相続対策には不動産がよい理由を徹底解説!相続対策3選と注意点
- 不動産
「子供たちのために、そろそろ相続のことを考えておきたいと思っている。相続対策には不動産がよいと言われるのはなぜだろうか?」
「不動産を活用した相続対策が知りたい。」
相続対策として、不動産の活用が効果的であるといわれる理由は、現金よりも不動産のほうが相続税を計算するときの評価額が低くなるからです。
本記事では、不動産で有効な相続対策をおこなうために知っておきたい知識や、具体的な相続対策の方法について、初めての方にもご理解いただけるよう、分かりやすくご説明いたします。
目次
1.相続対策に不動産は有効
不動産が相続対策になると言われる理由は、相続税を計算するときの基準となる相続税評価額が現金よりも低くなるためです。
現金で5,000万円を相続すれば、相続税評価額はそのまま5,000万円ですが、不動産を5,000万円で購入する対策をとれば、相続する際の評価額は5,000万円より低くなります。土地の形状や用途によって、差はありますが、実際に不動産を売買するときの価格(時価)よりも2~3割は低い評価額となります。
相続税評価額が低くなれば、課税される相続税を少なくすることができるというわけです。
図1:現金のまま相続するより不動産で相続する方が節税効果あり!
2.不動産の相続税評価額は現金より低くなる
不動産の評価には、土地の利用目的に応じた4つの評価額があります。不動産の相続税評価額は、時価や国土交通省が発表している土地の価格(公示価格)などより、低い価格となります。
不動産の相続税評価額は、土地と建物に分けて計算します。土地は相続税路線価、建物は固定資産税評価額で評価されます。
- 土地→相続税路線価
- 建物→固定資産税評価額
【不動産の4つの価格】
①実勢価格:不動産を売買する際に、実際に取り引きが成立した価格のこと。時価ともいう。
②公示価格:価格の動向指標として、国土交通省が毎年示す標準的な価格のこと。
③相続税路線価:相続税の評価をする際に使用する価格のこと。公示価格の8割が目安となる。
④固定資産税評価額:固定資産税を決める際に使用する価格のこと。公示価格の7割が目安となる。
図2:不動産の4つの価格
図3:土地と建物は別々に評価する
2-1.土地の相続税評価方法
土地は、その敷地に面した道路に付されている路線価を用いて計算します。(一部、倍率評価を用いるエリアもあります)相続税路線価は公示価格の約80%です。
例えば、公示価格で5,000万円の不動産は、相続税評価額では2割ほど下がり、4,000万円ほどになります。相続税評価額が下がったからといって、実際の価値まで下がるわけではありません。
※相続税路線価について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
2-2.建物の相続税評価方法
建物は、固定資産税評価額が、そのまま相続税評価額とみなされ、公示価格の約70%になります。
3.不動産を活用した3つの相続対策
不動産を活用した「相続対策」をご紹介いたします。お子さんに不動産を引き継ぐという、一般的な相続について考えてみましょう。
3-1.不動産を賃貸するとさらに相続税評価額が低くなる
不動産の相続税評価額は時価よりも低くなりますが、不動産を第三者の方に「賃貸」すると、さらに相続税評価額を低くすることができます。
賃貸物件の土地は「貸家建付地」となります。不動産の借主の権利を保護する考えから、貸主が土地を利用できる権利には一定の制限があります。
相続の評価をする際は、地域ごとに定められた「借地権割合」、全国一律30%と定められた「借家権割合」、空室を加味する「賃貸割合」を用いて、評価額を更に減額することができます。
貸主の制限された権利は、その分評価額を下げて、貸主側にもメリットがあるように考えられているのです。
【事例:不動産を第三者に貸した場合の評価方法】
・自宅用だった場合の評価額:5,000万円
・借地権割合:60% ※エリアによって異なる
・借家件割合:30% ※全国一律
・賃貸割合:3部屋中2部屋が賃貸契約中
5,000万円✕(1-借地権割合60%✕借家権割合30%✕賃貸割合2/3)=4,400万円
*不動産を賃貸した場合、ご自宅の場合の相続税評価額より600万円評価額が下がりました。
3-2.小規模宅地等の特例を適用する
「小規模宅地等の特例」とは、亡くなられた方のご自宅の土地に対して、一定の要件を満たした場合に、相続税評価額を最大80%(限度面積330㎡)減額できる制度です。
相続対策で賃貸物件を購入した場合には、貸付事業用宅地として相続税評価額を最大50%(限度面積200㎡)減額できます。
小規模宅地等の特例を適用することにより相続税の負担を大幅に軽減することができます。
図4:小規模宅地等の特例を利用する
図5:小規模宅地等の特例の適用面積と減額率
※小規模宅地等の特例について詳しく知りたい方はこちらへ。(当サイト内)
3-3.相続時精算課税制度で「贈与税をかけず」に引き継ぐ
相続時精算課税制度とは、2,500万円までならば、贈与税が非課税となり、2,500万円を超える分については、一律で20%の贈与税がかかるというものです。60歳以上の両親や祖父母から、20歳以上のお子さんやお孫さんに対する贈与で利用できる制度です。
気を付けなければならない点は、相続の際に、相続時精算課税制度を利用して贈与した財産を相続財産に加算する必要があることです。贈与した時点で贈与税がかからなくても、ほかの相続財産と合わせることで、相続税が課税される可能性があります。
加算する価格は、贈与時の時価となるので、今後価格の上昇が見込まれる不動産などを贈与することは、大きな節税効果を生むことになります。
※相続時精算課税制度について詳しく知りたい方はこちらへ。(当サイト内)
4.相続対策を不動産でする場合の注意点
相続対策として効果が高いとされる不動産は、その分リスクもありますので注意が必要です。
4-1.不動産を貸す場合の収益増加
土地の値段が高い都心部ならば、時価と路線価に大きなかい離があり、相続税評価額を大幅に減額できる可能性があります。一方、賃貸ニーズも高く、安定した収益の確保を期待できるため、家賃収益でかえって現金が増えてしまう恐れがリスクとしてあります。
また、銀行借入をおこなって賃貸マンションを購入するようなケースは、空室で収益が得られない、もしくは金利の上昇で返済額が増えてしまう、などのリスクを想定した上で購入を検討する必要があります。賃貸物件を維持するためには、ランニングコストがかかることも加味して考える必要があります。
4-2.不動産の購入する場合は潤沢な現金が必要
不動産による相続対策は、大きな節税効果が得られますが、その分投資額が大きくなります。つまり、資金力がなければ、対策には不向きといえます。借金をしてでも、不動産を購入することが相続税対策のトレンドといえた時代と現在は市況が違いますので、借り入れをしてまで購入する必要はないといえます。
4-3.不動産を贈与する場合は不公平さへの配慮が必要
相続財産の中に不動産があると、比較的トラブルは起こりやすい状況であるといえます。不動産の評価は変動する上、現金と異なり、分割しにくい財産です。賃貸物件だった場合は、相続した後に収益を生み出す財産であるため、その分の評価を見込むことが難しいという理由もあります。
トラブルを避けるため、生前のうちに贈与するとしても、相対的な分割内容に不平等感があれば、争いの火種は残ってしまいます。トラブルにならないようにするためには、分割内容の公平さに十分注意を払い、遺言書などで分割に関する考え方や思いを明確に伝えられるよう、準備しておくことも大事なことです。
5.まとめ
相続対策を不動産でおこなうことは、すべての方に通用し、見込める効果ではありません。
現金も多く、資金力が安定している状況ならば、不動産を購入したり、賃貸物件として所有することは、相続対策として効果的だといえますが、想定できるリスクを充分考慮しておく必要があります。
ご自宅だけの場合は、将来の相続税を見据えて、どなたに、どのタイミングで引き継いでもらうのか、早めに検討しておくことが対策となるでしょう。
不動産は価値も変動し、評価方法も専門的で難しいものです。不動産の相続対策にご興味をお持ちの場合は、相続専門の税理士に、税金を加味した評価額のシミュレーションなどを依頼するとよいでしょう。対策の必要性などが明確に見えてくると思います。