過去の相続も対象になる!令和6年の相続登記の義務化で変わる5つの事

  • 相続

「実家で父が1人暮らしをしている。何代も続いている家や土地もあるけど、相続登記はやってきているのだろうか。今後相続登記が義務化になるというが、何かどう変わるのだろう。準備しておくことはあるのだろうか」

これまで、相続登記の申請は義務ではなく、期限もないため申請をしなくても不利益が生じることはありませんでした。そのため、放置されるケースが多く所有者不明の土地が多く発生していました。
相続の発生を登記に反映させ、所有者不明の土地の発生を防ぐために、不動産登記制度の見直しが行われます。
 これにより、相続登記だけでなく、同様に住所登記変更も義務化されることになりました。

当記事では、令和6年4月1日より施行される相続登記の義務化について、何が変わるのかを中心に住所登記変更の義務化、登記の手順についてもご紹介いたします。

1.相続登記の義務化は令和6年4月1日から

これまで相続登記の申請は義務ではなく、申請せずにいても何か指摘を受けるという事はありませんでした。しかしこれにより、引き継いだ相続人が遠方に住んでいる場合や、高齢化などにより所有意識が薄れて活用されないケースが増加しました
更に未分割のまま次の相続が発生することで、土地の所有者も増えて所有者が複雑化するなどの問題が生じています。
所有者不明の土地の発生を予防し、既に発生している所有者不明の土地の利用を円滑に進めるため、令和6年4月1日より、相続登記が義務化されることになりました。

<所有者不明の土地が発生することで生じる問題>
・所有者を特定するために時間と費用がかかる
・所有者が不明な土地は管理されず放置される
・所有者が多数いる場合や不明の場合、土地の管理・利用のための合意が得られず土地の利活用を阻害する

図1:相続登記の義務化は令和6年4月1日より施行
相続登記 義務化

2.相続登記の義務化で変わる5つの事

相続登記の義務化で何が変わるのでしょうか。詳しくご紹介します。

2-1.相続登記3年以内の義務化とペナルティ

相続や遺贈により不動産を引き継いだことを知った日から3年以内に、相続登記の手続きを行う事が義務化されます。正当な理由が無く相続登記の手続きを行わない場合には、10万円以下の過料が課される可能性があります。

また、義務化の施行日前の相続により引き継いだ不動産についても、申請義務あります。
この場合は、施行日とそれぞれの要件を満たした日のいずれか遅い方から起算(3年以内)します。

<施行前に相続登記していない不動産の期限>
下記のうち遅い方を期限とします。
①相続開始と所有権取得を知った日から3年
②相続登記の義務化の施行日から3年(令和9年3月31日)

図2:相続登記の3年以内の義務化は過去の相続も対象
相続登記 義務化

<相続登記を行う事が出来ない正当な理由となる例>
・数次相続が発生したため、相続人の数が多くなり相続人の確認や戸籍謄本などの必要書類の収集に時間がかかる
・遺言書に書かれた内容の有効性や遺産の範囲などが争われている
・申請義務のある相続人自身に重病などの事情があり手続きが進められない

2-2.遺産分割が間に合わない場合は相続人申告登記

相続登記の義務化により、不動産の所有者になったことを知ってから3年以内に相続登記をしなければいけません。しかし、遺産分割協議が整わないなどの理由により期限内に登記をすることが難しい場合があります。そのまま放置すれば、10万円以下の過料が課される可能性があります。そこで、相続人申告登記を行います。先に自分が相続人であるという事を法務局に申請することで、相続登記を仮に行ったことになります。相続人申告登記は、申告者が相続人であるという事を証明する戸籍を提出すれば単独で行う事ができます。
その後、遺産分割協議などで正式に引き継ぐ相続人が確定したら、その日より3年以内に正式な相続登記を行います。

<相続人申告登記の必要書類>
申出をする方が亡くなられた方(所有権の登記名義人)の相続人である事が分かる戸籍謄本

2-3.遺贈による相続登記は単独で申請可能(令和5年4月より施行)

遺贈により不動産を引き継いだ場合、これまでは遺言執行者と遺贈を受ける側(受遺者)の共同申請が必要でした。
しかし、不動産登記制度の見直しにより、受遺者が相続人である場合には単独で相続登記ができるようになりました。受遺者が相続人以外の場合には、これまで通り相続人全員また遺言執行者と共同申請が必要になります。

2-4.法務局の判断で登記簿に所有者死亡の登記ができる(令和8年4月までに施行)

相続発生による不動産の登記情報の更新をするために、法務局(登記官)が他の公的機関から所有者の死亡情報を取得した場合には、不動産登記簿にその事実を記録することができます。これにより登記登記簿を見れば名義人が亡くなられたことを確認することができます。所有名義人が亡くなられていることが記録されるだけで、相続人の相続登記の義務がなくなるというわけではありません

図4:法務局による所有者死亡の登記までの流れ
相続登記 義務化

2-5.所有不動産登録証明制度で不動産を把握しやすく

所有不動産登録証明制度とは、亡くなられた方やご自身が名義人となっている不動産の一覧を証明書として取得できるようになる制度です。これまで不動産の所有財産の一覧を調べるには、不動産の所在地を管轄する市区町村役場で固定資産税評価証明書や名寄せを取り寄せる必要がありましたが、固定資産税がかからない不動産は記載されていないため、把握できないなどの問題がありました。
そこで、特定の方が所有している全ての不動産の一覧情報を、ご本人または相続人が法務局から取得できるようになることで、亡くなられた方が所有していた不動産の詳細が把握しやすくなります。

3.住所変更登記も義務化で変わる3つの事(令和8年4月までに施行)

相続登記の義務化だけでなく、住所変更登記も義務化されます。
 登記簿上の所有者の氏名や住所が変更されても、これまで変更登記は任意とされており特別な罰則が設けられてはいませんでした。また、転居などの度に所有している不動産の変更登記をすることも負担になるなどで、これまで住所変更登記が進んでいませんでした。
そこで、相続登記同様、所有者不明の土地の発生を予防するために、住所変更登記も義務化になります。施行前に住所氏名が変更しているものに対しても、相続登記と同様に変更登記の義務は課されます。

3-1.住所変更から2年以内の変更登記申請の義務化

登記簿上の所有者は、住所などを変更した日から2年以内に変更登記の申請をすることが義務化されました。正当な理由がないにもかかわらず、変更登記申請を行わなかった場合、5万円以下の過料が課される可能性があります。会社などの法人の名称や所在地が変わった場合も同様に義務化されます。施行日前の変更についても対象となります。こちらの期限も施行日から2年以内です。

3-2.法務局が住基ネットの移動情報より変更登記することができる

所有者不明の土地の発生を減らすため、法務局が登記の内容を変更できるようになります。
個人の場合、登記申請の際に氏名、住所の他に生年月日などの「検索用情報」の申出を行います。法務局が検索用情報に基づき住民基本台帳ネットワークシステムで紹介し、所有権の登記名義人の氏名や住所などの変更情報を取得します。取得した情報により登記名義人に住所などの変更を登記することについて確認をしたのち、変更の登記をすることができます。

法人の場合は、登記名義人となっている不動産の登記簿に法人登記簿上の会社法人番号が追加で記載されます。不動産について、会社法人などの番号を登記事項に追加します。法務局は法人登記システムから、不動産登記システムに対して名称や住所を変更した法人の情報を通知します。それらの情報に基づき、法務局が変更した内容を登記します。

3-3.所有者の登録情報の把握の見直し

住所変更登記の義務化により、所有者の登録情報の見直しが行われました。
 
①登記申請情報には氏名、住所に加え生年月日が義務化
 個人の場合、新たに不動産の所有権を取得する場合には、名義変更時に生年月日などの情報の提供が義務化されます。生年月日は登記簿には記録されませんが、法務局において保存され、住民基本台帳ネットワークシステムにて照会、検索時に利用されます。生年月日の公示はされません。

②海外居住者はその国内における連絡先(第三者も含む)の申告が必要
日本国内に不動産を取得されている方が、海外居住者の場合には、日本国内で連絡先となる方の氏名または名称などの申告と登記が必要です。第三者を連絡先として指定することは可能ですが、日本国内に住所があることが要件となります。

➂DV・虐待などの被害者保護のために情報公開の見直し
 不動産の権利関係を公示するために誰でも不動産の所有者の住所と氏名が記載された登記簿を取得することができました。しかし、DV(ドメスティックバイオレンス)や虐待などの被害者が、現住所を知られてしまう事により重大な問題が発生する可能性があります。そこで、登記簿にに記載されている個人の住所は、ご本人からの申出により、法務局から交付される登記事項証明書には住所を記載しないことができるようになります。住所に代わる事項(委任を受けた弁護士事務所、被害者支援団体の住所、法務局の住所等)を記載した登記事項証明書が交付されます。

4.相続登記と住所変更登記の手続き

相続登記と住所変更登記の手順をご紹介します。

4-1.相続登記の手順4ステップ

不動産の相続登記は4つのステップで行います。相続登記の義務化の施行日前に相続が発生している不動産も対象ですので、それらも確認する必要があります。何世代にもわたり登記を放置している場合は、権利関係者数が何十人となる場合もありますので、相続登記をしていない不動産がある場合には予め確認しておきましょう。

図5:相続登記の手順4ステップ
相続登記 義務化

 ステップ1.必要書類を集める
 固定資産税評価証明書、名寄帳、登記簿謄本や戸籍謄本など

 ステップ2.登録免許税の計算
相続登記により不動産の名義変更をおこなう場合には「登録免許税」という税金がかかります。「固定資産税評価証明書」を使って計算します。土地と建物を相続する場合は、次の手順で計算します。
①それぞれの固定資産税評価額を合算
②千円未満の金額を切り捨て
③②の金額に税率0.4%をかける
④百円未満を切り捨てる

 ステップ3.申請書の記入
相続登記を申請する際の「登記申請書」については、法律で決められた様式がありません。
一般的にはA4用紙に手書きまたはパソコンで作成します。必要事項が含まれていれば構いません。ただし、鉛筆で記載することだけは認められていませんのでご注意ください。

 ステップ4.法務局へ申請
相続する不動産の所在地を管轄する法務局で登記申請を行います。申請内容に不備がなければ、2週間ほどで登記は完了します。
※相続登記の申請方法について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

4-2.住所変更登記の手順3ステップ

住所変更登記においても、施行日前の所有名義人の氏名、住所の変更が義務化されます。変更があった日から2年以内に、登記を申請しなければいけません。心当たりのある不動産がある方は、予め確認しておきましょう。
図6:住所変更登記の手順3ステップ
相続登記 義務化

ステップ1.登記簿上の住所を確認
登記簿謄本で所有者の住所と氏名を確認することができます。現住所と異なれば住所変更登記が必要です。

ステップ2.必要書類を集める
住所変更登記に必要な書類は以下のものです。
①.登記簿上の住所から現住所までの経緯が記録された書類(住民票または戸籍の附表)
②.登記申請書(法務省HPよりダウンロード可能

ステップ3.法務局へ申請
不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。

5.まとめ

相続登記の義務化は令和6年4月1日から施行されます。
これまで相続登記の申請は義務ではなく、申請せずにそのままでも何か指摘を受けるという事はありませんでした。そのため、所有者不明の土地が増え、結果として土地の活用が滞るなどの問題が生じていました。所有者不明の土地の発生を防ぐため、相続登記の申請が義務化されます。これにより、相続や遺贈により不動産の所有者となった人はそれを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務化され、期間を超えると10万円以下の過料が課されることになりました。これは、義務化施行前の相続も対象になります。

また、相続登記の義務化と共に、住所変更登記も義務化されます。こちらも住所などの変更があった日から2年以内に申請を行わなければ、5万円以下の過料が課されることになります。

何代にもわたり相続登記をしていないと思われる不動産をお持ちの方は、お早めに登記の手続きをされることをお勧めします。所有者が多く、手続きが複雑になるなどの問題や、ご不明な点等がございましたら、お近くの税理士にご相談ください。

相続税申告で損をしたくない方へ

相続税の納税額は、その申告書を作成する税理士により、大きな差が生じます。
あなたが相続税の申告をお考えであれば、ぜひ当税理士法人にご相談ください。

OAG税理士法人が選ばれる
8つの強み

  1. 01【設立35年の歴史】国税OBが作った税理士法人(国税OBが多数在籍)
  2. 02相続専門税理士が多数在籍(グループ従業員数450名 / 士業関連の有資格者150名)
  3. 03申告実績:9500件以上(グループ累計)/ 年間:1200件以上
  4. 04女性税理士が多数在籍(きめ細やかな対応)
  5. 05相続関連の専門書多数発行
  6. 06トータルサポート(グループ内ですべてワンストップ)
    相続税申告、遺産整理、登記、不動産売買、弁護士対応など
  7. 07明瞭な料金設定
  8. 08税務署に指摘されない(税務調査の非対象)約98%

OAG税理士法人に依頼する
3つのメリット

  1. 考え方に幅のある「財産評価」を知識とノウハウで適切な評価をする
  2. 遺産分割を次の相続(二次相続)も視野に入れ、税額軽減の創意工夫をする
  3. 専門用語を使わないお客様目線の対応