相続税の調査対象になる9つのケースと調査前に準備しておくべきこと

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ご家族が亡くなられ、一年半ほどたったある日、担当の税理士から「お父さまの相続税の申告について、税務調査に伺いたい旨の連絡が税務署からありましたので日程調整をしたい」との電話がかかってきた。

「相続税の調査って何をするのだろう。」
「間違った申告は罪になるのだろうか」

と不安になられる方もいらっしゃるでしょう。

「税務調査」とは、適切に納税がされているかの確認、適切に納税ができていないものについて指導をするためのものです。
さらに、税務調査で修正申告の指摘を受けるとペナルティがかかります。

当記事では、相続税の調査とはどのようなもので、どのようなケースが対象になるのか。そして、調査対象になった場合の対応策についてもご紹介します。

1.相続税の調査とは申告漏れのチェック

相続税の税務調査とは、相続税の申告をした方の申告内容が正しいかどうかをチェックするものです。
相続税の申告をした全員が調査対象ではなく、税務署が事前に申告書を確認して調査するべき必要がある方のところへ行きます。

税務調査の主な目的は申告漏れしている財産の把握です。大きくは2つに分かれ「申告漏れ(単純な漏れや過少評価)の是正」「隠ぺいしている財産の是正」となります。どちらもペナルティか発生しますが、隠ぺいが見つかった場合のペナルティはかなり大きいものになります。

図1:税務調査の目的と課される税(ペナルティ)
税務調査の目的とペナルティ
 

2.相続税の税務調査の対象になるケースとは

相続税の税務調査の対象になるケースとならないケースがあります。
それぞれどのようなケースが対象となるのかをご紹介します。

2-1.相続税の税務調査対象になる9つのケース

税務調査の対象になりやすいケースにはどのようなものがあるのか、ご紹介します。
主に、次の9つのケースが対象になりやすいといえます。

<相続税の税務調査対象になりやすい9つのケース>
(1)毎年の所得に比べ申告した財産が少ないと考えられるとき
(2)死亡前に所有していた土地や株式等の売却代金が申告財産に含まれていないと考えられるとき
(3)銀行の照会回答から、相続直前に多額の預金の引き出しがあり、それが申告財産に含まれていないと考えられるとき
(4)多額の借入金などがありながら、それに見合う申告財産がないとき
(5)遺産額が高額なとき
(6)農地の納税猶予を適用している場合で、実際の農地以外になっている疑いがあるとき
(7)オーナー社長等で会社に対して多額の借入金や貸付金があるとき
(8)被相続人(亡くなられた方)が著名人であったとき
(9)相続税の申告対象であるにも関わらず、期間内に申告をしていないことがわかったとき

2-2.相続税の税務調査の対象にならない3つのケース

一方、相続税の税務調査の対象にならないケースには主に3つのものがあります。
日ごろの生活において必要なお金を、祖父母や親から子どもや孫へ渡している場合など、贈与税の対象とならない内容については、もちろん税務調査の対象にもなりません。

<相続税の調査対象にならない3つのケース>
(1)同居していた父親から、生活費として毎月10万円、年間120万円もらっていた
(2)母親が認知症になり、病院の入院代や生活費などを母親の口座から代わりに毎月下ろしていた
(3)子どもの塾代を負担してくれるとして、毎月8万円ずつ両親からもらっていた

3.相続税の税務調査の連絡がきたらやるべきこと

相続税の税務調査の連絡は、亡くなられた後の1,2年後の秋に来ます。
税務調査の対象となる方は、相続税の申告をされた全員ではなく、税務署が申告書をもとに調べた結果、税務調査が必要だと判断された方です。相続税の税務調査の通知は、主に電話が使用されます。通知先は、税理士に依頼していた場合は担当税理士へ、ご自身で相続税の申告を行った場合は、ご自身(相続人)連絡が来ます。

3-1.担当税理士に速やかに相談する

担当の税理士を経由して税務調査の日程調整の電話がきます。おおよそ1週間から10日以内に税務調査を行う事になります。
断れる内容ではないため応じる必要がありますが、まずは税理士と日程の調整をおこなうとともに、その場ですぐに担当の税理士に相談しましょう。

3-2.申告に不備がなかったか再度確認

2-1章でご紹介した、税務調査の対象になりやすい項目に該当する内容はないかを確認しましょう。
些細なことでも気づいたこと、不安なことがあれば担当の税理士に話をしましょう。税務調査の当日に税理士が知らないことが発覚すると税理士もフォローが難しくなります。
そのほか、以下の項目についてもご確認ください。

<申告の不備につながる可能性のある内容>
(1)亡くなられた方の財産に申告していないタンス預金がある
(2)亡くなられた方の所有していた骨董品を申告していない
(3)証券会社からの資料があったが、株のことは分からないので放置した
(4)3年以内に贈与を受けたが贈与税の申告をしたので放置した
(5)生活に必要な資金として、保育園代の補填8万円/月を3年分まとめてもらった
(6)2年前に車や家を購入する際の頭金として、それぞれ150万円ずつ出してもらった
(7)毎年子どもの誕生日に、贈与税の非課税枠である110万円ずつ口座に振込みをしてもらっている
(8)土地の仕様用途が間違っていた
 
図2:亡くなられた方が過去に贈与した財産の正しい取り扱い
亡くなった方が過去に贈与した財産の正しい取り扱い
 

3-3.贈与財産についても確認する

相続税の税務調査れすが、過去に行われた贈与財産についても質問されても問題が無いよう、確認しておきましょう。

<相続財産を把握するための原資資料>
(1)権利書
(2)通帳
(3)証書
(4)印鑑
(5)会社の申告書
(6)元帳
(7)議事録   など

 

4.税務調査で行われること

税務調査は、基本的には亡くなった方の自宅でおこなわれます。
税務調査の当日は2人の税務署の職員がきます。10時に開始しておおよそ17時に終わります。
税務調査が完了すれば1日で終わりますし、考え方の確認など現地以外で対応可能な内容を残すのみであれば、後日税理士と打ち合わせをして進んでいきます。
税務調査により修正申告が発生するケースが高いことや、相続人が知らないところで追徴が発生すると揉め事が起こりやすくなります。税務調査については、相続人の全員出席または、税務調査の傾向や実施の事実を予め相続人全員に周知して当日を迎えましょう。

4-1.午前は聞き取り調査

午前中は、税務調査のため相続人となった方々に聞き取りをします。さまざまな内容の質問がされます。
具体的な質問とその意図、問題点を一部ご紹介します。

表1:質問のポイントと問題点などの一覧

質問のポイント 問題点など
被相続人(亡くなった方)の職業、財産形成の仕方 収入に比べて、財産が少ない
相続人の職業、所有財産 収入に裏づけがあるか
被相続人から贈与された財産が含まれていないか
被相続人の病気、入院状況 意思能力があったか、誰がお金を自由にできたか
遺言書の有無 遺言書の記載内容はすべて申告されているか
財産の管理状況(管理者と保管場所) 管理していた人(お金を自由にできた人)は誰か
貸金庫をもっていないか
生活費の概算額、支払い状況 収入と生活費を比較し、日常的な残余資金がないか
各収入の受領状況 現金による受領が無いか
取引金融機関の確認(事前調査済み) 被相続人、相続人、同居親族のもの全て照会し、怪しい資金移動がないか
過去の資産の譲渡の有無 多額の現金収入があったかどうか
その現金がどのような財産に変わったか
借入金の使途 相続人の財産になっていないか
贈与・貸付の有無 贈与税の申告はされているか、貸付金の返済はされているか

4-2.午後の税務調査は現物確認と結果通知

午後は、午前中の聞き取り調査の内容をもとに、現物の確認や置き場所などの確認を行います。どのようなものを確認するのかは財産の種類と確認する資料の一覧をご確認ください。
税務調査が終了すると結果の通知があります。

表2:財産の種類と確認資料の一覧
財産の種類 確認資料
預貯金・保険等 被相続人、相続人、同居の親族の預金通帳、証書、保険証券、印鑑
⇒割引債、ゆうちょ銀行等の取引は細かく見る
取引先の把握 手帳、日記、香典帳
株式 株券の現物、各種通知、保護預かり明細書
会社の役員 株主名簿、株主総会・取締役会等の議事録、元帳、源泉徴収簿等
土地 権利書、利用状況の確認

5.修正申告が発生したらペナルティを支払う

務調査を行った結果修正申告が必要となるケースはここ数年では8割を超え、税務調査の対象となった方の大半が修正申告をしています。実際に修正申告の対象になった場合に、どのような対応が必要になるのか確認しておきましょう。
修正申告の対象となった場合の追徴額の平均は約600万円にもなります。

<申告漏れの財産にかかるペナルティ>
・延滞税
・内容に応じて支払う「過少申告加算税or重加算税」

※延滞税について詳しくは、こちらをご覧ください。

※重加算税について詳しくは、こちらをご覧ください。

6.まとめ

税務調査は、相続が発生した方全員が対象ではなく、相続税の申告が必要な方の中から必要に応じて実施されます。
税務調査の通知が来たら、担当税理士がいれば相談し、申告内容のどこに不備があったのか改めて相続財産や贈与を確認し、税務調査当日までに準備をしておきましょう。
相続税の申告漏れが見つかると、ペナルティを支払う必要があります。修正申告を速やかに正しく行い、ペナルティの支払いを少しでも少なく抑えるためにも、担当の税理士がいらっしゃらない場合にはお近くの税理士にぜひご相談ください。

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