生命保険金は遺留分の対象にならない!遺留分対策に生命保険の活用を

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「生命保険金に遺留分は請求できるのだろうか」

お父さまが亡くなられ、他のご兄弟を受取人として支払われた生命保険金が高額な場合、不公平を感じていらっしゃるかもしれません。遺留分を請求したいとお考えでしょう。

残念ながら、原則として生命保険金は遺留分の対象となりません。ただし、相続財産に対して多すぎる生命保険金は遺留分の対象になります。

本記事では、生命保険金が遺留分の対象にならない理由と例外的に生命保険金が遺留分の対象になるケースについて詳しくご説明いたします。生命保険金を活用した遺留分対策についても参考にしていただければと思います。

1.(原則)生命保険金は遺留分の対象にならない

遺留分とは亡くなられた方の兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限取得できる相続分です。具体的には亡くなられた方の配偶者お子さんなど(直系卑属)、ご両親など(直系尊属)が遺留分権利者です。亡くなられた方が遺言書を作成して遺留分を侵害する相続分を指定していたとしても、遺留分が優先されるため、遺留分権利者は遺留分に相当する金銭の支払いを請求することができます。

※遺留分について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

生命保険金は原則として遺留分の対象になりません。遺留分の対象となる財産は以下の3つです。
①亡くなられた方の相続財産(遺贈された財産を含む)
②生前贈与された財産(相続人に対する贈与は相続開始前10年、相続人以外に対する贈与は相続開始前1年以内に行われたもののみが対象<民法1044条1項、3項>)
③債務

生命保険金が遺留分の対象にならない理由をご説明いたします。

図1:遺留分の割合
遺留分の割合

図2:遺留分の計算は対象となる財産に割合を乗じる
遺留分の計算は対象となる財産に割合を乗じる

1-1. 生命保険金は相続財産ではない(受取人固有の財産)

生命保険金は受取人固有の財産とみなされるため、遺産分割や遺留分の対象となる相続財産に含まれません。生命保険金の受取人が相続人の場合は、生命保険金に加えて相続財産から法定相続分を取得することができます。また、相続放棄した場合でも生命保険金は受け取ることができます。

1-2. 生命保険金は亡くなられたことをきっかけとして受け取る財産

生命保険金は亡くなられたことをきっかけとして相続人が受け取る財産です。保険会社から支払われるという点からも亡くなられた方の相続財産ではないと言えます。ただし、受け取った生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になりますので注意が必要です。

※みなし相続財産について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

2.(例外)生命保険金が遺留分の対象になるケース

例外として生命保険金が遺留分の対象になるケースがあります。支払われた生命保険金の額が大きいため、生命保険金の受取人である相続人と他の相続人との間に著しい不平等が生じる場合は、生命保険金は遺留分の対象になります。

2-1.生命保険金を特別受益とみなして相続財産に持ち戻す判断基準

特別受益とは一部の相続人だけが亡くなられた方から特別に得た利益のことです。特別受益があった場合は、公平な遺産分割になるように特別受益分を相続財産に加算して相続人の取得分を計算します。

相続人のうちのひとり(または一部)を受取人とする生命保険金は特別受益ではありません。ただしあまりに生命保険金の額や生命保険金の額の相続財産に対する割合が大きい場合等は、生命保険金を特別受益とみなして相続財産に持ち戻します

生命保険金を特別受益とみなす判断基準は4つです。
①生命保険金の額
②生命保険金額の遺産総額に対する割合
③生命保険金の受取人である相続人およびほかの相続人と亡くなられた方との関係
(同居の有無、亡くなられた方の介護等に対する貢献の度合いなど)

④各相続人の生活実態

①~④を総合して判断されますので、生命保険金について持ち戻しの対象になるかどうかはケースバイケースとなります。

2-2.生命保険金が遺留分の対象となった場合の計算例

(事例)
被相続人:お父さま
相続人:長男・長女の2人
相続財産1,000万円
生命保険金9,000万円(受取人は長男)

亡くなられたお父さまと長男が同居をしていたものの介護等は長女と平等におこなっていた場合、受取人を全額長男とする生命保険に対して長女は不公平だと感じるでしょう。遺産総額に対する生命保険金の割合が多いため、生命保険金は特別受益であるとみなされ、長女は長男に遺留分侵害額請求することができます。

長女の遺留分:(1,000万円+9,000万円)×1/4(遺留分の割合)=2,500万円

長女は遺産分割時に相続財産500万円(1,000万円×1/2(法定相続分の割合))を取得しているため遺留分請求額は2,000万円(2,500万円―500万円)となります。

3.生命保険を活用した遺留分対策

生命保険金は相続財産でないため、遺留分対策として活用できます。生命保険金の受取人を遺留分を侵害する相続人にするケースと遺留分を侵害される相続人にするケースについてご説明いたします。

3-1.財産を多く引き継がせたい相続人を受取人にして遺留分請求をされた時に備える

生命保険金の受取人を、遺留分を侵害する相続人(遺留分侵害額請求を受ける可能性のある相続人)にすることで、遺留分を減らすことができます

(事例)
被相続人:お父さま
相続人:長男・長女の2人
相続財産:6,000万円
生命保険金:4,000万円(受取人は長男)

生命保険金は原則として遺留分の対象にならないため、長女の遺留分は1,500万円(6,000万円×1/4)になります。相続財産を預貯金で1億円相続した場合の長女の遺留分は2,500万円(1億円×1/4)となりますので、預貯金に換えてより多くの財産を渡したい長男を生命保険金の受取人とすることにより長女の遺留分を減らすことができます。

また、相続財産のほとんどが不動産の場合などは、遺留分を請求された場合に生命保険金を支払いに充当することができます。

3-2.遺留分権利者を受取人にして生前に遺留分放棄してもらう

生命保険金の受取人を遺留分権利者にして生前にこの相続人に遺留分放棄をしてもらうことにより、遺言で指定した相続分が遺留分を侵害していたとしても遺留分請求できません

(事例)
被相続人:お父さま
相続人:長男・長女の2人
相続財産:8,000万円(「すべての財産を長男に相続させる」という内容の遺言書を作成)
生命保険金:2,000万円(受取人は長女)

長男に事業承継をするため財産を引き継がせたいが長女の遺留分を侵害してしまうという場合は、長女に相続財産の代わりに生命保険金を受け取ることで納得し、生前に遺留分の放棄をしてもらいます。亡くなられた後に長男が遺留分侵害額請求を受ける心配がありません。

生前に相続人が遺留分放棄をするには家庭裁判所の許可を得なければならないということに注意が必要です。

※みなし相続財産について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

4.まとめ

生命保険金は原則として遺留分の対象になりません。生命保険金は受取人固有の財産であり相続財産ではないからです。ただし、生命保険金が多額で他の相続人との取得分の差が明らかに不平等な場合は例外として遺留分の対象になります

実際に生命保険金を相続財産に持ち戻して相続分を計算するかどうかは個別の事情に応じて総合的に判断されるため、ご自身のケースが遺留分請求の対象となるのかは専門家にご相談されることをおススメいたします。

一方、特定の相続人に多くの財産を引き継がせたいとお考えの場合は遺留分に配慮する必要があります。遺留分は遺言書よりも優先されます。円満な相続のために生前から遺留分対策を講じましょう。

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