子供名義の通帳が将来親の相続財産に?正しく贈与する方法と考え方

  • 贈与税

子供の将来のために・・・と親御さんがコツコツと、お子さま名義で貯金をされているケースは非常に多いと思います。

「二十歳の記念で通帳をプレゼントしようかな・・・」
「結婚のお祝いとしてプレゼントしてあげたいな・・・」
ふと気が付けば、かなりの貯蓄額となっているお子さま名義の通帳ですが、正しい対策をしておかなければ、将来、お子さまが思わぬリスクを背負うことになるかもしれません・・・。

お子さまの名義にしておけば問題はないのでは?と思っていらっしゃると思いますが、実は名義だけの問題ではないのです。せっかくお子さまのためにコツコツと貯めてきたお金が、お子さまの財産と認められず、贈与税や相続税といった税金の課税対象財産とみなされてしまっては苦労が水の泡となりますよね。

本記事では、お子さま名義の通帳を、お子さまの財産として認められるためにしておくべきことをご説明いたします。将来の為に、ぜひご一読いただければと思います。

1.子供名義の通帳には「贈与した証明」が必要

厳密にいうならば、親御さんがお子さま名義の通帳に貯めた預金は、実質的にお子さまの財産ではありません。これは、預金の原資はそもそもだれのもの?という視点で判断されるために、貯めていたのが親御さんであれば、このお金をお子さまの財産とみなすことはできないわけです。

例えば、お子さま名義の通帳をお父さまが作ってコツコツと入金していた場合、いくら入金しても実質的にはお父さまのお金=財産と判断されることになるのです。そうなると、このままお父さまが亡くなられてしまった場合、このお金はお父さまの財産であり、その全額を相続における遺産分割の対象財産とみなすことになります。

お子さまの財産として認められるには、お父さまからの贈与であったと証明できるようにしておくことが必要です。贈与の証明と聞くと、「贈与税がかかってしまうのでは?」と心配される方もいらっしゃるでしょう。しかし、贈与税の非課税枠を上手に利用すれば、贈与税を負担せずに贈与することは可能です。詳しくは次の章でご説明いたします。

図1:お子さま名義の通帳に入金しただけでは贈与の証明はできない

2.贈与税をかけずにお子さまに贈与する方法

実質的なお子さま名義の通帳を作るには、贈与を成立させる事が必要です。
ここで気になるのが贈与税ですが、お子さま1人が、1年間に受け取った金額が110万円を超えなければ、贈与税はかかりません。毎年110万円以下を入金(贈与)し続けるのであれば、贈与税はかからない!ということです。しかし、注意点があります。

図2:毎年110万円以下の贈与なら贈与税はかからない

2-1.贈与契約書を作成してお金の移動履歴を明確にする

通帳に記された金額が贈与されたものであることを税務署に証明する為に、贈与の事実を書面に残しておきましょう。
贈与があった日付、誰から誰にいくら贈与したのかを明確に証明できるようにします。特に毎年110万円以下を贈与し続ける場合には、後に大きな金額になる事が予想されるため贈与契約書を作成しておきましょう。また、お金を渡すときも、現金ではなく、銀行からの振り込みで記録が残るようにしておきましょう。これも贈与があった事の証になります。

図3:お子さまに贈与する場合の贈与契約書の例

2-2.毎年110万円以下の贈与の場合、同時期の贈与は避ける

お子さまの誕生日をきっかけに、毎年同じ時期に同じ金額をあげているという方も多くいらっしゃるでしょう。しかし、いくら年110万円以下であったとしても、同時期に同額を贈与し続ける場合には注意が必要となります。

例えば、毎年お子さまの誕生日に110万円を20年かけて贈与し、成人のお祝いとして2,200万円のお子さま名義の通帳をプレゼントした場合、その時点で2,200万円の贈与をしたとみなされてしまう可能性があり、贈与税がかかることになります。これは、予め20年間かけて(分割して)総額2,200万円をもらえる権利を贈与した、初めから2,200万円を贈与するつもりだったと判断されてしまうためです。そんなことになってしまえば、大変ですよね。

110万円以下の贈与を毎年続けるのであれば、贈与する時期や金額をある程度変えて、贈与の都度、きちんと贈与契約書を作成しておきましょう。

図4:毎年日付や金額を変更して契約書を作成する

2-3.子供1人が贈与される金額が110万円超なら申告が必要

複数人から贈与を受け、お子さま1人が1年間に受けた贈与の額が110万円を超えていた場合には、贈与税がかかります。
例えば、ご両親と祖父母から、それぞれ1年間に100万円ずつ受け取った場合には、合計200万円の贈与を受けたことになり、贈与税がかかります。
申告、納税をするのは贈与を受けた側(お子さま)です。幼いお子さまの場合は、申告納税の際にご両親のサポートが必要ですが、きちんと申告と納税しておくことで贈与があったという確かな証拠となり、将来においてお子さまに多額な預金があったとしても、ご両親、もしくは祖父母の財産であると判断されることはありません

2-4.赤ちゃんに対する贈与契約も有効

未成年者への贈与の場合、親権者の同意があれば、贈与契約は成立します。この場合、贈与を受けるお子さま自身が、贈与をうけた事実を知っているか否かは関係ありません
ただし、この場合、口約束のみでは成立しません。必ず親権者が代理人となり、贈与契約書を作成し、贈与の事実を証明できるようにし、お金の振り込み履歴を残すことが必要です。

図5:赤ちゃんも贈与契約は証明できる

2-5.お年玉は贈与に当たるが非課税

一般的に妥当だと考えられる範囲のお年玉については、贈与税の対象にはなりません。金額としては、「社会通念上相当と認められるもの」と国税庁のホームページに記載されています。
仮に、お知り合いや親戚が多く、各人から妥当な金額のお年玉をもらった結果、その合計額が110万円を超えた場合でも非課税となります。

※贈与について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

3.子供名義の通帳を作るときの3つの注意点

お子さまがまだ幼い場合は、ご両親が代わりに通帳を作ることがほとんどでしょう。お子さま名義の通帳を作るときに気を付けておくべき注意点をご紹介します。

3-1.親子の印鑑は別にする

通帳を作るときに印鑑が必要になりますが、お子さまがまだ小さいと親が代わりに手続きをすることがほとんどです。この時、印鑑はお父さまやお母さまとは別のお子さまの印鑑を使用しましょう。ご両親が使用されている印鑑と同じものを使用した場合、実質的には親御さんの通帳であると後に税務署に判断される可能性が高くなります。

3-2.子供名義の通帳は親が代理人として手続きする

お子さまがご自身で通帳を作ることができない場合、ご両親などの法定代理人が手続きをすることができます。
必要書類を用意して金融機関の窓口で作成します。インターネットで通帳を作ることも可能です。この場合、紙の通帳は発行されないので、定期的に通帳の中身をプリントアウトしておきましょう。ご両親がお子さまの代理人として手続きができる口座の種類は、金融機関によって異なります。ご家庭の利用しやすい条件に合った金融機関を選択しましょう。

<金融機関窓口の手続きに必要な書類等>
お子さまの本人確認書類等:印鑑、マイナンバーカード、パスポート、健康保険証、住民票など
法定代理人(親権者):マイナンバーカード、パスポート、住民票、健康保険証、運転免許証、母子手帳など親権者の姓と住所が一致している、または続柄が確認できるもの

3-3.子供が通帳の管理使用を自由にできるようにする

通帳の名義人であるお子さまが幼かったり、通帳は成人後にサプライズでプレゼントしたい、等の理由でお子さま本人に通帳の存在を知らせないでいることもあるでしょう。
しかし、通帳の名義人であるお子さんが通帳の存在を知らないまま、管理をしていたご両親が亡くなられてしまうと、贈与は成立していないとみなされ、通帳のお金は管理をしていたご両親の相続財産となってしまいます。

お子さまがお金の意味を理解できる年齢になられたら、通帳の存在を話して少しずつお子さまご自身で管理ができるようにしていきましょう。
また、お子さまが成人された後は、いくらご両親であっても、子供名義の通帳から、勝手にお金を引き出すことはできません。お子さまの委任状や代理届が必要になります。

4.まとめ

子供名義の通帳はご両親が作成してお金を貯めていくだけでは、お子さまの財産にはならない場合があります。1年間にお子さま1人が受ける贈与の額が110万円以下であれば、贈与税はかかりませんが、通帳の作成方法や管理方法、さらに、毎年同時期に同額の贈与を行わないなど、気を付けることが大切です。

子供名義の通帳がお子さまの財産であると証明するためには、贈与の事実を贈与契約書として残しておきましょう。親子の間の贈与に契約書は不要だろう、と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、贈与後すぐにではなく、税務署は贈与の内容を相続などをきっかけとして、知ることになります。ご両親のうちどちらかが亡くなられると、税務署が過去10年程度遡り履歴を調査することがあります。この時にまとまったお金の動きがあれば、必ずチェックされます。相続税の税務調査では、同時に贈与の調査であると言えるほど、贈与の指摘を受けることが多いです。贈与の申告や契約書の作成など、必要な手続きはその都度きちんと行いましょう。

子供名義の通帳やお子さまへの贈与について、ご不明な点やご心配なことがございましたら、お気軽にOAG税理士法人へお問い合わせください。

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