給年金請求のチェックリスト
手続き | 未支給年金請求の届け出 |
請求先 | 管轄の年金事務所 |
手続きする人 | 生計を共にしていた①配偶者②子③父母④孫⑤祖父母⑥兄弟姉妹⑦それ以外の3親等で優先順位の高い人 |
提出書類 | □未支給(年金保険給付)請求書 |
必要書類 | □亡くなられた方の年金証書 □戸籍謄本(亡くなられた方と請求する方の関係がわかる書類) □死亡受給者の住民票と請求者の世帯全員の住民票(亡くなられた方と生計を共にしていたとわかる書類) □受け取り希望の金融機関の通帳または口座番号がわかるもの |
期限 | 請求期限は5年 |
4.ご自身が受け取れる遺族年金
遺族年金とは、一家の大黒柱が亡くなられたときに残されたご家族の生活保障を目的とした年金制度です。
遺族年金には「遺族基礎年金」(国民年金:自営業など)と「遺族厚生年金」(厚生年金:会社員など)の2種類があります。亡くなられた方の加入状況により、遺族基礎年金のみ、もしくは遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取ります。これらの遺族年金を受け取るには、亡くなられた方の年金の納付期間や受け取る方の年齢、お子さんの有無などの要件があります。
図6:遺族年金のチャート
4-1.遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金に加入している方が亡くなられた時に、亡くなられた方によって生計を維持されていたお子さんのいる配偶者またはお子さんに支給されます。お子さんのいない配偶者には支給されません。
表3:遺族基礎年金の要件
亡くなられた方 いずれか該当 |
□国民年金に加入中だった □国民年金に加入して、日本に住所がある60歳から65歳未満の方 □老齢基礎年金を受けていた・受給資格期間(25年)を満たしていた |
請求できる方 生計を共にしていた |
□子のある妻・夫(年収850万未満) □子 |
時効 | □亡くなられた日の翌日から5年 |
年金額 | 年金額(令和5年4月から) 795,000円+子の加算(67歳以下の場合) 792,600円+子の加算(68歳以上の場合) 子の加算 第1子・第2子 各228,700円 第3子以降76,200円 |
4-2.遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた方が亡くなられた時、亡くなられた方に生計を維持されていたご遺族に支給されます。支給要件を満たせば遺族基礎年金とあわせて受け取ることができます。
表4:遺族厚生年金の要件
亡くなられた方 いずれかに該当 |
□厚生年金に加入していた □被保険者期間中の疾病が原因で初診の日から5年以内に死亡した □老齢基礎年金の資格期間(25年)を満たしていた □1級2級の障害厚生年金の受給権があった |
請求できる人 生計を共にしていた |
□①妻、子、55歳以上の夫②55歳以上の父母③孫④55歳以上の祖父母 の①~④の順で上位順位の方から請求できる |
時効 | □亡くなられた日の翌日から5年 |
年金額 | 遺族厚生年金は、遺族基礎年金のように定額がありません。亡くなられた方の納めた保険料によって金額が変わります。 年金事務所やねんきんダイヤルで、ご確認ください。 |
4-3.寡婦年金
遺族基礎年金の要件にあてはまらなかった場合、寡婦年金と死亡一時金どちらかを選択して受給することができます。寡婦年金は、妻が対象の年金です。
表5:寡婦年金の要件
亡くなられた方(夫) | □国民年金第一号被保険者として保険料納付済期間が10年以上ある □老齢基礎年金を受けたことがない □障害基礎年金の受給権者だったことがない |
生計を共にした請求できる人(妻) | □夫の死亡当時、60歳~65歳未満 □繰上げ支給老齢基礎年金を受けてない □10年以上継続して婚姻関係にある |
時効 | □亡くなられた日の翌日から5年 |
年金額 | 夫の第一号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金の4分の3 |
4-4.死亡一時金
遺族年金も寡婦年金にもあてはまらなかった場合、死亡一時金を受け取れる可能性があります。下記の表で、死亡一時金の要件を確認しましょう。
表6:死亡一時金の要件
亡くなられた方 | □国民年金の第一号被保険者として保険料納付期間が36ヶ月以上ある □老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがない |
請求できる人 | □生計を共にしていた遺族 □①配偶者②子③父母④孫⑤祖父母⑥兄弟姉妹 ①~⑥の順で上位順位の方から請求できる |
時効 | □亡くなられた日の翌日から2年 |
年金額 | 納付期間によって異なり、12万~32万 |
4-5.手続きに共通して必要な書類
遺族基礎年金、遺族厚生年金、寡婦年金、死亡一時金を受け取るには、要件を満たしたご遺族が、請求書と必要書類を年金事務所または年金相談センターに提出します。遺族年金の種類や請求者により必要な書類が異なりますので、事前に年金事務所や街角の年金相談センターに確認しましょう。
表7:手続きに必要な書類
共通で必要な書類 |
□亡くなられた方と請求者の年金手帳 |
遺族年金で必要な書類 |
□死亡者の住民票の除票(住民票の写しに含まれているときは不要) □お子さんの収入が確認できる書類(学生証など、義務教育終了前は不要) □死亡診断書のコピー |
遺族年金で状況によって必要な書類 |
□年金加入期間確認通知書(共済組合に加入していた期間があるとき) |
5.まとめ
亡くなられた方が年金を受け取っていた場合は、すみやかに年金停止の手続きと未支給年金の請求の手続きを行います。
また、亡くなられた方が生計を担っていた場合は、受け取れる遺族年金と一時金がないか確認しましょう。遺族年金や一時金は、受給要件を満たしていても請求しなければ受け取ることができません。受給要件や請求期限、必要書類を確認して、忘れずに請求の手続きを行いましょう。