相続税対策で生命保険が有効な5つの理由と保険の選び方【税理士編】
- 相続税
「相続税対策に生命保険が活用できると聞いたがどうしてだろう…。」
「生命保険の非課税枠はいくらかしら。」
「生命保険に加入するデメリットはあるのかな。」
相続税対策としてどのように生命保険を活用したらよいのでしょうか。
本記事では、生命保険が相続税対策となる5つの理由について、また、数ある保険の中から相続税対策となる商品の選び方についてご紹介いたします。生命保険に加入するデメリットについても参考にしていただければと思います。
保険に加入できる方の年齢の上限はおよそ90歳未満と言われています。相続財産が多く相続税がご心配な方は、早めの対策をしましょう。
目次
1.相続税対策として生命保険は活用できる
生命保険は亡くなられたことをきっかけとして相続人が受け取る財産であることから、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。生命保険には様々な種類があり、契約により税金が異なります。
まずは相続税の対象となるのかを確認しましょう。
相続税対策で生命保険が活用できる大きなポイントとして、「生命保険には相続税の非課税枠がある」と「受取人を指定できる」が挙げられます。次章で詳しくご説明いたします。
図1:相続税の対象となる保険契約か確認する
2.相続税対策として生命保険が有効とされる5つの理由
生命保険が相続税対策になる理由をご説明いたします。
2-1.①生命保険の非課税枠が利用できる
生命保険金には非課税枠があります。
ご自身が亡くなったあとご家族が生命保険金を受け取った場合、相続税の計算時に法定相続人1人当たり500万円までが非課税となります。
図2:生命保険の非課税枠の計算式
【事例】
亡くなられた方:お父さま
死亡保険金:お父さまが死亡保険金に加入し、自ら保険料を支払い
死亡保険料:2,000万円
法定相続人:お母さま、長男・長女の3人
生命保険の非課税枠:1,500万円(500万円×3人)となるため、残りの500万円(2,000万円-1,500万円)だけが相続財産にプラスされ相続税の課税対象となります。
預金で2,000万円持っていた場合には、全額が相続財産なることと比べてみると、保険金で受け取った場合は、相続税の課税対象額を1,500万円低く抑えることができるのでその節税効果は絶大です。
図3:2000万円の保険金と預金を受け取った場合の違い
2-2.②生命保険は受取人が指定可能
受取人が指定された生命保険金は相続財産に含めません。
遺産分割協議の対象外とされますので、ほかの相続人の了承を得ずに単独で手続きをすることができます。
受取人を指定しておくことでご自身の希望する方に財産を引き継ぐことができますので、遺産分割のトラブルを防ぐことができます。生命保険は遺言の代わりにもなるといえます。
図4:保険金の受け取り人は必ずもらえる
2-3.③相続税の納税資金として確保できる
相続税の納付方法は、原則として現金一括納付です。
相続した財産が不動産ばかりだと、納税資金が用意できずに相続した不動産を売却せざるをえないケースもあります。
生命保険をかけていれば、亡くなられた際に生命保険金がもらえるため、納税資金として活用することができます。
2-4.④生命保険は相続放棄をしても受け取れる
亡くなられた方に多額の借金がある、などの理由で相続人が相続放棄をする場合もあることでしょう。
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったとみなされますので、マイナスの財産だけではなく、プラスの財産を含む相続財産のすべて引き継ぐことができません。
しかし、生命保険金は受取人固有の財産となるため、相続放棄をしても受け取ることができます。
2-5.⑤生命保険料の生前贈与を使った節税対策
生命保険の受取金額が非課税枠を超える場合には、生前贈与の活用をご検討ください。
たとえば、ご自身を被保険者、息子さんを保険の契約者かつ受取人とする保険に加入します。贈与税の年間110万円までの非課税枠内で息子さんに贈与したお金を、息子さんが保険料として支払います。
生命保険金の保険契約者と受取人が同一の場合、ご自身(被保険者)が亡くなられた時点で受取人である息子さんに支払われる保険金には、相続税ではなく所得税が課税されます。
被保険者 | 保険契約者 | 受取人 | 課税関係 |
---|---|---|---|
お父さま | 長男 | 長男 | 所得税 |
所得税の計算式は以下のようになります。
図5:一時所得の計算式
図6:保険料を非課税で贈与して支払うイメージ
3.相続税対策に最適な保険の種類
生命保険(死亡保険金がある保険)には大きく分けて定期保険、養老保険、終身保険の3種があります。いずれにおいても保険期間内に死亡すれば死亡保険金が出ますので、相続税の死亡保険金の非課税枠を使うことができます。ただし、それぞれの保険にはそれぞれの目的があるため、用途を確認しましょう。
種類 | 保険期間 | 保険内容 |
---|---|---|
定期保険 | 有期限 | 「子どもが大きくなるまで」など一定期間の保障を大きくする保険。 掛け捨ての保険のため、保険料が比較的安価 |
養老保険 | 有期限 | 貯蓄・運用の目的が主な保険。保険期間については死亡保障あり。 |
終身保険 | 無期限 | 生涯保障で、死亡した際に必ず保険金がもらえる。最も相続税対策として活用されている保険。 |
図7:保険の3つの種類と特徴
3-1.終身保険
終身保険は一生涯の保障が受けられる保険であるため、亡くなられた年齢に関わらず死亡保険金が受け取れます。
保険には、掛け捨て型と貯蓄型があります。
相続税対策として死亡保険金で非課税枠を活用することを目的としている場合には、死亡保険金が確実に受け取れ、途中解約しても解約返戻金がある貯蓄型の終身保険を検討されるとよいでしょう。
※終身保険について詳しくは、こちらを参考にしてください。
3-2.長期平準定期保険
長期平準定期保険とは、保険加入の期間が「100歳まで」のように長期間で、かつ保険期間中に支払う保険料がずっと変わらないというものです。
長期平準定期保険は終身保険と比べて保険料が若干安く設定されていますが、終身保険に近い死亡保障が受けられます。また、無解約返戻金型の商品もあり、これは解約返戻金がつかない代わりに毎年の保険料が更に安く設定されています。
ただし、あくまで定期保険ですので保険期間に終わりがあります。100歳までの長期平準定期保険だとしても、100歳を超えて死亡した場合には死亡保険金は受け取れませんのでご注意ください。
4.相続税対策で生命保険に加入する3つのデメリット
相続税の対策として生命保険を活用する場合に、おさえておくべき3つのデメリットを確認しておきましょう。
4-1.相続人以外が受取人の場合は非課税枠が利用できない
相続税対策としてメリットとなる生命保険金の非課税枠「500万円×法定相続人の数」は、相続人が生命保険料を受け取った場合に利用できます。
相続人以外の方が生命保険金を受け取った場合についてはこの非課税枠が利用できないため注意が必要です。
4-2.長期間の保険料支払いは資金繰りが大変になる
保険料の払込期間を長期に設定すると、資金繰りの影響で途中解約せざるを得ない状況が来る場合もあります。
保険商品によっては途中解約をすると、解約返戻金が少ないなど、不利になることもありますので、長期的な計画の上、資金繰りに無理のない範囲で保険の加入金額を決めてください。
4-3.逓増定期保険(低解約返戻金型)にご注意を
以前の相続税対策の主力商品であった逓増定期保険(低解約返戻金型)の払込保険料と解約返戻金の差を利用した財産圧縮法は、最近では税務調査や訴訟の対象となっています。
この種の節税商品の購入をご検討の方は十分にご注意ください。
5.まとめ
生命保険には非課税枠があることから相続税対策になることがご理解いただけたと思います。ただし生命保険の契約者や受取人を誰にするのかによって課税される税金が異なりますので、注意が必要です。
生命保険にいくら加入したらよいか迷われている方は、生命保険の非課税枠が一つの目安になります。
すでに非課税枠いっぱいまで加入の方は、一時所得加入方式や、学資金や住宅購入資金の生前贈与など生命保険以外にも家族に遺産を上手に遺す方法がありますので、相続税対策を生命保険一本に絞るのではなく、様々な方法を検討されるとよいでしょう。