ゆうちょ銀行の相続で残高証明書を請求する方法【請求用紙記入例付】

  • 相続手続き

「亡くなった父は、ゆうちょ銀行に口座を持ち、自宅近くの郵便局をよく利用していたが、肝心な通帳が見当たらない。暗証番号も分からないから、カードだけあっても残高の確認はできないな。残高証明書を請求するしかないか・・・」

通帳が見つからない口座があると、相続財産の全容が把握できなくて困りますよね。口座の名義人が亡くなられているため、相続の事実を銀行に伝え、相続手続きとして「残高証明書」を請求しなければ、たとえ相続人でも簡単には残高を教えてもらうことはできません。

残高証明書を請求するにしても「郵送でも請求できる?」「何を持っていけばよい?」「手数料はどのくらい?」など、事前に確認したいことがあると思います。

本記事では、ゆうちょ銀行の相続で必要となる残高証明書の請求方法について、詳しくご説明いたします。残高証明書はその場で直ぐに取得することはできませんが、書類の不備などで余分な時間や手間がかからないよう、この記事を参考にスムーズに取得していただければと思います。

1.ゆうちょ銀行の残高証明書は「貯金残高証明請求書」で請求する

残高証明書とは、請求される方が「指定した日付」で貯金残高を証明する書類です。請求する手続きは、ゆうちょ銀行、または郵便局の貯金窓口に出向いておこないます。相続の場合、窓口で必要な書類を確認した上で受け付けるので、郵送で書類を送って手続きをすることはできません。

窓口で用意されている「貯金残高証明請求書」という所定の用紙に必要事項を記載して、必要書類(4章で説明)とともに提出します。相続人の方が窓口に出向くことが難しい場合は、代理人に委任することも可能ですが、相続人直筆の委任状が必要です。

具体的な記載事例は図2をご確認ください。

1:貯金残高証明請求書

【記載内容】
<ご請求者欄>※委任する場合は代理人の方の情報
① 相続人の住所
② 相続人の名前
③ 日中の連絡先
④ 名義人との関係は「相続人」にチェック(代理人の場合は「その他」)
⑤ お届け印は相続人の印鑑(認印可)

<残高証明書を発行する取引欄>
⑥~⑨亡くなられた方(名義人)の情報
⑥ 名義人のお届けの住所(不明の場合は現住所でも可)
⑦ 名義人の名前
⑧ 名義人の生年月日
⑨ 証明年月日(相続の場合は、亡くなられた日)
⑩ 対象口座(口座の種類、記号番号を記入)
⑪ 証明書枚数(取得枚数※1枚でよい)

2:記載事例

2.貯金の種類や番号が分からない場合は「貯金等照会書」を請求する

貯金の種類や記号番号が分からない、また、そもそも口座があるかどうかが分からない、という場合は、貯金の現存照会をおこなった上で、残高証明書を請求することができます。この場合は用紙が変わり、窓口で「貯金等照会書」という所定用紙をもらい、必要事項を記入して提出します。

こちらの用紙は、ゆうちょ銀行のホームページよりダウンロードすることもできますが、相続の場合、郵送での請求はできませんので、必要書類を持参のうえ、窓口で手続きをおこなってください。

具体的な記載事例は図4をご確認ください。

参考:ゆうちょ銀行ホームページ 
   https://www.jp-bank.japanpost.jp/tetuzuki/souzoku/tzk_szk_flow.html

3: 貯金等照会書(相続用) ※ホームページダウンロード様式

【記載内容】※事例の様式は「相続用」のため、別途提出する相続届の書類と連動した様式になっています。
<ご請求者欄>
※相続用の様式では、記載を省略ができるようになっていますが、窓口でもらう様式は
 「請求者の住所、氏名、連絡先、調査対象者との関係、請求理由」を記載するようになっています。
① いずれかにチェック
② 請求者の印鑑(認印可)
  ※取得手数料を請求者のゆうちょ銀行口座より引き落とす場合は、該当口座のお届け印を押す

<調査対象者(被相続人)欄>
③ 調査対象者の名前
④ 調査対象者のお届けの住所(不明の場合は現住所でも可)
⑤ 調査対象者の生年月日

<調査内容欄>
⑥ 調査対象とする貯金内容を分かる範囲でご記入ください
  ※貯金の種類が分からない場合は、すべてにチェック
⑦ 調査日の指定
  ※「いつからいつまで」という期間を指定
⑧ 残高証明書が必要な場合に記入
  ※証明日は「亡くなられた日」

4:記載事例

3.請求する前に確認しておきたい6つのポイント

窓口へ行く前に、確認しておきたい手続きのポイントを6つご紹介いたします。

3-1.口座は凍結されてしまう

相続における残高証明書の請求は、名義人が亡くなられたことをゆうちょ銀行に伝えることになりますので、この時点で口座は凍結されます。入出金が完全にできなくなりますので、公共料金などの自動引き落とし口座として利用されていた場合は、事前に変更手続きをおこなってください。

凍結されたゆうちょ銀行の口座を解約するためには、相続手続きが必要です。ゆうちょ銀行の場合、窓口で「相続確認表」という書類を提出しなければ、相続手続きが開始されません。できる限り窓口に出向く回数を減らすためにも、一度にできるお手続きは同時におこなってしまいましょう。

※口座凍結について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

5:口座が凍結されると入出金がすべてストップされる

6:効率よい手続きのために同時に相続手続きも開始しよう

※ゆうちょ銀行の相続手続きについて詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

3-2.相続人であれば単独で請求できる

亡くなられた方の相続人であれば、単独で残高証明書を請求することができます。ほかの相続人の方の同意は必要ありません。もし、相続人以外の代理人に依頼して、その方が来店される場合は、相続人の方の直筆の委任状が必要になります。

7:相続人1人で請求することができる

3-3.全国どこの窓口でも請求できる

残高証明書の請求は、全国どこのゆうちょ銀行、もしくは郵便局の貯金窓口でも受け付けています。郵送では受け付けてもらえませんのでご注意ください。請求の際に提出が求められる必要書類については4章でご説明いたします。

3-4.証明する日付の指定は「亡くなられた日」

相続の手続きで残高証明書を請求する場合、証明する日付は「名義人の方が亡くなられた日」とするのが一般的です。相続税申告の添付書類として、残高証明書を請求するのであれば、相続開始(亡くなられた日)時点の貯金残高の証明が必要となります。残高証明書を請求する日ではありませんのでご注意ください。

3-5.1回の請求で複数口座の確認ができる

ゆうちょ銀行の残高証明書では、1回の請求で、名義人が所有している全種類の貯金残高を証明することができます。種類ごと、支店ごとに証明書は発行されません。「貯金等照会書」を提出して、現存照会をした上で、残高証明書を請求すれば、名義人の名前に紐づく口座のすべてをもれなく確認することができます。

8:貯金残高証明書の見本

3-6.請求から10日~2週間で郵送されてくる

ゆうちょ銀行は、相続に伴う手続きはすべて、窓口ではなく、貯金事務センターという場所で一括しておこなっています。窓口は請求書類を受け付けているだけです。相続における残高証明書は、窓口で受け付けられてから、10日~2週間後に請求者のご自宅宛に郵送されてきます。

4.残高証明書を請求するときの必要書類と手数料

残高証明書を取得するときに必要な書類は以下のようになります。請求にかかる手数料は、請求1回につき520円となります。

【必要書類一覧】
・亡くなられた方の死亡の事実がわかる戸籍謄本(除籍謄本)
・請求者が相続人であることが証明できる戸籍謄本等
・相続人本人であることが確認できる運転免許証等
 ※本人確認書類は、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど
 顔写真付でない証明書の場合、複数の証明書類の提示が必要
・相続人の印鑑(認印でもOK

9:残高証明書の請求に必要な書類

5.ゆうちょ銀行の残高証明書が必要となる2つのケース

通帳が見つからない、貯金の有無が分からないといった理由以外で、残高証明書を請求された方がよい2つのケースについてご説明いたします。

5-1.遺産分割協議のために残高を証明したい

相続人が集まって、遺産分割協議をする時に、亡くなられた方が残された財産の全容が明らかでなければ、協議が難航する恐れがあります。金融機関が証明する正確な残高証明書をそろえておくと、残高は明らかなので話し合いが進めやすくなりますね。

通帳がきちんと残っていて、亡くなられた日までの記帳があれば、必ずしも残高証明書は必要ありませんが、残高だけ証明したいという場合には、残高証明書を請求されることをおススメいたします。

5-2.相続税申告書の添付書類として求められる

相続税の申告には、貯金の評価額を証明する書類として残高証明書の添付が必要です。貯金額があまり高くない場合は通帳のコピーでも構いませんが、原則は添付が求められています。

相続税は、それぞれの財産を評価して積み上げた総額が、基礎控除額を上回った場合、課税されることになりますが、預金の評価額とは「亡くなられた日時点の残高」であり、残高証明書があれば、証明された金額となります。

※相続税申告の対象かどうかの判断について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

※相続税申告の添付書類について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

6.まとめ

ゆうちょ銀行の相続における残高証明書の請求方法についてご理解いただけたと思います。

ゆうちょ銀行の残高証明書は、貯金の種類ごとや、支店ごとに発行されるのではなく、名義人で集約されています。手数料も1回の請求で520円と比較的リーズナブルです。

窓口では、請求を受け付けるだけで、その場で直ぐに発行されるわけではありません。請求用紙は、貯金事務センターに送られ、請求者のご自宅に後日、郵送されてきます。取得までには、10日間から2週間ほどかかります。

相続人全員の同意がなくても、単独で請求手続きはできます。代理人に依頼することもできますが、委任状が必要となります。

残高証明書は、金融機関が残高を証明する正確な書類です。相続税の申告が必要でない場合でも、円満な分割協議を進めるために残高証明書がある方がよいこともありますので、この記事を参考にしていただければと思います。

 

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