遺産分割協議書なしでも預金の相続はできる!手続きの流れと必要書類

  • 相続手続き

「遺産分割協議書なしで預金の相続手続きは進められるのかしら」

お父さまが亡くなられて、遺産分割協議が調ったものの遺産分割協議書を作成していない場合、実際に金融機関で相続手続きができるのだろうかとご心配のことでしょう。

遺産分割協議書はすべての相続手続きで必要なわけではありません。遺産分割協議書がない場合でも預金の払戻し手続き等をおこなうことができます

本記事では、遺産分割協議書がない場合の預金の払戻し手続きの流れと必要書類について詳しくご説明いたします。遺産分割協議書なしで相続手続きができるケースについて確認しましょう。

複数の相続人がいる場合はトラブルを回避するためにも遺産分割協議書を作成した方が良い場合も多いです。預金の相続をする際の遺産分割協議書の記載方法についても参考にしていただければと思います。

1.遺産分割協議書なしでも預金の相続はできる

亡くなられた方の相続財産に預金がある場合は遺産分割の対象になるため、遺言書がなければ相続人全員で話し合い(遺産分割協議)をおこなって誰がどのように引き継ぐのかを決めます。

相続財産の分割方法や取得割合について遺産分割協議で合意した内容を記載した書面が「遺産分割協議書」です。多くの相続手続きで提出を求められます。

金融機関においても預金の相続手続きにおいて、相続人全員の合意を確認して払い戻し等の手続きに応じることになりますが、遺産分割協議書は必ず必要な書類ではありません。銀行所定の「相続手続き依頼書」に相続人全員の署名と捺印をして提出することにより、遺産分割協議書なしでも預金の相続は可能です。

2.遺産分割協議書がない場合の預金の払戻し手続き4ステップ

相続が発生してから預金の払戻し手続きが行われるまでの流れを確認しましょう。

図1:遺産分割協議書がない場合の預金の払戻し手続き4ステップ
遺産分割協議書がない場合の預金の払戻し手続き4ステップ

2-1.STEP1:相続発生の連絡

相続が発生したことを取引金融機関に連絡すると、亡くなられた方の口座は凍結され出入金ができなくなります。相続人が複数いる場合は、相続手続きが終わるまで亡くなられた方の預金は相続人全員の共有となるため、他の相続人の同意なしに引き出すことは認められません

2-2.STEP2:必要書類の準備

遺言書がなく、遺産分割協議がまとまったけれど遺産分割協議書を作成していない場合の必要書類は下記になります。戸籍謄本や印鑑登録証明書は原本を提出します。金融機関によっては希望すれば原本を返却してもらえるところもあります。

必要書類に有効期限がある場合もありますので、各取引金融機関に確認が必要です。「相続手続依頼書」は各金融機関所定の書類となります。

表1:遺産分割協議書がない場合の払戻し手続きに必要な書類
遺産分割協議書がない場合の払戻し手続きに必要な書類

*法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」を提出する場合は、原則として戸籍謄本の提出は不要です。

※法定相続情報一覧図の写しについて詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

2-3.STEP3:書類の提出

必要書類の準備ができたら、窓口で直接あるいは郵送にて提出します。

2-4.STEP4:払戻し等の手続き

書類を提出してから約2週間で、払戻しの手続きが完了します。振り込みの方法が指定できる場合は、代表相続人に一括で払戻しをする方法と各相続人の取得金額を相続手続依頼書に記載して払戻しをする方法のいずれかを選択します。

3.遺産分割協議書なしで相続手続きができるケース

遺産分割協議書は、不動産や有価証券など名義変更が必要な相続財産がある場合や相続税申告で「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を適用する場合、法定相続分と異なる遺産分割をする場合には作成が必要です。

遺産分割協議書なしで相続手続きができる4つのケースを確認しましょう。

3-1.相続人が1人しかいない

相続人が1人しかいない場合は1人で全財産を相続することになりますので、遺産の分け方を取りまとめた遺産分割協議書の作成は不要です。初めから相続人が1人しかいないケースだけでなく、他の相続人全員が相続放棄したケース、相続人の廃除・欠格により相続人がいなくなったケースが該当します。相続手続きでは亡くなられた方との関係を示す戸籍謄本を提出します。

3-2.遺言書の内容に従って遺産分割する

遺言書の内容に従って遺産分割する場合は、遺産分割協議は行いませんので原則として遺産分割協議書は不要です。相続手続きでは遺言書を提出します。 

ただし、遺言書で相続分のみ指定されている場合や記載されていない財産がある場合は遺産分割協議が必要になることから相続手続きでは遺産分割協議書も必要になります。

3-3.相続財産が預金・現金のみ

相続財産が預金・現金のみの場合は遺産分割協議書なしで相続手続きができます。金融機関で預金の払戻し手続きをする場合は銀行所定の相続手続依頼書を提出します。

3-4.法定相続分通りに遺産分割する

法定相続分通りに遺産分割する場合は遺産分割協議書の作成は不要です。法定相続分通りに不動産の名義変更(相続登記)を行う場合に遺産分割協議書は不要ですが、共有名義で相続することはおススメできません。売却する際に共有者全員の同意が必要になったり、次の相続が発生して共有者が増えると権利関係が複雑になるためトラブルになるリスクがあります。

図2:法定相続分の割合
法定相続分の割合

図3:不動産を共有名義で相続すると権利関係が複雑になるリスクがある

4.遺産分割協議書を作成することをオススメ

遺産分割協議書なしで相続手続きができるケース(3章参照)に該当する場合でも遺産分割協議書を作成することをおススメいたします。相続人全員で合意した内容を書面に残しておくことでトラブルを防ぐことができるからです。

本章では預金を相続する際の遺産分割協議書の記載方法についてご説明いたします。

4-1.遺産分割協議書には預金の金額は記載しなくても良い

遺産分割協議書に預金の金額を記載するかどうかはどちらでも構いません。金額を記載する場合は、相続発生後に発生した利息を取得する方法等も記載する必要があります。金額を記載しない場合は、誰がどの預金口座を引き継ぐのかを記載します。

4-2.遺産分割協議書の記載例

預金の相続はひとつの預金を1人の相続人が引き継ぐ場合とひとつの預金を複数の相続人が引き継ぐ場合があります。

記載する内容は下記5つです。
①金融機関名②支店名③預金の種別④口座番号⑤口座名義(亡くなられた方)

図4:遺産分割協議書の記載例
遺産分割協議書の記載例

5.まとめ

遺産分割協議書なしで預金の相続をすることは可能です。手続きの際、遺産分割協議書の提出は必要ありませんが、相続人全員が分割内容に合意したことを確認するため、銀行所定の相続手続依頼書に署名と捺印が必要です。

一方で名義変更のある相続手続きや相続税申告で「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を適用したい方は遺産分割協議書を作成する必要があります。

遺産分割協議書なしで相続手続きができるケースに該当する方も遺産分割協議書を作成することにより相続人同士のトラブル防止に役立ちますので作成することをおススメ致します。

遺産分割協議書は法的に決められた形式はないので、ご自身でも作成していただけます。記載内容として亡くなられた方の氏名、住所、亡くなられた日、最後の住所、相続人全員が合意している旨の内容、分割する相続財産の詳細、相続人全員の氏名と捺印があれば有効です。

遺産分割協議書を確実に作成したい方は、相続に強い専門家にお気軽にお問い合わせください。

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