離婚した子供に相続させない4つの方法!遺留分に配慮した相続手続きを
- 相続手続き
「離婚した子供に相続させないことはできるかな」
「現在の妻と息子にすべての財産を渡したい。」
「前妻と離婚した子供が相続に口出しをしてトラブルになりそうだ」
若い時に結婚して子供をもうけたものの、離婚をして前妻が引き取り疎遠になっている場合、現在の奥さまとお子さんに全財産を引き継ぎたいとお考えかもしれません。
相続が開始したら、離婚した前妻との間のお子さんは法定相続人になります。遺産分割の手続きが円滑に進まないかもしれないとご心配のことでしょう。
離婚した子供に相続させないことはできるのでしょうか。
本記事では、トラブルを回避しながら離婚した子供に相続させない方法を詳しくご説明いたします。
目次
1.離婚した子供には相続権がある
離婚した元配偶者との間の子供は、相続の第一順位である「子」として相続権があります。ご自身や前妻が再婚したかどうかは関係ありません。前妻とのお子さんが実子であることに変わりはなく、現在の奥さまのお子さんと同じ割合の法定相続分を持つ相続人となります。
前妻の再婚相手がお子さん(前妻との子)と養子縁組をしていたとしても同様です。養子縁組をしていた場合にはお子さん(前妻との子)は二人の父親から相続する権利を持つことになります。
図1:離婚した子供には相続権がある
図2:離婚した子供は現在の奥さまとの間の子供と同じ法定相続分
※法定相続分について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
2.離婚した子供に相続させないことが難しい理由
離婚した子供が遺産を得るために一定の不正や犯罪(欠格事由)をした場合は、手続きをしなくても当然に相続権を失います(相続欠格)。また、被相続人(亡くなられた方)に対して虐待や重大な侮辱があり離婚した子供に相続させたくない場合は、家庭裁判所に申立てをして相続権を失わせることができます(相続廃除)。
相続欠格、相続廃除に明らかに該当する場合を除いて、離婚した子供の相続分をゼロにすることは難しいと言えます。そのため離婚した子供にできるだけ相続させない方法を考えましょう(3章)。
※相続欠格について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
※相続廃除について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
2-1.離婚した子供も遺産分割協議に参加しなければならない
遺言書がなく相続人が複数いる場合は、遺産をどのように分割するかの話し合い(遺産分割協議)をします。遺産分割協議には相続人全員が参加しなければならず、離婚した子供が参加しない遺産分割協議は無効になります。遺産分割協議が調うと、金融機関や不動産の名義変更などの相続手続きが可能になります。
遺産分割協議が調わない場合は、家庭裁判所にて遺産分割調停を申し立てをおこない、調停も不成立の場合は審判へ進むことになりますが、最終的には法定相続分での分割となることが多いです。
図3:離婚した子供も遺産分割協議に参加しなければならない
※遺産分割協議について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
※遺産分割調停について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
2-2.離婚した子供には遺留分がある
遺言書が残されていた場合には遺言書の内容が優先されます。「現在のご家族に全財産を相続させ、離婚した子供の相続分はゼロとする」という内容の遺言書も有効です。ただし離婚した子供には、最低限相続できる財産の割合である遺留分が認められているということに注意が必要です。
お子さんが相続人である場合の遺留分の割合は法定相続分の1/2です。現在の奥さまと長男、前妻のお子さんが相続人の場合、前妻のお子さんの法定相続分は1/4、遺留分は1/8となります。前妻のお子さんは現在の奥さまと長男に対して遺留分を請求することができるということになります。
※遺留分侵害額請求について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
図4:遺留分の割合
図5:離婚した子供には遺留分がある
3.離婚した子供に相続させない4つの方法
前妻の子に全く相続させないということは難しいとご理解いただけたと思います。離婚した子供には遺留分があるため、遺留分に配慮しないと離婚した子供から現在の奥さまとお子さんに遺留分を請求されて相続トラブルになるリスクがあります。離婚した子供に遺留分相当額は相続させるのが一番良い方法です。
それでも離婚した子供の相続分をゼロに近づけたいという方は、遺産を減らしておく方法を検討しましょう。いずれにせよ離婚した子供に相続させないためには生前から準備が必要になります。
3-1.遺言書を作成する
「離婚した子供には遺留分相当額のみを相続させる」という内容の遺言書を作成します。より多くの財産を現在の奥さまとお子さんに残すことができ、遺留分を請求されるリスクもありません。遺留分に配慮した遺言書を作成することが最も取り組みやすい方法となります。
3-2.生前贈与をする
生前贈与をおこない、現在の奥さまとお子さんに遺産を移しておきます。ただし、生前贈与については亡くなられる前10年以内の贈与は遺産に加算され遺留分の対象となりますので、できるだけ早く始める必要があります。
3-3.生命保険を利用する
受取人を現在の奥さまとお子さんとする生命保険契約を結んでおきます。受取人が指定された生命保険金は、受取人の固有の財産として考えるため、遺産分割の対象ではありません。また、生命保険金は原則として遺留分請求の対象とならないため、離婚した子供に相続させないことができます。
図6:受取人が指定された生命保険金は遺産分割の対象外
3-4.生前に遺留分を放棄してもらう
離婚した子供に遺留分相当額の代償を支払い、生前に遺留分を放棄してもらうことができます。遺留分を放棄してもらうことにより現在の奥さまとお子さんに遺留分を請求されるリスクがなくなります。ただし離婚した子供本人が家庭裁判所に遺留分放棄の申立てをして、許可を得なくてはなりません。
離婚した子供と連絡を取り合い良好な関係を築いているならば、手続きを進めても良いでしょう。
※遺留分の放棄について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
4.離婚した子供に相続しない意思がある場合
離婚した子供の方から、相続に関わりたくないという理由等で相続しない意思表示をされることがあります。相続しない方法として「相続放棄」と「相続分の放棄」があります。混同されやすいので違いを含めてご説明します。
4-1.相続放棄してもらう
相続放棄は借金などのマイナスの財産だけでなく、不動産や預貯金などのプラスの財産もすべて引き継がないことです。相続放棄をすると初めから相続人でなかったとみなされますので、遺産分割協議に参加する必要はありません。相続放棄は亡くなられてから3ヶ月以内に家庭裁判所へ手続きが必要です。
図7:相続放棄は亡くなられて3ヶ月以内に手続きが必要
※相続放棄について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)
4-2.相続分を放棄してもらう
相続分の放棄とは、相続人となるが相続分は放棄するということです。相続分を放棄しても借金などの債務の返済義務が残りますので、債務が明らかに多い場合は相続分の放棄ではなく相続放棄を選択しましょう。
相続分の放棄については、裁判所の手続きや期限はなく、現在の奥さまと長男に対して相続分を放棄する旨を伝えるだけで済みます。遺産分割協議書に署名捺印が必要です。
図8:相続分の放棄は遺産分割協議書に署名捺印が必要
5.まとめ
離婚した子供には相続権があるため、一切の財産を相続させないことは難しいです。
遺言書が残されていない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行うため離婚した子供も参加が必要です。一方的に相続させないことはできません。協議が調わない場合は遺産分割調停、審判へと移行することになり、結果的に法定相続分となることが多いため、遺言書を作成することをおススメします。
離婚した子供には、最低限の相続分である遺留分があります。離婚した子供の相続分をゼロとする遺言書も有効ですが、現在の奥さまとお子さんに遺留分請求をされて相続トラブルになるリスクがありますので、離婚した子供に遺留分相当額を相続させる内容が望ましいでしょう。
万が一、どうしても相続させたくないとお考えの方は、生前贈与や生命保険の活用など、相続財産を減らすことを検討しましょう。
離婚した子供に相続させたくないときは生前からの準備が必要です。スムーズに遺産相続手続きを進めたい方は相続に強い税理士にご相談されてはいかがでしょうか。