暦年贈与は贈与契約書を作成!贈与契約書の書き方4STEPと注意点
- 贈与税
「息子と可愛い孫達に贈与税がかからないように暦年贈与がしたい。贈与するときは、贈与契約書を作成した方が良いと聞いた。贈与契約書を作成するメリットはなんだろう。書き方も知りたい。」
暦年贈与とは1月1日から12月31日までの1年間(暦年)で、贈与額が110万円以下ならば贈与税がかからないという贈与方法です。相続税対策として、生前に110万円の贈与税の非課税枠を活用して財産を移したいとお考えかもしれませんね。
暦年贈与をする際に、贈与契約書を作成しなければならないのでしょうか。贈与契約書を作成する場合、書き方に決まりはあるのかなどご心配でしょう。
本記事では贈与契約書を作成した方がよい理由と贈与契約書の書き方について詳しくご説明いたします。暦年贈与時の贈与契約書の注意点についても参考にして頂ければと思います。
本記事では、暦年贈与について、概要とメリットや注意点をご説明いたします。
目次
1.暦年贈与の贈与契約書は贈与を証明する
贈与契約書とは、贈与を行なった事実と贈与契約の内容を証明する書類です。相続税対策として、 毎年110万円までの贈与ならば贈与税がかからない暦年贈与を行う場合も贈与契約書が必要なのかと気がかりかもしれません。
贈与は贈与する人(贈与者)と贈与される人(受贈者)の双方が合意することで成立します。そのため、贈与契約は口頭でも成立しますが、贈与契約書により第三者に贈与の事実と双方の意思を客観的に証明することができますので、作成することをおススメします。
図1:暦年贈与
図2:贈与は贈与者と受贈者の合意があれば成立する
※暦年贈与について詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事
2.暦年贈与の贈与契約書の3つのメリット
贈与契約書がない場合に起こりうるトラブルとして、贈与契約の内容について贈与者と受贈者で認識の不一致が生じたり、相続開始後に相続人同士のトラブルになるということが考えられます。
本章では、暦年贈与の贈与契約書を作成するメリットについてご説明いたします。
2-1.贈与契約の当事者間の認識違いを防げる
1章でご説明した通り、贈与契約書を作成することで贈与の事実と双方の意思を客観的に証明することができます。口約束でも贈与契約は成立しますが、言った言わないが原因でトラブルになるリスクがあります。
贈与契約書は、贈与金額や贈与の時期など贈与の内容を確実に記載し、贈与者と受贈者が合意した上で署名捺印をして作成しますので、認識違いを防ぐことができます。
2-2.税務調査対策になる
税務調査とは、納税者から提出された申告内容が正確かどうかを税務署が調査することです。贈与契約書がない場合は相続開始後に暦年贈与が認められず、名義預金あるいは定期贈与であるとみなされる可能性があります。相続税対策として暦年贈与を行って相続財産を減らそうとしても、暦年贈与が認められない分は相続財産になり、相続税の課税対象になります。
【参考】
①名義預金とは、実際にお金を預金している人と口座の名義人が違う預金のことを言います。
たとえば、亡くなられたお父さまがお子さんやお孫さんの名義で預金していた場合、名義預金となります。贈与契約書により当事者間の合意を証明することができます。また、相続人がその預金の存在を知っており、通帳、印鑑等は相続人本人が管理していることが大切になります。
②定期贈与とは、毎年一定の金額を贈与することをいいます。
たとえば、お父さまからお子さんへ1,000万円を100万円ずつに分けて毎年贈与すると決めて生前贈与を行なった場合、定期贈与になります。定期贈与の場合は、贈与合計額1,000万円に対して贈与税が課せられます。
2-3.相続人同士のトラブル回避
贈与契約書を作成することにより、相続手続きなどを円滑に進めることができます。たとえば亡くなられたお父さまが兄弟3人のうち長男にだけ多額の生前贈与を行なっていた場合は、特別受益にあたる可能性があります。
特別受益とみなされる生前贈与があった場合は、相続人同士の公平性を保つために特別受益を相続財産に加えて遺産分割を行ないます。特別受益を受けた相続人の相続分は贈与額分だけ減らして計算しますので贈与の内容を確認するため贈与契約書が必要です。
3.贈与契約書の書き方
贈与契約書の書き方に決まりはありませんが、贈与の内容がわかるよう記載すべき事項があります。パソコンや手書きで作成し、贈与者と受贈者双方が署名捺印をします。印鑑は信頼性を高める実印を使用されることをおススメします。実印で捺印した場合は印鑑証明書を添付します。
3-1.贈与契約書の作成4STEP
まずは、贈与者が現金や不動産などをどれくらい贈与するのか贈与の内容を決めます。贈与者と受贈者が贈与の内容を相談し合意した後に贈与契約書を作成します。双方が署名捺印をした契約書を2部作成し、各自一部ずつ保管します。
図3:贈与契約書の作成4STEP
3-2.贈与契約書に記載する5つの事項
贈与契約書に決まった書式はありませんが、贈与の内容が第三者にもわかるような契約書でなければなりません。下記の5つの記載事項に留意して、贈与契約書を作成しましょう。
図4:贈与契約書に記載する5つの事項
3-3.贈与契約書の記載例
現金・株式・不動産を贈与する時の贈与契約書の記載例をご紹介します。受贈者がお孫さんなど未成年の場合は、連名で受贈者の法定代理人(親権者)の署名捺印も必要になります。
①現金を贈与するときの贈与契約書の記載例
②株式を贈与するときの贈与契約書の記載例
③不動産を贈与するときの贈与契約書の記載例
不動産を贈与する場合は、不動産に関する事項は、登記事項証明書のとおりに記載します。不動産の贈与契約書には収入印紙が必要です。不動産の対象金額を明記しない場合は200円の収入印紙を貼ります。不動産の対象金額を記載する場合は、見合った収入印紙を貼ります。
4.暦年贈与時の贈与契約書の注意点
暦年贈与するときの贈与契約書の注意点をご説明します。
4-1.相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象
相続で財産を取得した方が、亡くなられた方から相続開始前3年以内に財産を贈与されていた場合には、その3年以内の贈与財産については相続税が課税されます。贈与契約書を取り交わした贈与でも、同様に持ち戻します。相続または遺贈により財産を取得していないお孫さん等への贈与は、相続開始前3年以内でも相続財産への持ち戻しは不要です。
※令和6年1月1日以降の贈与より、相続税の持ち戻しの対象期間が3年から7年に延長されます。ただし、延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、総額100万円までで加算されません。
図5:相続税の生前贈与加算
※相続税の3年以内加算(生前贈与加算)について詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事
4-2.贈与契約書だけでなく贈与の事実を残す
贈与契約書に加えて、実際に贈与したことがわかるように贈与の事実を残しましょう。
現金を暦年贈与する時は手渡しではなく銀行振込にします。銀行の通帳に振込人と金額が記載されることにより贈与の記録を残すことができます。株券であれば名義変更をしたことがわかる書類、不動産であれば名義変更を行った登記事項証明書など贈与したことがわかる書類を保管しておきましょう。
4-3.定期贈与にならないようにする
暦年贈与するときは、税務署に定期贈与と疑われないように贈与の時期や贈与額を少し変えて、毎年同じにならないようにしましょう。贈与契約書は贈与を行う度に作成し、取引記録をきちんと残しておくようにしましょう。
5.まとめ
贈与契約書とは、贈与を行なった事実と贈与契約の内容を証明する書類です。贈与契約書を作成することで、贈与者と受贈者の認識違いの回避や税務調査対策、遺産分相続手続きを円滑に進めることができます。
贈与契約書はご自身で簡単に作成することができます。贈与契約書を作成するメリットは大きいので贈与の際は贈与契約書を作成することをオススメします。