相続税は誰が払う?と迷った時に確認すべき考え方と支払う時の注意点
- 相続税
「父が残してくれた財産にどうやら相続税がかかりそうだ。相続人は母と、妹と弟、そして長男である自分の4人だが、相続税は誰がどのようにして払うことになるのだろうか・・・」
相続税がかかることが分かっていても、具体的に誰がどのようにして相続税を払えばよいのか、よく分からないと思います。
財産を多く引き継いだ人が払えばよいものか、相続人の代表者を決めて払ってしまえばよいものなのか、と迷われているのではないでしょうか。
本記事では、相続税を誰が払うべきなのかを分かりやすくご説明いたします。
払うときの注意点なども、参考にしていただければと思います。
目次
1.相続税は財産を相続した人がそれぞれ払う
相続税は、財産を引き継いだ方すべてにかかるわけではありません。相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかります。相続税は、財産を引き継いだ方がそれぞれで支払わなければなりません。
納付期限は「亡くなられたことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という相続税の申告期限と同じです。
期限までに支払いを済まさなければ、延滞税などのペナルティが課せられるので注意が必要です。
図1:原則は申告期限までに相続した各人が払う
2.相続税を払う対象かどうかを確認する
相続財産の総額(相続税評価額の総額)が基礎控除額を上回るようであれば、相続税がかかりますので、まずは、相続財産の総額を把握します。一つ一つの財産の相続税評価額を確認して合計します。
預貯金のように預金残高をそのまま相続税評価額とする財産もあれば、不動産のように相続税評価額を求めなければならない財産もあります。
※相続税評価額について詳しくは、こちらを参考にしてください。
※基礎控除について詳しくは、こちらを参考にしてください。
また、基礎控除以外にも条件に応じて適用できる特例があり、相続税がゼロになる場合があります。納税は不要ですが、特例を適用するために期限内の申告が必要です。
【相続税を減額することができる特例】
・小規模宅地等の特例
・配偶者の税額軽減
※相続税の特例について詳しくは、こちらを参考にしてください。
図2:相続税の基礎控除額
3.相続税は相続人の財産から支払う
相続税の対象となった場合、納める税額は、相続した割合に応じて決まります。財産を多く引き継げば、納める相続税も増えます。
相続税の計算方法は、基礎控除額を引いて残った財産額を、いったん法定相続分で分けて、先に相続税の総額を求めます。
そして、相続税の総額をもとに、実際の分割割合に応じて、それぞれが支払う相続税の額を確定します。
相続税は相続人の財産から支払います。相続税の納付期限までに相続手続きが終わっている場合は、相続した財産から相続税を支払っても構いません。
図3:納める税額の計算方法
4.払わない人の相続税は他の相続人が払う(連帯納付義務)
相続人のうちの1人が相続税を支払わないでいた場合、すでに支払いを終えた相続人の方に再度「相続税を支払ってください」という通知が届きます。
相続税は連帯責任であり「他の相続人が滞納した相続税を代わりに支払わなければならない」という連帯納付義務の考えがあるからです。
延滞税などのペナルティまで、相続人全員で負担することになります。
※連帯納付義務について詳しくは、こちらを参考にしてください。
5.相続税をスムーズに払う方法と注意点
相続税は、財産を引き継いだ方が「各自で支払う」のが原則です。しかし、健康上の問題や、やむを得ない理由によっては、どうしても期限内に払えない場合もあるでしょう。
未納となるリスクを極力避けるためには、代表者の方を決めて、取りまとめていただくと納付手続きがスムーズに進み、確実です。
【取りまとめの例】
・納付書を準備する(税務署、または銀行窓口で入手可能)
・各自の納付状況を確認する
・支払いができない方の代理をする
相続財産を分けてしまう前に、あらかじめ納税資金を差し引いて、相続税をまとめて支払ってしまう方法もあります。各自で納税資金を準備する手間が省け、残った相続財産を分けるだけなので手続きは簡単です。
代理で支払う、またはまとめて全員分を支払う場合には、納税資金の贈与があったと税務署にみなされないよう、きちんと清算し、記録を残すように注意してください。
※相続税の納付方法について詳しくは、こちらを参考にしてください。
6.法定相続人以外が相続する場合の考え方
遺言書で相続人以外の方が財産を譲り受ける場合もあります。相続税は、法定相続人ではない人が財産を引き継いだ場合でも、受遺者が引き継いだ割合に応じて相続税を支払います。
この場合は、相続人ではないので、相続税が2割加算されることに注意が必要です。
7.まとめ
相続税は原則、相続人あるいは遺言により財産を取得した受遺者が、引き継いだ割合に応じて、各自で支払います。財産を多く引き継いだ方が相続税を支払うのではありません。
相続税は未納の方がいると、連帯納付義務により、ペナルティを含め、未納分を全員で負担しなければなりません。リスクをさけるには、代表者の方に支払いの取りまとめをしていただくことをおススメします。その際は、納税資金の贈与と税務署に疑われないよう、支払った履歴や清算の記録を残すように注意してください。