遺産分割協議書の書き方に決まりなし!書き方のポイントと使える文例

  • 相続手続き

「父が亡くなり、残された母と兄弟で財産を引き継ぐことになった。揉めることもなく、分割内容が決まったので、相続手続きを早めに終えてしまいたい。手続きを進める上で、遺産分割協議書が必要になると思うが、どのように書けばよいのだろうか?書き方が分かれば自分で書きたいと思っている。」

遺産分割協議書をきちんと作成していると、相続手続きはとてもスムーズに進みます。遺産分割協議書は、財産の内容と相続する方が明確で、相続人全員がすでに内容に同意していることを証明している書面なので、対外的にも状況が把握しやすく、効率よく手続きを進めるのにとても役立つ書面といえます。

財産の分け方をしめした重要な書面ですが、その書き方に法的な決まりはありません。書かなければならないポイントさえ、きちんとおさえられていれば、相続人ご自身で作成できます。

本記事では、遺産分割協議書を作成するための書き方のポイントと基本的な文例をご紹介いたします。難しい内容ではありませんので、ご一読いただければご理解いただけると思います。

1.遺産分割協議書の書き方に法的な決まりはない

遺産分割協議書の作成は、法律で義務付けられているものではないので、決められた書式もありません。縦書きでも、横書きでも、手書きでも、パソコンでも、作成方法も自由です。相続財産を正確に記載して、「相続人の誰が、どの財産を、どのように引き継ぐのか」を明確に示すことが大切です。更に、記載内容に相続人全員が同意していることを証明する直筆の署名と実印の押印が必要です。

また、遺産分割協議書は「一部の遺産のみ」について作成することもできます。メリットとしては、引き継ぐ方が決まった相続財産の手続きから先に進めていくことができることです。デメリットとしては、個別に作成すると、その都度、署名や押印の手間と負担が相続人全員にかかります。

不動産の名義変更(相続登記)手続きは、たとえ不動産を引き継ぐ方が1人でも、相続人が複数いる場合は、必ず遺産分割協議書の提出が求められます。預貯金などの他の財産は記載せずに、不動産のみを記載した遺産分割協議書を作成すれば、手続きは可能です。自動車の名義変更についても同じですが、査定額が100万円以下の自動車であれば、「遺産分割協議成立申立書」といって、自動車を取得する方のみの署名押印で簡略化することが可能です。

※遺産分割協議書について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

※不動産のみの遺産分割協議書について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

※遺産分割協議成立申立書について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

1:遺産分割協議書には必ず相続人全員の署名と押印が必要

2:査定額100万円以下の自動車であれば遺産分割協議成立申立書で簡略化

2.遺産分割協議書を書く前の5つの書き方ポイント

決められた書式はなくても、記載内容に不備な点があれば、せっかく相続人全員の署名と押印が揃った遺産分割協議書であっても無効となる可能性があります。作成前に、以下の5つのポイントをご確認ください。

2-1.前提!1人の方が勝手に作成してはいけない

遺産分割協議書の作成は、相続人全員が分割協議に参加して、同意した内容をまとめることが前提条件となります。1人でも協議に参加していない、または同意していないようであれば、どんなに正しく記載した遺産分割協議書であっても無効となります。

ある日突然、遺産分割協議書だけが送られてきて、協議内容の説明なく、署名や押印を求められるようなことがあった場合、それは正当な進め方とは言い難く、応じる必要はないでしょう。そこで署名や押印をしてしまえば、同意したことになってしまい、あとから覆すことは難しくなりますので注意してください。

2-2.相続財産の内容は正確に・特定できるように記載

遺産分割協議書の具体的な書き方のポイントをご説明します。相続財産については、決して曖昧な書き方ではなく、確実に特定できる内容で正確に記載します。持分なども、正確に記載してください。

不動産については、登記簿謄本(全部事項証明書)に記載されている内容と同じように記載します。謄本の内容と相違があると名義変更(相続登記)できず、法務局から内容を却下されてしまい、もう一度遺産分割協議書を正しく作り直さなければなりません。

預金についても、金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号まで正確に記載し、預金内容を特定できるように示す必要があります。自動車なども、車検証に記載されているとおりに登録番号や車台番号まで、きちんと記載しておきましょう。

3:不動産は登記簿謄本の内容を参考に記載

2-3.相続人は全員自署と実印の押印が必要

遺産分割協議書の最後には、協議が成立した日付を必ず入れ、相続人全員の署名、署名の横に実印で押印します。相続人の名前は、必ず自署しなければならず、代筆は認められません。自署ができない状況の場合は、家庭裁判所の手続きをおこない、代理人、もしくは後見人を立てる必要があります。

遺産分割協議書は、相続人が同意している事実を証明する書面なので、押印は実印でおこない、印鑑証明書を添付するのが正式です。不動産の名義変更や預貯金の解約手続きなどで、遺産分割協議書を提出する際には、必ず相続人全員の印鑑証明書の提出が求められます。

図4:遺産分割協議書は実印で押印し印鑑証明書を添付する

2-4.亡くなられた方の情報も記載が必要

どなたの相続財産に関する遺産分割協議書なのかが分かるように、亡くなられた方の情報として、名前、ご逝去日、最後の住所、本籍地などを記載しておきます。

遺産分割協議は相続人全員が集まって話し合いをすることが理想的ですが、全員が揃うことは非常に難しいと思われます。集まって話し合いができない場合も多々ありますので、基本的な情報まできちんと明記しておきましょう。

2-5.枚数や通数が増える場合は「契印」・「割印」が必要

遺産分割協議書は、見開き1枚などで内容がおさまらない場合には、複数枚に分けて作成することになります。その場合、ページとページの間に「契印」を押しておきます。こうすることで、2枚以上の書面が1つの連続した文書であることを証明し、抜き取りや差し替えを防止することができます。契印の方法は図5をご確認ください。

また、遺産分割協議書は、相続人の人数分を作成し、各々が保管しておくとよいでしょう。複数作成された遺産分割協議書が、すべて同じ内容であることを証するためには、「割印」を押しておきます。割印は、複数の遺産分割協議書を少しずらして重ね、両方の書面にまたがるように押印しておきます。

図5:契印と割印の押し方

※割印について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

3.【直ぐ使える】遺産分割協議書の基本的な文例

相続財産の内容や相続人の数は各々で異なるものですが、一般的によくある不動産、預貯金などの基本的な財産の書き方を事例として、詳しく説明していきます。書式に決まりはありませんので、ある程度自由に書いていただくことができますが、曖昧な記載は避け、財産の内容と取得する方が明白になるよう、正しく記載してください。

※遺産分割協議書のひな形について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

図6:遺産分割協議書の基本的なひな形

 ①冒頭文例:亡くなられた方の情報を記載

 ②引き継ぐ人:誰が相続するのかを記載

 ③不動産の記載例:全部事項証明書(登記簿謄本)を参考に、所在、地番、家屋番号などを正確に記載

 ④現金:自宅や財布の中に残る現金、亡くなる直前に引き出したまとまった現金があれば記載

 ⑤預貯金:金融機関・支店名、口座の種類、口座番号、「~のすべて」と記載しておくと漏れがない
      残高証明書を取得するとより正確な情報が記載できる

 ⑥有価証券:定期的に自宅に送られている取引明細や、残高証明書を取得して正確な情報を記載

 ⑦火災保険の加入状況、家財一式、電話加入権のことも忘れずに記載
  未収金、未払金、葬式費用に関することも記載しておくとあとでトラブルにならない

 ⑧代償に関する事項:代償金を支払う場合の記載例、いつまでに支払うかについても記載するとよい

 ⑨遺産分割協議書を作成した時点で把握できていない財産があった場合の対処についての記載例
  「相続人全員で再度協議をおこなう」でもよい

 ⑩相続人全員が同意して署名、押印した事実、協議書を何通作成しているかを記載

 ⑪協議が成立した日

 ⑫相続人の記載事例:住所は予め印字していてもよい
           名前は自署、押印は実印でおこなう
           空いている箇所に捨印を押しておくと簡単な誤字脱字をした際に訂正がしやすい

4.相続人の人数が多い・遠方に住んでいるとき遺産分割協議証明書を活用

遺産分割協議は全員が参加しなければなりませんが、必ず全員が集まらなくてはならないという意味ではありません。相続人の数が多い、あるいは遠方に住んでいる場合などは、一度に集まることは困難ですよね。

そのような場合は、ある程度話し合いを進めて、協議内容をまとめ、遺産分割協議書の書面を作成して郵送し、順に署名と押印をしていく方法で協議書を整えるのが一般的です。手間も時間もかかり、大事な遺産分割協議書を紛失する恐れもあるので大変です。

このようなときは、手続きを大幅に簡略化する「遺産分割協議証明書」という書面を使います。これは、遺産分割協議書を相続人ごとに分けて作成し、一度に各自に渡します(郵送します)。各人が各々で署名押印した遺産分割協議証明書を相続人全員分揃えて一つにまとめると「遺産分割協議書」とまったく同じ効力を生じされることができるのです。手続きを効率よく進めるテクニックの1つですので覚えておいてください。

図7:遺産分割協議証明書は書面を相続人ごとに分け1人ずつ署名押印したもの

※遺産分割協議証明書について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

5.まとめ

遺産分割協議書は遺産分割協議の結果をまとめた書面です。遺言書が残されている、法律で定められた相続できる割合の法定相続分のまま、すべての相続財産を分割する場合などは、遺産分割協議書は必要ありません。しかし、互いの認識の違いから生じる、後々の相続トラブルを防ぐためには、出来る限り遺産分割協議書を作成しておくことをお勧めいたします。

遺産分割協議書の書式に決まりはなく、ひな形などを参考にすると、相続人ご自身で作成することができますが、相続財産などは確実に特定できるように、正確に記載しなければなりません。また、相続人全員の署名と実印の押印が必要です。

相続財産の種類が多く、正確に把握できない、もしくは遺産分割協議書を不備なく作成できるかどうか心配な方は専門家にご相談いただけるとよいでしょう。

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