相続税の申告報酬の相場は?失敗しない税理士選びと見積書のチェック項目
- 相続税
お父さまが亡くなられ、初めて相続の手続きを進めることになって、
「相続税がかかりそうときは税理士に相談した方がよいのだろうか…。」
「税理士にお願いしたら一体いくらの費用が必要なのだろうか…。」
突然訪れる相続の手続きは、知識が無いと想像以上に不安なものです。
以前は、「税理士報酬規程」という税理士法に基づく上限ルールがありましたが、現在は廃止されて税理士が自由に価格を決めることができるようになっており、「申告報酬」は税理士事務所ごと様々です。
本記事では、相続税の申告を税理士にお願いした場合の「申告報酬」という税理士に支払う費用の相場をご紹介します。
目次
1.相続税の申告報酬の相場は0.5%〜1%
現在、相続税申告の報酬は自由化されており各税理士事務所によって様々ですが、おおよそは相続財産の0.5%~1%と考えてよいでしょう。
HP等で参考額を検索する際には、価格についての詳しい説明(土地や非上場株式、加算報酬についても)や、財産をしっかり把握した上で申告報酬をお見積りする、と記載のある事務所を選びましょう。直接、税理士事務所に問い合わせする場合は、報酬額について詳細な考え方を説明してくれるところが安心です。
おおよその相続税申告書作成の税理士報酬の相場です。
相続財産額 | 税理士報酬 |
---|---|
~7000万円 | 50~70万円 |
7000万円~1億円 | 50~100万円 |
1億円~2億円 | 100~200万円 |
2億円~3億円 | 150~250万円 |
3億円以上 | 別途見積 |
2.相続税の申告報酬で失敗しない!税理士を選ぶ4つのポイント
現在では、相続税の申告報酬はインターネットで調べる事が、一般的になってきました。この章では、税理士の選び方の4つのポイントをお伝えします。
2-1.ポイント1.相続専門の税理士である
HPの業務内容に相続税申告と書いていても、年に数件しか手続きしていない税理士事務所が多くあります。税理士ですのでルールにそって対応はしてくれますが、税理士でも判断を迷うような項目がたくさんあるため、経験値やノウハウがとても大切になってきます。
相続専門の部署があったり、相続専門の税理士が在籍する場合には年間100件以上の申告(相談を除く)に対応しているケースが多いです。
直接税理士事務所へ連絡をして、相続相談の件数ではなく、「相続税の申告件数」の実績等を確認しましょう。
2-2.ポイント2.複数の税理士から相見積もりを取る
申告報酬は、ほとんどの税理士事務所が無料で見積りを算出してくれますから、複数の税理士事務所から相続税の申告に関わる費用の見積もりを依頼しましょう。
その際に、先ほど記載のとおり最終的に別途費用が発生することがないか、相続税+申告報酬が結果的に安くなるかについて、確認します。
相続税に特化した部署を持つ会計事務所に依頼すると、申告報酬の額は高いけれどノウハウを活用して相続税額が大幅に下がり、結果的に残った財産が多くなるケースが多く見られます。
2-3.ポイント3.直接事務所を訪問して無料相談を活用する
無料相談に対応しているようであれば、是非活用する事をお薦めします。
相続税に特化した税理士は、財産をしっかり把握するために話を親身に聞いてくれたり、ポイントを分かりやすく説明してくれます。決められたルールに沿って一方的に話をしたり、実際に依頼を受けて計算してみないとわからない、などの回答をする税理士は、慣れていないケースが多いです。また、税理士との相性はどうかを確かめることも大切です。
2-4.ポイント4.報酬が安すぎる税理士は注意が必要
税理士事務所によって算出の仕方が異なっているため一概にいくらと言うことは難しいのですが、もちろん”安いことだけを基準”にすることは非常に危険です。
適正な報酬で適正な申告書を作成してもらうためにも、複数の税理士に見積もりを出してもらい、比較することをおすすめします。また、消費税込なのか別なのかも必ずご確認ください。
注意点として、追加の税務報酬を契約前にしっかりとお客様へ説明を行うことなく、申告のあとに請求をしてくる税理士事務所もあります。相続税申告のご契約の前に報酬についてしっかり説明してくれる税理士を選んだり、見積書等でよく確認するようにしましょう。
3.申告報酬の見積もりで必ずチェックすべき項目
申告報酬は遺産相続の財産総額から決定されます。見積もりを取る際は、まずは、固定資産税の課税明細書・通帳・株の取引報告書等の確認があります。通常基本報酬の範囲となるのは次の通りです。
3-1.基本報酬に含まれる項目
基本報酬には、次の項目が入っているか確認しましょう。
<申告報酬に含まれる項目>
• 遺産・債務に関する評価額計算、財産目録の作成、中間報告
• 配偶者の取得割合の変化に伴う1次・2次相続の税額負担シミュレーション
• 相続税申告書・添付書類の作成、提出及び税務代理
• 税務調査対策
3-2.加算報酬がかかるケース
相続税の申告標準報酬は、基本報酬額+加算報酬額の合計額で計算されます。
加算報酬とは、その申告標準報酬に加えて遺産の総額にかかる報酬額について、共同相続人(納税義務者のある受遺者を含む)が1人増すごとに8%~10%程度の報酬額が加算されることになります。
<基本報酬以外に報酬が発生するもの一例>
• 相続人の人数が多い
• 土地の評価が複雑
• 延納・物納申請、農地等・自社株の納税猶予制度の適用
• 金融資産の名義変更手続き代行
• 二次相続の節税・納税資金対策等に関するコンサルティング
• 延納・物納申請、農地等・自社株の納税猶予制度の適用
※事務手続きが複雑な場合は、30%程度を加算されることがあります。
物納申請税額 | 報酬額 |
---|---|
1億円未満 | 500,000円 |
5億円未満 | 700,000円 |
5億円以上 | 900,000円 |
5億円増すごとに | 20万円を加算 |
※物納について詳しくは、次の記事を参考にしてください
延納申請税額 | 報酬額 |
---|---|
1億円未満 | 100,000円 |
5億円未満 | 150,000円 |
5億円以上 | 200,000円 |
5億円増すごとに | 5万円を加算 |
※延納について詳しくは、次の記事を参考にしてください
4.報酬額だけでなく相続税に強い税理士を選ぶことが大切
税理士選びで優先すべきことは、報酬額だけではありません。
税理士に相続税の申告を依頼した場合に、予想以上に報酬が高額になると感じる方も多いと思います。
相続税の申告の手続き代行だけを依頼するのなら、税理士報酬が安い税理士事務所に依頼してもいいのかも知れません。しかし、相続税を専門としていない税理士が申告した場合、相続税申告の誤りによって数千万円単位で過大な相続税を払ってしまう可能性もあります。
相続税は、今回の相続では大幅に相続税を削減できたけれど、次の相続(二次相続)で大幅な税金の支払いが発生するというケースもあります。
ご家族の大切な財産ですから、信頼のできる税理士に相談しましょう!
5.さいごに
相続税は「申告して納税すれば完了!」というわけではありません。
相続税の申告には税法の解釈の余地が大いにあることから、相続税申告後の1年から2年後を目途に税務調査が入る確率が高くなります。この税務調査は、相続税額が高額になるほど確率が高いと言われています。
また、相続税申告は相続が発生してから、さまざまな手続きがあります。申告報酬の多い少ないだけで、相続税の申告を任せる税理士を決定せず、相続財産の総額から相続税とその他費用(税理士費用や不動産の名義書換費用など)をすべてを差し引いて、最終的に手元にいくら残るかで判断することが大切です。
報酬は多くかかっても相続税に強い税理士事務所に頼む方が、相続税納税額を大幅に圧縮することができ、結果的に手元に多く残るというケースが多いのも事実です。
※相続税のご相談がある場合の「損」をしないための税理士の選び方は、こちらを参考にしてください。