名義預金には相続税がかかる!名義預金とみなされるケースと回避策
- 相続手続き
「将来のために、息子名義の口座に積み立てているけれど、名義預金になってしまうのだろうか。」
お子さん名義の口座に、お年玉やお祝い金に加えて、毎月少しずつ貯金されているという方は多いのではないでしょうか。
「名義預金」とは、亡くなられた方の名義ではないけれど相続財産に含め、相続税の対象となる預金のことをいいます。
本記事では、名義預金とみなされてしまうケースと、回避策について詳しくご説明いたします。
将来に備えて、正しい知識で確実な税金対策をしていきましょう。
目次
1.「名義預金」とは亡くなられた方の名義ではないが相続財産となる預金
名義預金とは、実際にお金を預金している人と口座の名義人が違う預金のことを言います。
預金はお金の出資者のものと考えますので、相続の時に「真の預金者は亡くなられた方である」と税務署が判断した場合には、その預金は名義預金として相続財産に含めなければなりません。
【名義預金の2つの事例】
①お子さん名義の積み立て
②専業主婦の奥さまのへそくり
図1:奥さま名義の預金が名義預金として相続財産になることがある
2.名義預金とみなされてしまう4つのケース
名義預金とみなされる4つのケースを確認しましょう。
2-1.亡くなられた方のお金を異なる名義で預金していた
預金の資金源が亡くなられた方のお金であれば、「名義預金」とみなされます。例えば、専業主婦の奥さまが旦那さまの収入を奥さま名義の口座で管理している場合、奥さま名義の預金は旦那さまのものだとみなされてしまいます。
2-2.名義人が預金口座について知らない
名義人が預金口座の存在を知らない場合、この預金は亡くなられた方の「名義預金」とみなされます。例えば、親御さんがお子さんの将来のためにお子さん名義の口座を作ったものの、まだ幼いからあるいは無駄遣いをしてしまう可能性があるから等の理由で口座があることを知らせていない場合、名義預金と判断されます。
2-3.亡くなられた方が通帳と印鑑の管理をしていた
預金通帳やお届け印の印鑑を名義人ではなく亡くなられた方が管理していた場合、名義預金とみなされます。名義人のお子さんがいつでも自由に、その預金を使える状態でないと名義人の預金とはいえないということになります。
また、口座開設時のお届印が名義人の印鑑ではない場合、名義預金ではないかと疑われてしまいます。ご両親がお子さんの口座を代理で開設する際にも、ご自身の印鑑で開設するのではなく、口座を開設するお子さんの印鑑を使用しましょう。
2-4.預金が生前贈与されたものではない
名義人の口座の預金が、贈与された財産でないとき名義預金とみなされます。たとえば、亡くなられた方と名義人との間で贈与契約書が作成されているか、贈与税の対象となる年間110万円超の金額を入金したときに贈与税の申告納税をおこなっているか、名義人が預金を管理していたか等で判断されます(3章参照)。
※贈与税について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
3.名義預金とみなされないための対策
名義預金とみなされないようにするためにはどのような対策をとればよいのでしょうか。
大事なことは、贈与を受けた事実を証拠としてきちんと残すということと、名義人本人が口座の存在を把握して自らが口座の管理をし、預金を自由に引き出せる状態にすることです。
3-1.贈与契約書を交わす
名義預金とみなされないために「贈与契約書」を作成しましょう。贈与は、ご自身の財産を無償で「譲る」という意思表示をし、相手方がこれを「受け取る」と承諾することにより成立する双方合意の契約です。
贈与税の年間110万円の非課税の枠を利用して、生前贈与をすることにより相続対策をしている方も多いでしょう。このように、暦年贈与を活用して贈与をしている場合は、贈与税の申告は不要ですが、贈与をするたびに書面を作成することをおすすめいたします。
図2:贈与の双方合意のイメージ
贈与契約書は、法律で決まった書式はありませんが、誰が(贈与者)、誰に(受贈者)、いつ(贈与の日)、何を(贈与財産の内容)、どうやって(贈与の方法)といった5つの点を必ず明確にしておきましょう。受贈者が未成年の場合は、ご両親の署名捺印も必要です。
図3:贈与契約書の例
※暦年贈与について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
3-2.贈与税を毎年申告する
贈与税の申告をしていた場合、名義預金とみなされません。亡くなられた方が生前贈与により、お子さんやお孫さんに財産を移していたとしても、贈与税の非課税枠である年間110万円を超える金額について、毎年贈与税の申告をしていた場合、贈与があったという確かな証拠となります。
図4:贈与税の対象者はもらう人
3-3.銀行送金で記録を残す
通帳の履歴にも、実際に贈与があったという記録を残しておくことが大切です。現金を手渡しするのではなく銀行振込をおすすめめします。
図5:送金の証拠は通帳の履歴に残す
3-4.名義人が預金の管理をおこなう
口座開設の手続きには、名義人が立ち会い、お届印は、名義人が普段使用している印鑑にしましょう。通帳・キャッシュカード・印鑑を名義人のご本人が管理し、預金の引き出しや運用をできる状態にしておくことが大切です。
図6:名義預金とならないためのイメージ
4.税務調査で名義預金とみなされた場合
名義預金は、相続税の税務調査で1番指摘されやすいと言われています。相続税の税務調査では、亡くなられた方が所有されていた口座はもちろんのこと、そのご家族名義の口座の取引状況まで照会します。つまり、亡くなられた方を中心に生前のお金の流れを細かく調査します。
税務調査により名義預金とみなされるとペナルティの対象となることがあります。
4-1.相続税の修正申告が必要
税務調査で名義預金とみなされた場合、その財産は相続財産に追加されます。相続税も追加で納める必要がありますので、申告のやり直し(修正申告)を行います。
図7:修正申告により不足分の税金を支払う必要がある
※相続税の修正申告について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
4-2.相続税の申告漏れとなりペナルティの税がかかる
相続税の納付期限を過ぎて納付した場合には、遅れた日数に応じて延滞税の支払いが必要です。また、延滞税にペナルティの税が加算されます。
誤って少ない金額で相続税を申告した場合は、過少申告加算税が課されます。意図的に財産を隠したり、申告していなかった場合には重加算税が課されます。
※相続税の申告漏れについて詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
5.最後に
お子さんやお孫さんのために少しでも多くの財産を残してあげたいと思い、地道に貯め続けたお金が将来の相続で問題になってしまうようなことになれば悲しい限りです。
相続税や贈与税は複雑で、十分な認識を持って対策を行わなければ、かえって負担が大きくなってしまうことがあります。ご自身では判断が難しいお金の流れがある場合は、専門家である税理士に早めにご相談され、万全な対策をとって頂ければと思います。