相続税の修正申告はペナルティがかかる！自分で申告する方法と期限

「相続税の申告後に自宅に現金が見つかったけど、どうやって修正したらいいのかしら。」
「自分で相続税の申告書を作成して提出したけれど、計算を間違えてしまった！修正申告をするとペナルティがあるのかな。」

相続税の申告は亡くなられた日の翌日から10ヶ月以内と決まっていることから、急ぎ対応をされたことでしょう。

相続税の申告と納税後に、新たな財産が見つかった場合や相続税額の計算が間違っていることに気付いた場合などは、申告をやり直さなければなりません。相続税の修正申告といいます。

相続税を少なく納めた場合には税務調査の対象になり、誤りを指摘されて気付く場合もあります。

本記事では、相続税の修正申告が必要となるケースや申告期限後に修正申告した場合にかかるペナルティの税金について詳しくご説明いたします。期限後の修正申告は、日数が経過するほどペナルティが増えていきますので、早めに対応することが大切です。

1.「修正申告」は本来納めるべき税額より少なく申告した場合のやり直し

相続税の申告書を提出し納税もおこなった後で、新たな財産が見つかった場合や相続税の計算が間違っていた場合などは、相続税の申告書を修正して提出しなおさなければなりません。税額を少なく申告していたときは「修正申告」、税額を多く申告していたときは「更正の請求」を行います。相続税の申告期限内に正しい税額に修正する手続きは「訂正申告」といいます。

図1：納税額が不足している場合は「修正申告」

図2：払い過ぎた税金の還付を受ける「更正の請求」

図3：相続税の修正申告の手続き一覧

※相続税の更正の請求について詳しくは、こちらを参考にしてください。

2.相続税の修正申告が必要となる4つのケース

相続税の修正申告が必要になる4つのケースをご説明いたします。

2-1.申告後に新たな財産が見つかった

新たな財産が見つかった場合は、相続財産の総額が増えることになり相続税を追加で納める必要が生じますので、修正申告を早急に行います。

相続税の申告期限を過ぎている場合は、延滞税の支払いも必要です。「バレないと思って隠している」「指摘されたら修正すればいい」と放置してはいけません。税務署に指摘されると、ペナルティの対象となることがあります（4章参照）。税務署から申告漏れの指摘をされる前に、自ら「修正申告書」を提出することが大切です。

※税務調査について詳しくは、こちらを参考にしてください。

2-2.財産評価の誤り

相続財産に土地が含まれている場合、土地の評価はとても複雑です。土地は、不整形地、がけ地、間口狭小、広大地などは価値を評価するにあたり専門知識が必要です。税理士によっても評価が異なることが多いため、評価額に不安がある場合も相続に強い税理士に再評価の依頼をすることをおススメいたします。

図4：土地の評価はとても複雑

※相続財産の評価について詳しくは、こちらを参考にしてください。

2-3.相続税の特例の適用の誤り

相続税には税額を軽減する特例があります。細かな要件がありますので、申告事項に間違いがないか再度確認しましょう。

①配偶者の税額軽減
配偶者が引き継いだ相続財産の額が法定相続分または１億6,000万円までであれば相続税が課税されません。

②小規模宅地等の特例
一定の要件を満たす方が亡くなられた方のご自宅に使われていた土地を相続した場合は、相続税を計算するときの土地の評価額を最大80％減額できます。

※配偶者の税額軽減について詳しくは、こちらを参考にしてください。

※小規模宅地等の特例について詳しくは、こちらを参考にしてください。

2-4.期限後に遺産分割協議がまとまった

相続税は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に申告と納税をしなければなりません。遺産分割協議が申告期限内に調わない場合には、法定相続分で分割したものとして仮の申告を行います。遺産分割協議が調ったら、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」等の相続税の特例を適用することができます。

初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が少ない場合は「更正の請求」、初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が多い場合は「修正申告」を行います。

※未分割で相続税の申告をする場合について詳しくは、こちらを参考にしてください。

3.相続税の修正申告を自分で行う4STEP

修正申告は「修正申告書」に訂正前の金額と訂正後の金額を記入し、追加書類があれば添付して税務署（亡くなられた方の最後の住所地を管轄する税務署）へ提出します。 注意点としては、修正申告書を提出した日が納期限となりますので、申告書を提出する前に不足している金額を納付する必要があります。

①必要書類を準備
②相続税の修正申告書を作成
③不足している金額を納付
④税務署へ修正申告書を提出

3-1.必要書類

相続税の修正申告の必要書類は下記の通りです。相続税の修正申告書は国税庁ホームページよりダウンロードできます。

⑴相続税の修正申告書
⑵納付書
⑶本人確認書類
⑷追加書類（「配偶者の税額軽減額の計算書」「小規模宅地等についての課税価格の計算明細」など）

3-2.修正申告書の書き方

相続税の修正申告書の書き方は相続税申告時と基本的に同じです。修正申告の際は相続税申告書第1表に必要事項①②③の記載が必要です。

①右上の「修正」に〇を付ける
②左下の「この申告書が修正申告書である場合」欄に修正前の税額や増加額などを記載
③右下の「この申告が修正申告である場合の異動の内容等」欄に修正する内容を記載
（例：未分割の財産を分割したため）

図5：修正申告書の書き方

※相続税申告書の書き方について詳しくは、こちらを参考にしてください。

3-3.修正申告の期限

相続税には時効があり、法定申告期限（亡くなられたことを知った日の翌日から10ヶ月以内）から5年（悪意がある場合は7年）です。相続税の修正申告の時効も同様に法定申告期限から5年で成立します。税務署から連絡がこないまま修正申告をせずに5年が経過すると、ペナルティの税金を支払わずに済みます（4章参照）。ただしペナルティの税金は納付が遅れるほど高くなりますので、早急に手続きを行うことが大切です。

図6：修正申告の期限

4.相続税の修正申告にかかるペナルティ

相続税の申告が必要な方が申告期限までに申告と納税を行わない場合は、本来納めるべき相続税の額に加えてペナルティの税金（延滞税、加算税）が発生します。

図7：修正申告ではペナルティの税金が発生する

4-1.納付期限を過ぎた：延滞税

相続税の納付期限を過ぎて納付した場合には、遅れた日数を基準にペナルティとして延滞税の支払いが発生します。日数が基準となりますので、1日でも早い納税をオススメします。

延滞税の税率は、納付期限から”2ヶ月以内”と”2ヶ月を経過後”の２段階に分けられます。原則の税率が決まっていますが、令和6年度は特例税率の適用があります。

図8：延滞税の特例税率の考え方
 

延滞税は納付期限から2ヶ月以内の追加で納めるまでの日数に応じて年率2.4％の割合で、2ヶ月を経過後は年率8.7％の割合で課税されます。

※延滞税について詳しくは、こちらを参考にしてください。

4-2.相続税の申告が少なかった：過少申告加算税

誤って少なく税金を申告してしまった場合でも、税務調査を受ける前に、自主的に修正申告書を提出した場合には課税されません。税務署の指摘により申告額が少なかった際に修正申告をする場合は、過少申告加算税が課されます。

4-3.相続財産を仮装・隠ぺいした：重加算税

申告内容に仮装や隠ぺいの事実が認められた場合は、過少申告加算税と無申告加算税に代わり、重加算税が課されます。相続税の申告をしていた場合（過少申告）は納付する税金の35％相当額です。かなりの税負担となりますので、申告は必ず行ってください。

申告書提出の有無	税率
申告書を提出していた場合（過少申告）	35％
申告書を提出していなかった場合（無申告）	40％

5.まとめ

相続税の申告と納税期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。期限内に遺産分割の話合いを終え、相続税を軽減できる特例をしっかり適用して正しい申告書を提出するのは、とても大変です。

相続税の計算や相続財産の評価が間違っている場合は、修正申告が必要になります。申告期限後に修正申告を行うと必ず延滞税がかかります。税務調査で指摘を受けた後に修正申告を行うと、ペナルティの税金が課せられますので早急に対応しましょう。

相続税の申告が必要な方は、ぜひ相続税の経験が豊富な税理士への依頼をおすすめ致します。