相続人代表者とは?相続で果たす役目を理解しスムーズな相続手続きを

  • 相続手続き

「相続人代表者って何をするのかな…。必ず決めなくてはならないのかしら?」
「相続人代表者に指定されると、固定資産税を全額支払う義務が生じてしまうのかしら…。」

相続の手続きにおいて、金融機関へ提出する相続届には「相続人代表者」を指定する欄があったり、また、市役所からは、「相続人代表者指定届の提出について」という書面が郵送で送られてくることがあったりと、「相続人代表者って何だろう?」と不安になられていると思います。

本記事では、相続人代表者とは何か、その役目と主な手続きについてご説明いたします。内容をご理解いただいた上で、相続人代表者に適した方を選び、煩雑な相続手続きをスムーズに効率よく進められることを願っています。

1.相続人代表者とは「連絡窓口となって相続手続きを取りまとめる役目を担う人」

相続人代表者は、相続人の方が複数名いる場合において、代表して相続手続きを進めていく方のことです。相続手続きで関係する役所、金融機関、税務署などに対し、相続人代表者が連絡窓口となって手続きを取りまとめていくことで、煩雑で時間を要する相続手続きを、効率よくスムーズに進めることができます。

相続人代表者になったからといって、引き継ぐ財産が増えるというメリットがあるわけではありません。また、他の相続人よりも責任が重くなることもありません。税金を多く支払う義務を負うこともありません。

それならば、「相続人代表者」なんて決めなくてもいいのでは?と思われるかもしれませんね。

確かに、相続人代表者を決めなくてもペナルティはありませんが、相続人代表者が窓口となって取りまとめる効果は大きく、手続きが効率よく、確実に進むので、相続トラブルが起きにくいといえるでしょう。

図1:相続人代表者は連絡窓口となって手続きをとりまとめる役目を担う

2.相続人代表者の主な4つの役割

相続人代表者を決めた方が円滑に進む4つの手続きとその役割についてご説明いたします。

【相続人代表者がおこなうべき4つの手続きとは】
①金融機関の名義変更や解約手続き(2-1)
②固定資産税納税通知書の受取人変更手続き(2-2)
③相続税の申告書の作成(2-3)
④換価分割(不動産などを売却して現金に変えて分割する)の代表名義人(2-4)

2-1.金融資産の代表受取人となって分配する

相続人代表者は、亡くなられた方の預貯金や有価証券などの解約(払い戻し)や名義変更手続きを代表しておこない、解約後の現金を「代表受取人」として受領します。受領した現金は、分割割合に応じ、相続人代表者から相続人に分配します。

金融機関の相続手続きは、原則、相続人全員で窓口に出向く必要があるのですが、相続人代表者を指定すれば、煩雑な手続きを簡略化し、効率よく進めることができるのです。

また、ご利用の金融機関により取扱い方法は異なり、解約後の現金を相続人各々に払い戻し可能な場合もありますので、事前に確認されることをお勧めいたします。

図2:相続人代表者を決めると1人で払い戻しや名義変更の手続きができる

※預金の相続について詳しくは、こちらを参考にしてください。

2-2.固定資産税の納税通知書を受け取る

不動産を所有されている方に届く「固定資産税納税通知書」は、原則その年の1月1日時点の登記上の名義人宛に送付されています。

相続が発生した場合、相続登記が完了するまでは、いつまでも亡くなられた方宛に通知書を送付することになってしまい、受け取り手が不在となり、固定資産税が未納となることが考えられます。

そこで、役所より「相続人代表者指定届」という書類が相続人宛に送られ、相続人代表者を指定すれば、その方宛に固定資産税納税通知書が届き、支払い漏れを防ぐことができます。

図3:相続人代表者を指定して固定資産税納税通知書を受け取る

※相続発生後の固定資産税の支払いについて詳しくは、こちらを参考にしてください。

2-3.相続税の申告手続きを取りまとめる

相続税は、亡くなられてから10ヶ月という申告及び納税期限があり、この期限までに相続人全員が共同で署名押印して相続税申告書を管轄の税務署へ提出する必要があります。

相続税の申告手続きはとても複雑なため、ほとんどの方が税理士に依頼されると思います。

そうした場合でも、相続人代表者を決め、窓口の役目を担い、税理士との連絡や必要書類の取りまとめをおこなうことで、申告手続きがスムーズに進み、期限に間に合わない!といった事態を防ぐことができます。

2-4.換価分割するための相続登記(名義変更)の代表者となる

不動産を相続しても住む予定がない場合や、相続財産のほとんどが土地や建物であった場合、該当の不動産を売却して換金し、そのお金を相続人で分ける分割方法(換価分割)があります。 

不動産の売買契約は、亡くなられた方の名義のままでは成立しませんので、相続人の方にいったん名義を移さなければなりません。その場合、相続人の人数が多ければ、売買契約自体が煩雑になってしまうため、相続人代表者の方を決めて、その方に売却行為を託すと手続きが簡略化され、スムーズに進みます

遺産分割協議書には、相続人代表者に売却行為を任せ、換金された後に、必要経費などをすべて差し引き、分割をおこなう旨をきちんと明記しておけば、贈与とみなされる心配もありません。

※換価分割のための相続登記について詳しくは、こちらを参考にしてください。

図4:相続人代表者に不動産名義を変更して売却手続きをする

3.相続人代表者の選び方

相続人代表者は相続人の中から選びます。代表者になる資格や順番はなく、どなたでもなることができます。平日に金融機関や法務局にいくことができ、書類などの管理がきちんとできる方、また、預貯金などの解約が整った際には、速やかに分配することができる、責任感の強い方にお任せするのがよいでしょう。

相続手続きごとに相続人代表者を決めて、手続きの負担を分け合うこともできます。お忙しい方や確実に手続きを進めたい方は、委任状などで専門家に依頼することもできますので、相続人同士でよく話し合って決めましょう。

4.相続人代表者の5つの注意点

「相続代表者になり手続きをすると相続財産の取得分が増えるのだろうか」、「相続代表者が固定資産税を全額支払う義務が生じるのかしら…。」など、相続代表者になることにより金銭的に利益を得たり、一方で負担や責任が増えるのだろうかとと不安を抱いている方も多くいらっしゃると思います。

以下の5つの注意点についてご説明いたします。

4-1.相続人代表者だけが納税義務者ではない

遺産分割がととのうまでは、相続財産は相続人全員で共有していることになります。不動産の場合、相続登記(名義変更)が完了するまでは、固定資産税の納税義務も相続人全員が法定相続分に応じ、連帯して負うことになります。

相続人代表者だけが固定資産税の支払い義務を負うわけではありません。万が一、相続人代表者が立て替えて支払いをした場合は、他の相続人に対して清算を求めることができます。

4-2.相続人代表者になっても相続できる割合は増えない

相続人代表者の相続分が増えることはありません。相続の手続きを代表しておこなうだけなので、預金の払い戻しを受領しても、その預金を全額引き継げるわけではないということになります。ただし、相続人間で相続人代表者に報酬を支払うという取り決めをすることに問題はありません。

4-3.税金の未納分に関し立て替えを求められる可能性がある

相続人代表者の指定は義務ではありません。市区町村から送付された「相続人代表者指定届」の提出をしなくても問題はありませんが、固定資産税等の納税を逃れることはできません。遺産分割協議がととのうまでは、相続人全員で負担することが原則です。

万が一、滞納すると延滞金や差し押さえ等のペナルティがあります。このようなリスクを避けるためにも、相続人代表者を決めて、きちんと手続きを進めることをお勧めいたします。

4-4.相続放棄した場合の対処方法

稀に、相続放棄をした方宛に、「相続人代表者指定届」などが送付されてくることがあります。相続人代表者指定届や固定資産税納税通知書を受け取ってしまっても、相続放棄が無効になることはありません。

相続放棄されていた場合は、役所などへその事実をきちんと伝えるか、ほかの相続人の方に代わって手続きをしてもらいましょう。固定資産税などを支払ってしまうと相続放棄ができなくなりますので注意が必要です。

4-5.遺産分割協議書には相続人代表者であることを明記しておく

相続人代表者を明記した遺産分割協議書を作成しましょう。相続人代表者が預貯金などの全額を受領してから、各相続人に分配する場合に、後で税務署に贈与ではないか?と疑われないためにもきちんと明記して手続きの経緯を記しておくことが必要です。遺産分割による財産の分配であるという証明になります。

【遺産分割協議書の記載例】

金融機関の解約(払い戻し)であれば、「相続人代表者を○○とし、代表して金融機関の相続手続きをおこなうこととし、相続人代表者の指定口座に解約金全額を振り込むものとする。その後、振込手数料は差し引き、相続割合に応じて(もしくは、いくらと限定)、各人の指定口座に、相続人代表者が○月○日まで(期限を設ける)に各々に振り込むものとする。」という記述を遺産分割協議書に明記しておきます。

図5:遺産分割協議書に相続人代表者と分割の経緯を明記しておく

5.まとめ

相続人代表者は、相続人の方が複数名いる場合において、代表して相続手続きを進めていく方のことです。

相続人代表者を指定すると、金融機関の解約をするときに、相続人代表者に一括で亡くなられた方の預貯金の解約(払い戻し)を受けることができます。

固定資産税納税通知書の受け取りや、相続税の申告をするときの専門家との連絡窓口をするなどの役割もあり、相続人代表者を決めることにより、手続きがスムーズに進みます。

不動産を売却し、換金して分割する換価分割の際も、相続人代表者を決めることで、煩雑な手続きが簡略化できます。

相続人代表者を指定したときは、必ず遺産分割協議書を作成し、手続きの経緯を明記し、贈与とみなされないための証明を残しましょう。

相続人代表者は、相続分が増えたり、納税の義務を1人で負わなくてはならないということはありません。あくまでも、相続手続きを代表しておこなう方となりますが、手続きをスムーズに終えるためには必要な役割です。相続人間でよく話し合って、責任感があり、信頼できる方を相続人代表者に選び、相続の手続きを進めていただきたいと思います。

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