相続の専門家の得意分野を徹底解説!最適な専門家の選び方と費用
- 相続手続き
「相続の手続きって難しそう。働いているので時間の余裕もないし、ほかの相続人との調整も大変そうだから、専門家に任せたい。でも、相続の専門家を、何を基準に選べばよいのか、どこまでお願いできるものなのかよく分からない。できれば費用の相場も知っておきたい・・・」
財産の内容や規模に応じて、相続手続きの難しさは変わってきます。預貯金の解約だけであれば、戸籍を集めるなどの手間はかかりますが、専門家に頼まずに、ご自身でおこなっていただけます。
一方、不動産の名義変更のための登記手続きは、専門家に依頼する方が、正確で迅速に手続きを終えることができます。
相続手続きを無理なくスムーズに進めるために、いったいだれに相談すればよいのか、専門家選びにお困りの方は多いと思います。
本記事は、最適な専門家選びに役立つ情報を分かりやすくまとめています。迷われている方は、ぜひご一読いただければと思います。
目次
1.相続を相談できる4つの専門家の業務一覧
相続の専門家としては、「税理士」「司法書士」「弁護士」「行政書士」が主な相談先になります。銀行など民間の企業は、専門家と提携して業務を請け負っています。
専門家は、法律で定められた「独占業務」の規定に従って、受けることができる業務の範囲が決まっています。そのため、専門家ごとの得意分野を見極め、相談内容に応じて専門家を選ぶ必要があります。
図1:目的と専門家の一覧
2.専門家ごとの得意分野と気になる費用
相続の専門家に何を依頼したいのか、相談する目的を明確にしてから選ぶことが大切です。専門家ごとの専門分野と、依頼した場合の気になる費用について、詳しくご説明いたします。
2-1.相続税などの税金に関することは税理士へ
相続税の申告をおこなえるのは税理士だけです。相続税の申告が必要、もしくはそもそも相続税がかかるのかわからないという場合は、税理士に相談しましょう。
税理士は、相続税、準確定申告などの税務申告書類の作成はもちろんのこと、節税を考慮した最適な分割方法を提案してくれます。相続税は相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+相続人の数×600万円)を超えるときにかかります。相続税を減額できる特例や控除についても熟知していますので、きめ細かなサポートをお願いすることができます。
図2:相続税の基礎控除額
税理士に依頼した場合の費用は、相続財産の総額によって変わりますが、相続財産が5,000万円の場合であれば、おおよそ25万円から50万円くらいです。相場としては、相続財産の0.5%~1.0%といわれています。
・相続人の調査
・財産目録の作成
・相続財産の評価
・最適な分割方法のご提案
・相続税申告(必要書類の代理取得・申告書の作成・税務調査の対応)
・準確定申告(亡くなられた方の確定申告)
図3:相続税の専門家は税理士
※税理士の選び方について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
2-2.不動産の相続登記は司法書士へ
相続において司法書士は、不動産の相続登記(名義変更)の専門家です。司法書士は、相続財産の不動産登記、あるいは相続放棄の手続き、成年後見人の手続きといった公的機関に対する手続きの代行業務も対応してくれます。
司法書士の費用は、不動産の評価額により異なります。登記に必要な書類の代行取得も併せて依頼した場合で、おおよそ10~15万円くらいです。また、登記をする際、登録免許税がかかります。司法書士に登記を依頼した場合は、登録免許税の実費分を含めて支払うことが一般的です。
目安は、評価額2,000万円の不動産の場合で、登録免許税(評価額×0.4%)と併せて15万円くらいです。
図4:不動産登記の専門家は司法書士
・不動産の相続登記
・登記に必要な書類の代理取得
・相続放棄の申し出など、公的機関の手続き代行
2-3.遺産分割協議書の作成は行政書士へ
相続において行政書士は、遺産分割協議書の作成を独占業務と定められています。相続のトラブルがなければ、遺産分割協議書を不備なく作成することができるので、相続手続きを遅らせることなく、スムーズに進めることができます。
ただし、分割に関するもめ事が生じている場合は、行政書士には当事者の代理を務める権利はないので、弁護士に依頼しましょう。
行政書士は、相続に伴う各種名義変更の手続き代行なども行います。費用については、特に定まった基準はありません。目安としては、遺産分割協議書の作成で3~7万円、自動車の名義変更をした場合、1台3万円くらいとなります。
図4:遺産分割協議書を唯一作成できるのは行政書士
・遺産分割協議書の作成
2-4.裁判になりそうな相続争いは弁護士へ
相続トラブルに関する調停や訴訟に関することは弁護士の専門分野となります。当事者の代理人となって交渉できるのは弁護士だけです。遺言の内容に不服がある、遺産分割協議が進まない、などの場合は、弁護士が代理人となって交渉から裁判に進む手続きまで、すべて担当します。
相続における弁護士の費用は、相手方に請求する金額によっても異なりますが、「着手金+成功報酬+日当」が費用内訳の基本となります。弁護士報酬は自由化されていますが、以前の報酬に関する規定をそのまま参考に、現在も費用を設定している場合が多いようです。日当については、5~10万円が相場となります。
表1:弁護士の報酬(着手金と報奨金) ※参考:(旧)日本弁護士連合会報酬等基準
図5:相続トラブルの専門家は弁護士
・相続の争いに対して代理人となる
・遺産分割調停
・遺留分侵害額請求
3.相続の専門家に依頼するメリットとデメリット
相続の専門家に手続きを依頼することメリットは、専門家の豊富な経験と知識をもとに、確実に相続手続きを進められることです。相続税申告や相続放棄など期限がある手続きを安心して任せることができます。
手続きをする時間がない、相続人の人数が多くて高齢である、相続財産の内容が複雑という場合は、専門家に依頼することをお勧めいたします。
専門家でそれぞれ対応できる業務の範囲が決まっているということがデメリットです。専門外の業務については、別の専門家に依頼する必要があるため、かかる費用が割高になる可能性があります。また、手続きによってはご自身でできるものもありますので、依頼する業務を見極める必要があります。
4.まとめ
相続の専門家として、税理士、司法書士、行政書士、弁護士の4つの相談先があります。それぞれ対応できる業務の範囲が決まっていますので、相談する目的を明確にして、最適な専門家を選ぶことが大切です。
税務のことなら税理士、不動産登記のことなら司法書士、相続トラブルのことなら弁護士が専門となります。
スムーズに相続手続きを終えるためにも、ご自身でできる手続き、専門家に頼む必要がある手続きを線引きして明確に示してくれる専門家を選びましょう。費用も最低限におさえられるのでおススメです。