被相続人と相続人の違いは?亡くなられた方を基準にした相続人の関係
- 相続手続き
「相続人」と「被相続人」。
どこかで聞いたことはあるけれど、どちらが亡くなられた方を示しているのだろうか。。。
「相続人」と「被相続人」は、相続の話をするときに必ず耳にする言葉です。相続に関する本やインターネット、専門家の話の中ではあたり前のように使われる言葉ですが、ご自身の相続の際にいざ当てはめて考えてみると意外にも混乱してしまいます。
本記事では、「相続人」と「被相続人」についての基本的な解説と、誰が相続人となるのか。など知っておくべき大切なポイントをまとめました。この記事を参考にしていただくことで、相続にかかわる様々な基本事項をスムーズに理解していただけるようになります。
目次
1.相続人と被相続人の違いを理解しよう
相続においては「相続人」「被相続人」という言葉はあたり前のように利用されます。しかし「被相続人」と聞くと「被」とはどんな意味何だろうか?と、疑問に思われるのではないでしょうか。相続に限らず法律ではよく出てくる「被●●」という言葉ですが、相続における違いを解説します。
図1:被相続人と相続人のイメージ
1-1.被相続人とは財産を遺した人(亡くなった人)
「被相続人」とは亡くなられた方のことです。
相続においては、被相続人(亡くなられた方)が遺した財産(現金・不動産・株式など)を、相続人が受け継ぐことになります。被相続人は、ご自身の意思を生前に遺言書に記すことで財産を受け取る方や割合を指定することができます。
詳しくは3章を参照してください。
1-2.相続人は財産を受け継ぐ人
「相続人」とは亡くなられた方が遺した財産を受け継ぐ方のことです。
相続人は民法で決められており「法定相続人」と言います。亡くなられた方の配偶者、お子さん(前妻とのお子さん・認知したお子さんも)、ご両親、ご兄弟など多くの方が対象となります。相続人は、自分たちで決めることができないため、正しいルールに基づいて確定する必要があります。間違っていると後にトラブルに発展するため、正しい知識と正しい情報で確定をしましょう。
詳しくは2章を参照してください。
一方で、亡くなられた方が遺言を作成していた場合には、意思を尊重することから遺言に書かれていた方が相続財産を受け継ぎます。つまり、遺言で指定されれば例え第三者であっても相続財産を受け継ぐことができます。
2.相続人は、法律で定められた相続順位によって決まる
相続人は、法律で定められたルールに基づいて決定していきます。
例えばお父さんが亡くなられた場合、亡くなられた後に事前準備として生まれてから亡くなるまでの戸籍を取り寄せて全ての相続人を確認します。その上で相続順位の考え方により、今回の相続における「相続人の確定」をおこないます。
相続順位について例を用いて説明していきますが、押さえたいポイントは3つです。
① 配偶者は常に相続人となるが、婚姻関係にない場合(内縁の妻や夫)には相続人とならない
② 配偶者以外は全員が相続人となるわけではなく、相続人を確定する相続順位がある
③ 相続順位は、順位が上の方がいる場合には、下の方は相続人とならない
※第一順位がいる場合には第二位以降の方は相続人となりません。
※相続順位は第三順位までしかなく、第四順位はありません。
図2:表1の相続順位のイメージ
表1:相続の順位と範囲
相続の順位 | 対象範囲 | 補 足 |
---|---|---|
常に相続人 (順位関係なし) |
配偶者 | ・法律上、婚姻関係にある配偶者は常に相続人となる ・内縁や事実婚の配偶者は相続人になれない |
第一順位 | 子・孫・ひ孫 (直系卑属) |
・お子さんがご健在であればお子さんが相続人となる ・お子さんが亡くなられた場合はその子である孫が相続人となる ・お孫さんが亡くなられた場合はその子であるひ孫が相続人となる |
第二順位 | 父母・祖父母 (直系尊属) |
・第一順位の子や孫がいない場合に相続人となる ・父母がご健在であれば相続人となる ・父母がともに亡くなられた場合は祖父母が相続人となる ・どちらかがご健在の場合は、ひとりで引き継ぐ |
第三順位 | 兄弟姉妹 (傍系血族) |
・第二順位の父母や祖父母がいない場合に相続人となる ・兄弟姉妹がご健在であれば相続人となる ・兄弟姉妹が亡くなられた場合は、おい・めいが相続人となる ・おい・めいが亡くなられた場合、その子には引き継がない |
第四順位 | なし | ・国庫に帰属する |
相続の順位については ⇒ 「遺産相続の順位が簡単に図解で理解できる5つの法則【完全版】」
2-1. 相続人の相続順位は、被相続人を基準として決まる
家族の構成は変わらなくても、誰が亡くなられたかによってご自身の相続順位が変わります。
これはは、被相続人(亡くなられた方)から見た順位を使うためであり、ご自身が第一順位の時もあれば、第三順位となることもあります。
例えば、ご自身のご兄弟(兄)について見てみると、ご両親が亡くなられた場合にはご自身もお兄さんも子として扱われるため第一順位となります。一方で、ご自身が亡くなった場合には、お兄さんは兄弟として扱われるため第三順位となります。
2-1-1.被相続人がご自身(父親)の場合の相続人と相続順位
ご自身(父親)が亡くなられた場合の法定相続人と相続順位を確認します。
図3を見ながら一緒に確認しましょう。
・配偶者である奥さまは必ず相続人
・お子さんがいらっしゃれば第一順位として相続人へ
※お子さんが亡くなられて孫がいれば、お孫さんが第一順位(代襲相続)
・お子さんがいらっしゃらない場合は、ご自身のご両親が第二順位として相続人へ
・お子さんもご両親もいない場合には、ご兄弟が第三順位として相続人へ
図3:被相続人がご自身(お父さん)の場合の法定相続人の順位と範囲のイメージ
図4:被相続人がご自身(お父さん)の場合の相続順位のイメージ
配偶者以外は、上の順位の相続人がいない場合に次の順位の相続人が財産を引き継ぐことができます。
2-1-2.被相続人がおじいさんの場合の相続人と相続順位
おじいさん(ご自身のお父さん)が亡くなられた場合の法定相続人と相続順位を確認します。
図5を見ながら一緒に確認しましょう。
・配偶者であるおばあさんは必ず相続人
・ご自身とお兄さんが子の立場として第一順位として相続人へ
※ご自身・お兄さんが亡くなられてお子さんがいれば、お子さんが第一順位(代襲相続)
・ご自身・お兄さんが亡くなられている場合は、おじいさんのご両親が第二順位として相続人へ
・図5の場合おじいさんのご兄弟はいないため、第一順位・第二順位不在のとき相続財産は国庫に帰属する
図5:被相続人がおじいさんの場合の法定相続人の順位と範囲のイメージ
図6:被相続人がおじいさんの場合の相続順位のイメージ
2-1-3.被相続人がお子さんの場合の相続人と相続順位
ご自身のお子さんが亡くなられた場合の法定相続人と相続順位を確認します。
図7を見ながら一緒に確認しましょう。
・配偶者は不在
・お子さんやお孫さんもいないため、第一順位は不在
・ご自身(お父さん)とお母さんが第二順位として相続人へ
※ご自身とお母さんが亡くなられている場合、ご自身やお母さんのご両親が第二順位として相続人へ
・ご自身もお母さんもご両親も不在の場合、第三順位としてご兄弟である長女が相続人へ
図7:被相続人がお子さん(長男)の場合の法定相続人の順位と範囲のイメージ
図8:被相続人がお子さん(長男)の場合の相続順位のイメージ
2-2.相続人が受け継ぐ割合は「法定相続分」を基準とする
法定相続人が受け取れる財産の割合は、法律で定められています。遺言がない場合や、遺言で不公平な割合が示されていたときなどに相続財産をめぐってご家族間で争いごとが起きないように、財産を分けるときの基準となる割合です。
表2:法定相続人の組み合わせごとの法定相続分
法定相続分の詳しい説明は ⇒ 「我が家の法定相続分の計算が図解で簡単にわかる全知識【完全版】」
3.被相続人は、遺産相続において自分の意思が尊重される
相続する財産は、被相続人が生前に築き上げた大切な財産です。そのため相続を行う際に大切にされるのが、被相続人の意思です。具体的にどのようなケースで被相続人の意思が尊重されるのか確認していきましょう。
3-1.被相続人は遺言で財産の分割方法を指定できる
被相続人が生前に遺言を作成した場合、法律で定められた法定相続人や相続財産の分割割合である法定相続分より優先して、遺言に記載された方が記載された割合を相続することになります。
被相続人が遺言作成する際の留意点としては、被相続人は意思通りに財産の配分を自由に決めることができますが、「誰か一人に相続させる」など偏った配分の場合に他の相続人が困ってしまうことから、最低限の財産を受け取れる権利である「遺留分」という考え方があります。これを侵害している場合には、その分を請求することができるため、遺言作成時には考慮が必要です。
遺留分については ⇒ 「知らないと損するかも!?遺産相続における遺留分の権利とは」
3-2.被相続人は相続人の遺産相続の資格を奪う事ができる
被相続人は相続人に虐待をされたり、重大な侮辱を与えられたりなどした場合に、被相続人の意思により家庭裁判所に「相続廃除」の申請をすることで、相続人を相続の対象から廃除できるという制度があります。これを「相続廃除」といいます。
3-3.相続人は被相続人や遺言に対する不法行為等で相続権を失う
相続人は、被相続人や他の相続人に対して犯罪行為をしたり、遺言作成を妨げるなど法にそむく行為をした場合、被相続人の意思を問わずに相続権を失います。これを「相続欠格」と言います。
4.まとめ
相続人と被相続人についてお分かりいただけたと思います。
今回のポイントは2つです。
・相続人は財産を受け継ぐ人
・被相続人とは財産を遺した人(亡くなった人)
また、関連して大切にしたいポイントが2つあります。
・被相続人の大切な財産は遺言を作成すると意思を反映させることができる
※被相続人の意思で相続人とその割合を決めることができる
・遺言が無い場合、相続人と相続財産を受け継ぐ割合には基準がある
これらを理解をしておくことで、相続の手続きや遺産分割の話し合いもスムーズに進める事ができます。
ぜひこちらの記事を参考にしていただきご家族の相続の際に役立てていただきたいと思います。