遺産分割協議書は100万円超の自動車に必要!書き方の解説付ひな形

  • 相続手続き

「亡くなった父親の車をそのまま乗っていたら、車検の際に、名義変更した方がいいですよ!といわれてしまった。売却するときなどが面倒になるらしい。遺産分割協議書があれば、名義変更できるといっていたけれど、遺産分割協議書の作成などしたことがない・・・。どんな風に作成すればよいのだろうか?」

車の所有者が亡くなると、原則、移転登録手続き(名義変更)が必要です。特に罰則はありませんので、手続きをしていない方もいらっしゃると思いますが、相続で移転登録していない車の所有者は「相続人全員」のままです。

売却や廃車の手続きをしようとした際に、相続人を証明する戸籍謄本一式や、相続人全員の印鑑登録証明書を揃えなければなりません。相続から時が経っていたら、必要書類を集めるだけでも一苦労です。移転登録手続きは、できるだけ早めに済ませておく方が安心です。

本記事では、自動車の移転登録手続きで必要な遺産分割協議書のひな形と書き方をご説明いたします。

1.遺産分割協議書が必要なのは「査定額100万円超の普通自動車」を相続するとき

遺産分割協議書は、相続人全員で、相続財産の分け方を話し合い、全員が同意した内容をまとめた書面です。相続人全員の署名と実印の押印が必ず必要となる書面です。

遺産分割協議書には決まった様式はありません。「財産をどなたが引き継ぎ、そのことを相続人全員が同意している」ことが明確であれば、無効になることはありません。

また、自動車の査定額が100万円以下の場合は「遺産分割協議成立申立書」といって、車を引き継ぐ方だけが記載する書面で、手続きを簡略化することができます。さらに、軽自動車であれば、遺産分割協議書や、遺産分割協議成立申立書などは必要なく、移転登録手続きをすることができます。

表1:査定金額100万円超えでなければ遺産分割協議書は必要ない

査定金額100万円超の普通自動車 遺産分割協議書が必要
査定金額100万円以下の普通自動車 遺産分割協議成立申立書 または、遺産分割協議書
軽自動車 遺産分割協議書は不要

※遺産分割協議書について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

※自動車の移転登録手続きについて詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

※遺産分割協議成立申立書について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

 

2.遺産分割協議書は自動車を廃車するまたは売却する場合でも必要

相続する自動車には乗らずに、そのまま廃車する、もしくは売却することがあると思います。

どうせ廃車するなら、移転登録手続きはしなくてもよいのではないか?と思われるかもしれませんが、亡くなられた方の名義のままでは、廃車も売却もできないことになっています。一旦は、引き継がれる方の名義に変更する必要があります。

3.「自動車のみ」遺産分割協議書のひな形と書き方

遺産分割協議書は、自動車の移転登録手続き用に「自動車のみ」で作成することができます。遺産分割協議書は、法律で決められた様式はないとご説明しましたが、手続きしたい財産だけの遺産分割協議書を作成することも可能です。

3-1.「自動車のみ」の遺産分割協議書は運輸局ホームページからダウンロード

「自動車のみ」の遺産分割協議書は、地方運輸局のホームページにひな形が用意されていますので、ダウンロードして簡単に作成することができます。

参考:国土交通省 関東運輸局ホームページ http://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_gian/touroku/index.html

図1:「自動車のみ」の遺産分割協議書ひな形

3-2.これで完璧!一目でわかる記載例

「自動車のみ」の遺産分割協議書の記載例をご説明いたします。自動車の登録番号や車体番号は、車内で保管が義務付けられている「自動車検査証」より確認することができます。

図2:記載例

① 遺産分割協議が成立した日付 ② 亡くなられた日付 ③ 亡くなられた方の名前 ④ 相続する方の名前 ⑤ 自動車の登録番号(自動車検査証を確認) ⑥ 自動車の車台番号(自動車検査証を確認) ⑦ 相続人全員の住所、署名押印(署名は必ず自署、押印は実印)

図3:自動車の情報は「自動車検査証」で確認

4.「自動車を含む相続財産すべて」の遺産分割協議書の書き方

「自動車だけ」、「不動産だけ」というように、財産ごとに遺産分割協議書を作成することは可能ですが、個別にすると相続財産の全体像を把握しづらくなりますし、その都度、相続人全員が署名、押印するのでは手間がかかってしまいます。

自動車だけでなく、すべての相続財産を記載する遺産分割協議書の作成を検討される場合は、以下の内容を参考にしていただければと思います。

4-1. 記載すべき5つの項目

遺産分割協議書は、記載すべき項目を押さえ、書き方のポイントを把握できれば、引き継ぐ方ご自身で簡単に作成することができます。

【記載する5つの項目】 項目①:タイトルと書き出し(亡くなられた方の情報などを記載する) 項目②:相続財産の詳細(引き継ぐ方、引き継ぐ割合を明確に記載する) 項目③:把握していなかった財産が後から見つかった場合の対処方法 項目④:相続人全員で話し合い、決定した事実であることを証する記載 項目⑤:相続人全員の署名と実印を押印する

書き方のポイントは、「相続財産を特定できるように、所在は明確に、金融機関などは名称や支店名を記載する」、「どなたが引き継ぐ財産なのか、持分などを明確に記載する」、「相続人全員が必ず自署して、実印を押す」ということです。

4-2.項目ごとの具体的な書き方

項目①で記載するタイトルは「遺産分割協議書」です。書き出しの部分には、亡くなられた方のお名前、本籍地(住所まで記載してもよい)、ご逝去された日にちを記載し、引き継ぐ財産について、相続人全員(共同相続人ともいう)で分割内容を話し合って決めたという事実を記載します。

図4:タイトルと書き出しの記載例

項目②には、相続財産の詳細を記載していきます。どなたが、どんな財産を、どのくらい引き継ぐのかということが明確になるように記載します。

図5:相続財産の詳細を説明する記載例

項目③は、万が一、記載漏れの財産や、新たに発見された財産や負債があった場合を想定し、その対処方法について記載しておきます。引き継ぐ方をあらかじめ決めておく、または、再度全員で協議してから決定する、のどちらでも構いません。

図6:新たに財産や負債が見つかった場合の対処に関する記載例

項目④では「相続人全員で協議して、決定した」という一文で締めくくります。

図7:相続人全員で協議し遺産分割協議が成立したという末文の記載例

項目⑤では、相続人全員の署名と実印を押印しておきます。

相続人全員が住所と名前を直筆で記入し、名前の横に実印で押印します。ご本人の意思による同意であることを証明するために、印鑑登録証明書が必要です。下の余白には、実印で「捨印(すていん)」を押しておくと、多少の書き損じが見つかった場合でも、一から書き直す必要がなく、訂正するのに便利です。

図8:相続人全員の署名と押印

5.まとめ

自動車を引き継ぐ場合、遺産分割協議書は、「査定金額が100万円超の普通自動車」の場合に必要です。査定金額が100万円以下の普通自動車の場合は、遺産分割協議書でももちろんよいですが、引き継ぐ方だけが記載すればよい「遺産分割協議成立申立書」で代用することが可能です。軽自動車の場合は、遺産分割協議書自体が不要です。

移転登録手続きのために、「自動車のみ」の遺産分割協議書を作成する場合は、運輸局ホームページよりひな形をダウンロードすることができます。記載が必要となる自動車の登録番号や車台番号は、自動車検査証で確認します。簡単に作成することができます。

すべての相続財産を記載し、その中で自動車の項目を記載する遺産分割協議書を作成することもできます。書式に決まりはありませんので、記載例を参考にして、ご自身の相続手続きに応じた内容に整えていただければと思います。相続人の署名は自署で、押印は実印でおこないます。

遺産分割協議書は、どのような財産を、どなたが、どれくらい引き継ぐのかを明確に記載できていれば、無効になることはありません。誤字脱字などに気を付けて、作成していただければと思います。

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