相続関係説明図は自分で簡単に作れる！法定相続情報一覧図との違い

相続が発生して不動産や銀行の名義変更手続きを行った際に相続関係説明図を持参したかどうか聞かれ、
「相続関係説明図とは、なんだろう？」
「相続手続きの際に必ず必要な書類なのかな？」
と疑問に思われたかもしれません。

相続関係説明図とは、亡くなられた方と相続人の関係を示した家系図のような図のことです。相続関係説明図をどのような場面で活用するのか、ご自身で作成できるのか知りたいとお考えでしょう。

本記事では、相続関係説明図の概要と作成方法についてご説明いたします。
相続関係説明図と似た書類である「法定相続関係一覧図」との違いについても参考にしていただき、ご自身の状況に応じてどちらを提出するかを選択していただければと思います。

1.相続関係説明図とは相続人の関係が一目でわかる図

相続関係説明図は、亡くなられた方と相続人の関係を説明する家系図のような図です。亡くなられた方の氏名、生年月日、亡くなられた日、最後の住所と亡くなられた方から見た相続人の続柄（夫、妻、長男、長女など）などを記載します。相続関係説明図は不動産の名義変更や預貯金の解約など各種相続手続きに活用できます。必ず提出が必要な書類ではありませんが、ご自身で簡単に作成できますので作成することをおススメいたします。

図1:相続関係説明図

2.相続関係説明図を作成する目的

相続関係説明図を作成することにより、戸籍謄本を返却してもらえますので、相続手続きをスムーズに進めることができます。また、特に相続人関係が複雑な場合は、亡くなられた方と相続人の関係を整理する上で役に立ちます。

2-1.戸籍謄本を返却してもらえる

相続関係説明図を作成する最大の目的は、不動産や預金の名義変更などの相続手続きの際に相続関係説明図を添付することにより戸籍謄本を返却してもらえることです。相続手続きでは、亡くなられた方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要になります。これは相続人の確定をするためです。

現在の戸籍制度では、婚姻により新しい戸籍が作られたり、法改正に伴う戸籍の作り替えなどによる戸籍の異動があっても内容のすべてを新しい戸籍に書き換えることをしません。そのため、亡くなられた方の戸籍謄本（除籍謄本、改製原戸籍謄本）は通常5～7通を取得する必要があります。戸籍謄本一式を返却してもらえると手続きの上でも金銭的にも負担が減ります。

図2：相続関係説明図を提出すると戸籍謄本を返却してもらえる

 

2-2.相続人の関係が整理できる

相続関係説明図を作成すると亡くなられた方と相続人との関係性が一目でわかります。特に相続人が多い場合や離婚・再婚を伴う場合、本来相続人になる方が先に亡くなられているためその相続人の子どもが相続する代襲相続などの複雑な相続の場合であっても、相続関係説明図は亡くなられた方と相続人の関係を整理することができます。遺産分割協議にも活用することができます。

3.相続関係説明図作成の3ステップ

相続関係説明図は3つのステップで作成することができます。法的な難しい決まりはなく、比較的自由に作成することができます。専門家に依頼しなくても、ポイントをきちんと押さえていれば、ご自身で十分作成することが可能です。

【相続関係説明図作成の3ステップ】
①相続関係説明図に記載すべき情報を確認
②必要書類の準備
③フォーマットを利用して作成

3-1.ステップ①：記載する情報の確認

相続関係説明図に記載するのは、以下の情報です。
①亡くなられた方：氏名、最後の住所、最後の本籍、出生日、亡くなられた日、被相続人であること
②相続人全員：氏名、現在の住所、出生日、相続人であること

亡くなられた方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本（除籍謄本および改製原戸籍）と相続人全員の戸籍謄本が必要になります。

図3：相続関係説明図を作成するために必要な書類

3-2.ステップ②：必要書類の準備

亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本は、まず初めに亡くなられた方の最後の本籍地の市区町村で取得し、出生まで順に遡っていきます。

取得方法は、「窓口での取得」「郵送での取得」「委任状を作成し代理人が取得」の主に3つの方法があります。市区町村によっては、コンビニエンスストアで取得できる所もありますので、事前に確認とよいでしょう。また、戸籍謄本に現住所は記載されないので、住民票または戸籍附表（戸籍内の全ての住所が記載）を取得します。

表1：相続の相関図の必要書類と取得先

書類の種類	取得先	取得費用
亡くなられた方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、除籍謄本および改製原戸籍	亡くなられた方の本籍地の市町村役場	通常5～7通ほど取得する 戸籍謄本1通450円 除籍謄本1通750円 改製原戸籍1通750円
亡くなられた方の住民票の除票または戸籍附表	住民票は市町村役場 （戸籍附表は本籍地の市町村役場）	1通300円
相続人全員の戸籍謄本	相続人の本籍地の市町村役場	1通450円
相続人全員の住民票または戸籍附表	住民票は市町村役場 （戸籍附表は本籍地の市町村役場）	1通300円

※戸籍謄本の取り方について詳しくは、こちらを参考にしてください。

図4：亡くなられた方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本の取り方

3-3.ステップ③：フォーマットを利用して作成

亡くなられた方と相続人の方の関係性をすべて整理することができたら、相続関係説明図を作成します。相続関係説明図は、法務局のホームページにある「法定相続情報一覧図」のテンプレートを利用して作成できます。

法務局のテンプレートのタイトルを「法定相続情報」から「相続関係説明図」に変更しましょう。
法定相続情報一覧図と相続関係説明図の違いについては、4章でご説明します。

参考：法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」

図5：相続関係説明図の書き方 

4.相続手続きが多いときは法定相続情報一覧図を利用

法定相続情報一覧図とは亡くなられた方と戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした図です。相続人が法務局に必要書類を提出し、登記官が内容を確認した上で法定相続人が誰であるのかを証明する制度（法定相続情報証明制度）により交付される書類です。亡くなられた方と相続人の関係を図で示すという書面の内容は相続関係説明図と同様です。本章では両者の違いとどちらの書面を利用すべきかについてご説明いたします。

図6.法定相続情報一覧図の写し

 

4-1.法定相続情報一覧図と相続関係説明図の違い

法定相続情報一覧図と相続関係説明図の違いは、法定相続情報一覧図は法務局に認証を受けている公的な書類であるということです。相続登記や預貯金の解約、相続税申告など各種相続手続きで法定相続情報一覧図の写しを提出すれば、戸籍謄本一式の提出が省略できます。

一方、相続関係説明図は公的な書類ではないため相続手続きの度に戸籍謄本一式の提出が必要です。

4-2.法定相続情報一覧図を利用すれば相続手続きを同時に進めることができる

法定相続情報一覧図は法務局に無料で必要な通数を交付してもらえますので、相続手続きが複数あり並行して相続手続きを進めたい時におススメいたします。申請して交付されるまでの日数は1週間程度です。

相続関係説明図は相続手続きが少なく、戸籍謄本の提出と返却を行なっても手間でないケースで利用します。数次相続や代襲相続など亡くなられた方と相続人の関係が複雑な時も相続関係説明図が便利です。

※法定相続情報一覧図について詳しくは、こちらを参考にしてください。（当サイト内）

図7：法定相続情報一覧図を利用すると効率的に相続手続きができる

 

5.まとめ

相続関係説明図とは、亡くなられた方と相続人の方との関係性が一目でわかる家系図のような図です。必要な書類を揃えることができれば、ご自身で簡単に作成することができます。
相続関係説明図と似たもので「法定相続情報一覧図」というものがあります。書類の内容はほぼ同じですが、法定相続情報一覧図は法務局に提出して認証を受けるため、各種相続手続きで戸籍謄本一式の代わりになります。

相続関係説明図を作成するには、亡くなられた方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本が必要です。法務局のホームページには、定型フォーマットがいくつか準備されているので、活用してより簡単に、間違いなく作成するとよいでしょう。

相続関係説明図は相続手続きにおいて必ず提出が必要な書類ではありませんが、煩雑な相続手続きをスムーズに進められますので、ご準備されることをおススメいたします。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。