これで安心!相続税を遺産から払う3ステップと払えないときの対処法
- 相続税
「相続税は遺産から支払えるのかしら?」
相続税が高額だと分かり、できれば遺産から払いたいとお考えかもしれません。
相続税は、相続や遺贈によって財産を引き継いだ方がご自身の財産から支払うものです。
相続が開始すると、遺産は相続人全員の共有になりますので、自由に使うことはできません。遺産分割をして遺産を引き継ぐ手続きが必要です。相続税申告期限までに遺産分割が完了して遺産がご自身の財産となった場合に遺産から支払えるということになります。
相続税の申告と納税期限は、亡くなられことを知った日の翌日から10ヶ月です。相続税は原則として現金一括で支払わなければなりません。
相続税を遺産から払おうと考えている場合には、期限内に遺産分割の手続きを終えて資金を準備しておく必要があります。
本記事では、相続税を申告期限内に遺産から払う手順と相続税を払う場合の注意点をご説明いたします。
目次
1.相続税は引き継いだ後の遺産から払う
相続が開始して、相続人が複数いる場合には遺産は共有になります。遺言がある場合には遺言の内容に従って遺産の引継ぎを行います。遺言がない場合には遺産分割協議で遺産をどのように分けるかを決めます。
相続税を遺産から払うためには遺産分割をして引継ぎを完了させる必要があります。遺産分割前の遺産では相続税を払うことはできません。
遺産分割をして相続手続きを終えて初めて、遺産は各相続人の財産となり自由に使うことが可能となります。
図1:遺産分割後の遺産で相続税を払うことができる
2.相続税を遺産から払う3ステップ
相続税の支払いは現金一括納付が原則です。申告と納税の期限は亡くなられてから10ヶ月以内です。
期限に間に合うように、引き継いだ遺産を納税資金として準備しておかなければなりません。
相続税を遺産から払うための3つのステップを説明します。
図2:相続税の申告期限は亡くなられてから10ヶ月
2-1.遺産分割協議を調える
相続税を遺産から払うためにはまず遺産分割協議を調えて遺産の引継ぎを完了させます。遺産分割協議は相続人全員でおこない、遺産の分け方について同意を得られたら遺産分割協議書を作成しましょう。
亡くなられた方の預金口座は相続手続きが終わるまで金融機関により凍結されます。亡くなられた方の遺産を相続する方が決まり、預金口座の凍結解除の手続きをするまで原則として引き出すことはできません。(相続預金の払戻し制度については4章参照)
注意点として、遺産分割が調う前(凍結される前)に預金を引き出すことはトラブルにつながりますので止めましょう。
図3:遺産分割協議が調う前に預金を引き出してはいけない
2-2.遺産を現金化して納税資金の準備をする
相続税は現金一括納付が基本とされているため、遺産分割が終わったら相続手続きを進めて相続した遺産を現金化します。預貯金は解約して払い戻しの手続きをおこないます。生命保険は請求の手続き、不動産や株などは売却手続きをして現金に換えます。
配偶者以外の相続人が不動産を相続して小規模宅地等の特例の適用を受ける場合は、申告期限まで保有することが要件です。売却してしまうと特例の適用ができなくなりますので注意が必要です。
※銀行の相続手続きについて詳しくはこちらをご覧ください。
2-3.申告期限までに相続税を支払う
相続税の申告期限は亡くなられたことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限を1日でも過ぎると利息に当たる延滞税がかかります。正当な理由がなく申告期限内に申告しなかった場合は無申告加算税がかかります。相続税申告期限は原則として延長することはできません。
相続税の支払方法は下記4つです。
図4:相続税の4つの支払方法
※相続税の納付方法について詳しくはこちらをご覧ください。
3.相続税を遺産から払うときの注意点
相続税を遺産から払うとき、誰が払うのか、どうやって払うのかご心配でしょう。相続税は遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超えるときにかかります。各相続人の相続税額は、相続財産の総額から基礎控除額を差し引いた残りの金額(課税遺産総額)から相続税の総額を計算し、各相続人の相続割合に応じて相続税額を按分します。
図5:相続税は相続財産の総額が基礎控除を超えるとかかる
3-1.各相続人が引き継いだ遺産の割合に応じて支払う
相続税は原則、引き継いだ遺産の割合に応じて各相続人が各々で納付書を準備して支払います。配偶者が相続税を減額できる特例である「配偶者の税額軽減」を適用する場合は、納税額がゼロ円になる場合があります。また、税額控除を受けられる場合がありますので要件の確認が必要です。
※相続税の特例と控除について詳しくはこちらをご覧ください。
3-2.代表者がまとめて払う場合は贈与とみなされることがある
相続人の代表者がまとめて相続税を支払うこともできますが、贈与税が課税される可能性がありますので注意が必要です。贈与税は年間(1月1日~12月31日)の贈与額が110万円を超えるときにかかります。相続税額が110万円以下で肩代わりする場合は贈与契約書を取り交わしておくとよいでしょう。一時的に代表者が立替払いをする場合は、清算が必要です。
図6:相続税は相続人ごとに支払う方がよい
3-3.払わない相続人の相続税は連帯納付義務となる
相続人が複数いて一人でも相続税の納税をしない人がいた場合、相続人全員の連帯責任となります。未納分は他の相続人が支払う義務が発生します。連帯納付義務は、各相続人が相続した財産を上限として平等に負担することになります。
図7:払わない相続人の相続税は連帯納付義務となる
※相続税の連帯納付義務について詳しくはこちらをご覧ください。
4.相続税を遺産から払えないときの対処法
相続税の申告と納税期限を過ぎるとペナルティの税金を課されるだけでなく、相続税を減額できる特例が使えなくなる可能性があります。遺産の調査に時間がかかっている、遺産分割協議がまとまらないなどの理由で相続税申告が間に合わない場合は、法定相続分で遺産分割をしたと仮定して「3年以内の分割見込書」を添付して期限内に相続税を納税します。納税資金が準備できない場合は延納・物納の利用を検討しましょう。
4-1.遺産分割前の「相続預金の仮払い制度」を利用
「相続預金の仮払い制度」は遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続人であれば一定額までは他の相続人の同意なく単独で金融機関からの払い戻しの手続きができる制度です。仮払いできる上限額は、相続開始時の預金残高×1/3×法定相続分または150万円のいずれか低い金額までです。
図8:相続預金の仮払い制度の引き出し可能上限額
※相続預金の仮払い制度について詳しくはこちらをご覧ください。
4-2.延納・物納を利用
相続税を現金一括納付できないときは、要件を満たせば分割して払う「延納」を利用することができます。延納する相続税に見合った不動産などを担保として提供しなくてはならず、利子税がかかることに注意しましょう。延納でも納税が難しい場合は相続した不動産などで相続税を払う「物納」を利用することができます。
延納・物納を利用するためには相続税の申告期限までに、税務署に申請が必要です。
図9:相続税を現金一括納付できないときは延納・物納を利用
※延納について詳しくはこちらをご覧ください。
※物納について詳しくはこちらをご覧ください。
5.まとめ
相続税は、引き継ぐ前の遺産から払うことはできません。遺言の内容通りに、あるいは遺産分割協議を調えて相続手続きを完了させてから払います。
相続税の支払いは原則として現金一括納付をしなければならないため、遺産を現金化して納税資金として準備しておく必要があります。
相続手続きは必要書類の収集や売却などに時間がかかるケースがあります。相続が開始すると遺産の調査、相続人の確定、遺産分割協議、相続手続き、申告納税とやらなければならいことが多く、申告期限の10ヶ月まではあっという間です。
相続税申告は税理士に任せれば期限内に無事に完了することができますので、相続手続きや相続税についてご不安なことがございましたら、相続税に詳しい税理士への相談をご検討ください。初回無料相談なども活用するとよいでしょう。