お墓を相続するかどうかを判断する5つのポイントとお金のこと

  • 相続手続き

ご家族が亡くなられると、家や土地、預貯金などの相続財産を相続人全員で分割して引き継ぐ事になります。そして財産以外にもどのように相続するのかで問題になりやすいのが「お墓」ではないでしょうか。

お墓の相続について、日ごろからご家族と希望を話し合っているご家庭は少ないでしょう。
しかし、ご家族が亡くなられたときに備え、お墓の相続とはどのようなものなのか、何を決めたらよいのかを知っておく必要があります。

当記事ではご両親が亡くなられた際、お墓をどのように引き継いでいくのか、その考え方についてご紹介します。
ご家族が集まるタイミングまでに準備して、ぜひご家族でお墓について話し合いをされることをおすすめします。

1.お墓を相続する人は原則一人

お墓を相続する人を「祭祀(さいし)継承者」といい、原則1人と決められています。
祭祀継承者は親族関係でなければい、ご長男でなければけないという決まりはありませんが、ご家族のどなたかが継承者となるケースが一般的です。祭祀継承者が決まるにあたっては、3つの段階がありますので確認しましょう。

<お墓を相続する人の決め方>
①遺言書または生前の指名で決める
②遺言に指定が無ければ話し合いか地域の慣習で決める
➂話し合いで決まらない場合は家庭裁判所で決める

一般的なのは遺言書により祭祀継承者が指定されているケースです。または、生前に口頭で指定されてい方が継承者となります。遺言などによる指定がない場合には、ご家族で話し合ったり地域の慣習に従い決めます。それでも決まらない場合には、家庭裁判所に祭祀継承者を指定してもらう手続きを取ります。

図1:お墓を相続する人1人を家族で決める

親族で話し合いお墓を相続する方を決める

2.知っておきたいお墓の相続とお金のこと

お墓を相続するとなると、気になるのがお金のことです。
引き継いだ時に税金はかかるのか、維持費はどのくらいかかるのかをご紹介します。

2-1お墓には相続税、固定資産税などはかからない

家や土地を引き継ぐと、相続税がかかる場合がありますがお墓には相続税はかかりません
また、購入した場合にも固定資産税や不動産取得税を心配されることと思いますが、固定資産税や不動産取得税もかかりません。お墓を購入するということは、墓地の「使用権(永代使用権)」を得ることで、「土地の所有」ではないためです。

2-2お墓の維持管理費

お墓を相続しても税金はかからない事が分かりました。しかし、お墓の維持管理費は、承継者の責任で負担することになります。お墓の維持管理費はどのくらいかかるのか、お墓を引き継がない場合の費用も含めご紹介します。

表1:お墓の相続や維持・管理にかかる費用一覧 ※2017年10月自社調べ

埋葬・購入費用 維持管理費
お墓を購入 永代使用料(土地)
+墓石購入費
20~400万円 公営墓地 目安:5,000円/年
民営墓地 目安:10,000円/年
お引っ越し 50~100万円
寺院墓地 目安:15,000円/年

表2:お墓を相続せず供養する方法の費用一覧 ※2017年10月自社調べ

埋葬・購入費用 維持管理費/年
永代供養 3~100万円 なし
手元供養 数千円~100万円
樹木葬 10~80万円
散骨 2.5~60万円

2-3相続放棄をしてもお墓は引き継げる

亡くなられた方に借金がある場合は、相続放棄をおこない借金を相続しないことができます。相続放棄をすると初めから相続人ではなかった、とみなされます。
しかし、お墓は祭祀財産といって相続財産とは異なりますので、相続放棄をしても引き継ぐことができます。

3.お墓の相続で考えるべき5つのポイント

先祖代々のお墓をお持ちのご家系であるならば、お盆やお彼岸などにご家族でお参りに行かれるなどお墓があることはご存じだと思いますが、そのお墓を相続について考えたことがある方は少ないでしょう。
お墓の相続で考えるべき5つのポイントは以下の通りです。

<お墓の相続で考えるべき5つのポイント>
 ①ご両家のお墓に先祖代々継がれているものがあるのかどうか
 ②ご両親はお墓を相続する予定があるのか
 ➂先祖代々のお墓を後世まで引き継ぐのか
 ⓸お墓がない場合は新しく購入して管理していくのか
 ⑤ご両親はご自身たちの供養方法に関する希望の有無

3-1お墓を引き継ぐか否かを判断する

ご自身がお墓を継ぐということは、後世に渡り維持管理も必要となります。 例え遠隔地であっても、維持管理とお参りは最低限必要となります。
また、近年は多様化した家族も増えており、ご両親の両家のお墓を相続する可能性がある場合があります。両方のお墓を相続することは難しいため対策の一つとしてどちらかのお墓を「永代供養」し、一つのお墓のみ引き継ぐという方法がとられるケースもあります。また、両家のお墓を合わせた「両家墓」を立てるという方法がとられるケースもあります。
お墓の管理・維持の必要がなくなりますので、お墓参りが一度で済むことや管理費など維持管理がしやすくなります。

<お墓をそのまま相続する場合に検討する事>
・ご両親の意思を尊重した供養はどんな形か
・維持管理費用をご自身だけが負担するか
・遠方にあるお墓でもずっと維持管理ができそうか
・ご自身の代も同じお墓に入るのか

3-2お墓を引き継がない場合の供養方法

後世に負担を掛けたくないという想いから、お墓を相続させないと判断されているケースが増えてきました。一方で、お墓を相続しても維持管理ができず放置することで「無縁仏」となり最悪の場合にはお墓を撤去されてしまいます。そんな場合には、お墓の相続をしない代わりにいくつか選択肢がありますのでご紹介します。

①永代供養
永代供養は、お寺や霊園がご家族に代わってお墓を管理してくれる供養形態のことをいいます。
ご両親の遺骨を納めた後、ご自身が後世にお墓を引き継がないと決めたときに選ぶことが多いです。
・費用:数十万円~数百万(納骨堂の種類、管理期間により異なる)
・メリット:お寺や霊園などにより異なるが、一定期間個別に管理された後に他の方と同じ場所へ安置されるため安心。
・デメリット:一度納納めた納骨は取り出すことができない。
図2:永代供養のイメージ
1家系を相続・1家系を永代供養

②手元供養
「手元供養」は、亡くなられた方を身近に感じていたいという思いを形にした供養の方法です。ご両親のお骨をペンダントやブローチなどのアクセサリーや小物に加工したり、小さな骨壺などにお骨を入れてご自宅など身近なところに置いておくことができます。
費用はお骨をどのような形にして残すかにより大きく変わりますが、おおよそ数万円から100万円くらいとなります。

図3:手元供養のイメージ
手元供養のイメージ

➂樹木葬
「樹木葬」は、墓石の代わりに樹木を建てて供養をおこなう方法です。
お墓は持ちませんが、樹木をお墓の代わりとしてお参りにいくことができます。ただし、埋葬できる場所が決められているため、ご両親の希望する場所に埋葬できるものではありません。
お墓は持ちたくないけれど、お参りはしたいと考えられている方におすすめの供養のかたちです。費用は10万円から80万円が相場となっており、費用を抑えられるというメリットがあります。
図4:樹木葬のイメージ
お墓 樹木葬のイメージ

④散骨
「散骨」という言葉はあまり身近ではないかもしれませんが、ご両親が自然の中でゆっくりと眠りたいといった希望を叶えることができ、お墓を持たないことから費用も低く抑えることができます。
散骨はご自身ですべておこなうことも出来ますが、粉骨の仕方・散骨する場所などルールが定められています。散骨は、船や飛行機をチャーターする、委託するなど様々な方法があり、価格も幅広くなります。
注意点としては、遺骨を撒くというとてもデリケートな内容となるため、散骨を検討される際は専門業者に相談をするなどしてトラブルにならないように気をつけましょう。
図5:散骨のイメージ
散骨のイメージ

4.トラブル回避のため予め話し合っておく

お墓を相続した祭祀継承者には法要をおこなったり、お墓の清掃などの管理をおこなうなどお墓を守るための様々な役割があります。
その際に発生する費用はすべて祭祀継承者が負担することになりますが、遺産分割(亡くなられた方の財産の分割)において、祭祀継承者がその分多めに財産をもらえる、といった決まりはありません。しかし、ご家族の間でトラブルにならないよう、お墓の管理や管理費用についてもしっかり話し合い相続財産の分割の際にはお互いに配慮することが大切です。

5.まとめ

ご両親がもし亡くなられたら、ご両親をどのようにご供養され、先祖代々引き継がれてきたお墓をどのように相続するか、イメージができたでしょうか。
近年、核家族化や少子化により先祖代々のお墓を引き継ぐ者がいなくなったり、管理費を払いきれずに滞納し続けたことで無縁仏になってしまうという事態が増えています。「無縁仏」になるとお墓を撤去され、永代供養をされます。
お墓は引きついていくのか、相続するのは誰なのか、費用はどうするのかなど、ご家族みなさんで決めておくことはとても大切です。

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