相続税の連帯納付義務とは?他の相続人が納税しない時の3つの対処法

  • 相続税

「相続税の連帯納付義務の通知を受け取ったのだけど…」
「兄弟の分の相続税まで支払わなくてはならないのだろうか」

相続税の申告・納税を無事に終えて一安心したものの、「連帯納付義務のお知らせ」が税務署から届いて、驚かれていることと思います。これは「相続人の中に納税期限までに相続税を納めなかった方がいますので、代わりに払ってください」という信じがたいお知らせです。

ご自身は相続税をきちんと納めたのに、納税をしないご兄弟の相続税も支払うなんて納得できませんが、相続税の納税には、連帯納付義務があります

税務署から「連帯納付義務」の通知が届いてしまったら、まず何をすればよいのでしょうか?通知を拒否して支払わないことはできるのでしょうか?

本記事では、連帯納付義務の制度の概要や対処法について、詳しくご説明いたします。

1.「相続税の連帯納付義務」とは他の相続人が滞納した相続税を代わりに支払う義務

相続税は本来、相続財産の総額に対して計算され、各相続人が引き継いだ財産の取得分に応じて納税をします。各相続人が納付する相続税額は、相続人の間で分配されたものにすぎません。そのため、亡くなられた方の財産を引き継いだ方全員が相続税を完納するまで、お互いに「連帯納付義務」を負います

ただし、相続税の時効が原則として「申告期限より5年」のため、5年を経過するまでにお知らせが届かなければ、連帯納付義務は発生しません

図1:相続税を滞納した相続人の連帯納付義務を負う
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2.相続税の連帯納付義務の督促状が届いた時の3つの対処法

相続税の納税が必要な場合、相続人全員の納税が申告期限までに終わっているかを確認することが望ましいのですが、なかなか難しいものです。

ご自身に「相続税の連帯納付義務のお知らせ(納付通知書)」が届くと、たった2ヶ月でペナルティが発生しますので早急な対応が必要ですので、対処法を考えていきましょう。

図2:相続税の連帯納付義務のお知らせ
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2-1.滞納した相続人が支払える場合

未納の相続人の元には督促状が届いているはずです。「納税を忘れていた」「忙しくて納税できていなかった」など、支払い能力がある場合は、速やかに納税をするように話をして納税をしていただければ問題はありません。

一方で「納税したくない」というパターンで、説得しても納税しない場合は、説得に時間をかけ過ぎてしまうとペナルティが発生し、さらには財産の差し押さえが発生する可能性があります。

連帯納付義務は逃れられないことから、「ペナルティの税金も増えるし、財産の差し押さえがあると後悔することになるので早く納税した方がいい」と伝えて納税する気持ちを持ってもらいましょう。

2-2.滞納した相続人が支払えない場合

相続税は現金で一括で納付することになっています。相続人の中には、不動産のみを相続して相続税の支払いに充てる現金がないという方もいらっしゃいます。貯蓄が無い場合は、相続税を支払うためにご自宅を売却しないと納税できないとお困りかもしれません。また、「借金の返済に使ってしまった」「私生活で使ってしまった」など支払いが困難な状況になっていることもあります。

このような場合には、延納を申請してもらったり、自宅等を担保に銀行からローンを借りるなど、相続人が支払う手だてを教えてあげることが大切です。また、他の相続人が相続税を肩代わりする場合には、贈与税とならないように、借入の契約書を作成しておきましょう。

2-3.相続放棄をしていた場合

ご自身が「相続放棄」の手続きを取っている場合には、相続税の連帯納付義務は発生しません。ただし、遺産分割協議の中で、「相続分の放棄」としている場合には、民法で決められた相続放棄の手続きをしていないため連帯納付義務が発生します。

3.相続税の連帯納付義務の5つのポイント

相続税の連帯納付義務の5つのポイントについてご説明いたします。

3-1.連帯納付義務は拒否できない

相続税が未納の場合には他の相続人が連帯納付義務者として代わりに納税義務を負うことが、法律で定められています。

「引き継いだ財産がある以上、その財産分は相続した相続人が当然相続税を支払うべき」「自分の分はすでに相続税を支払った」と主張したいところではありますが、連帯納付義務は相続財産全体の相続税に対して考えるものであるため、拒否することはできません。また、過去に裁判で国と争われたこともありますが、多くは敗訴となっています。

3-2.「連帯納付義務のお知らせ」が届くまでの流れ

「相続税の連帯納付義務のお知らせ(納付通知書)」が届くまでの流れを確認しましょう。

①相続税が完納されない場合、本来の納税義務者へ税務署長から督促状が届く
②本来の納税義務者に督促状届いて1ヶ月経過しても完納されない場合、連帯納付義務者に対して「完納されていない旨のお知らせ」が届く
③連帯納付義務者の納付が必要な場合には「納付通知書(期限・納税場所)」が届き、連帯納付義務者として支払い義務が確定する
④納付通知書が届いて2ヶ月経過しても完納されない場合は、連帯納付義務者に対して「督促状」が届く

図3:連帯納付義務のお知らせが届くまでの流れ
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3-3.相続人全員で平等に納付する

連帯納付義務は、相続した財産額に関わらず相続人全員が平等に負担します。連帯納付義務の納税額は、「相続した金額分を上限」とします。よって、もし相続した財産が200万円の場合に、200万円を超えた支払いはありません。また、相続放棄をした方は連帯納付義務も負いません(2-3)。

図4:相続財産に応じた相続税額
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※相続税の計算について詳しくは、こちらを参考にしてください。

図5:連帯納付義務は相続人全員が平等に負担する

3-4.連帯納付義務は法定納期限にさかのぼって利子税がかかる

連帯納付分の相続税を支払う場合、すでに相続税の納税期限を過ぎて支払うことになるので、未納分の相続税には利子税が加算されます。連帯納付義務の通知を受け取った時点からではなく、本来の納税義務者が支払っていない時点までさかのぼって利子税を払う必要があります。

利子税は未納の相続税が完納されるまでの日数に応じて支払わなくてはなりません。

利子税の税率(令和4年1月1日から令和4年12月31日まで)は、納付基準日(連帯納付義務者に督促状が届いた日)の翌日から2ヶ月を経過する日までは年0.9%です。さらに、納付基準日から2ヶ月を経過した日以後は延滞税として年8.7%で計算されます。

3-5.連帯納付義務は延納できない

通常、相続税の支払いは要件を満たせば、延納や物納が認められる場合がありますが、「連帯納付義務のお知らせ」が届いた場合、延納や物納の制度が利用できません。現金一括での支払いとなるということに注意が必要です。

※延納について詳しくは、こちらを参考にしてください。

 

4.相続税の連帯納付義務を放置すると財産の差し押さえも

相続税の連帯納付義務を逃れる方法はありません。相続税の利子税は納税期限を過ぎてから1日ずつ加算されていきます。ご自身の相続税を支払ったのにペナルティをなぜ受けなければいけないのか…、という気持ちもあると思いますが、忘れてはいけないのが「差し押さえ」です。

本来であれば相続税を未納の相続人が対象となると思いがちですが、財産の差し押さえをする明確なルールが設定されていませんので、差し押さえる方の順番は税務署の任意となります。よって、未納の相続人の財産が不動産ばかりで差し押さえがしにくい、財産をそもそも持っていないなどの理由から、先に連帯納付義務者の財産の差し押さえが行われる可能性もあります。どうしても支払いが難しいと判断した場合は一刻も早く税務署、または専門家に相談されることをおすすめします。

5.さいごに

相続税の連帯納付義務とは、相続税を支払わない相続人の相続税を、相続人全員で負担しなければならない制度です。

ご自身の分はすでに支払ったのだから・・・と、この通知を放っておき督促されると、遅れた日数分のペナルティの税を支払わなくてはならなくなります。さらにはご自身の財産が差し押さえの処分を受けるという最悪の事態にもなりかねません。

「連帯納付義務のお知らせ」が万が一届いてしまったら、できるだけ速やかに対処することをおすすめ致します。

もし、これから遺産分割をされる場合、一番良い方法は相続人全員が相続税の納税ができるように配慮することです。納税しなければ連帯納付義務となるわけですから、最初から調整した方が安心です。

相続税を支払わない相続人がいてお困りの方や相続税の連帯納付義務が生じて追加で税金を納めなければならなくなった方は、相続に強い税理士にご相談されることをおススメいたします。

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