【旗竿地を相続する人必見】旗竿地の評価は3ステップで計算できる!
- 不動産
「相続財産である実家は、旗竿地だ。旗竿地だから、駅に近い立地のいい土地にもかかわらず安く買えた、と昔親父が言っていた。相続の際、旗竿地はどのように評価すればいいのだろうか?」
旗竿地とは、路地のような土地を抜けた先に大きな敷地がある、竿付きの旗のような形の土地のことです。旗竿地は不整形地として評価されるので、一般の整形地よりも相続税評価が下がります。
本記事では、少し複雑な旗竿地の相続税評価の計算の仕方について、3つのステップで簡単にわかり易くご説明します。計算をして他の相続財産などを加味して、相続税がかかりそうな場合は一度専門家に相談するとよいでしょう。
目次
1.旗竿地は路線価を使って3ステップで評価できる
路線価とは、相続税を計算する土地の評価額を計算する際の基準で、国税庁から発表されます。旗竿地の相続税評価をする際はこの路線価を調べ、差し引き算をし、不整地補正の計算の3つのステップで評価します。3つのステップの詳細は2、3、4章でご説明します。
路線価が定められていない場合は、倍率方式という方法がありますが、本記事では評価が複雑となる路線価地域の評価方法をご説明します。
図1:旗竿地を3つのステップで評価する
2.【ステップ1】旗竿地の路線価を調べる
路線価は、相続税がかかる土地の評価額を計算する際の基準です。路線価は、実際売買に用いられる実勢価格よりも20%ほど減額されて設定されています。
路線価は道路ごとに値段がつけられて、道路に面している土地の1㎡当たり(千円単位)の価格を表します。毎年7月に国税庁より発表されます。
2-1.国税庁のホームページで確認する
路線価を調べるには、国税庁のホームページから確認することができます。相続があった年度のページを選んだ上で、該当の都道府県をクリックして、「路線価図・評価倍率表」を開きます。「路線価図」から土地が接している道路の路線価を確認します。
図2:国税庁「路線価」ホームページより
2-2.路線価の見方
該当の土地の地図を選び、接している道路の路線価を確認します。図3は、「200Ⅾ」と記載されています。1㎡あたり、200,000円であることがわかります。
図3:路線価の見方
最期のアルファベットの記号は、土地を賃借指定場合(×借りていた場合)、相続税の評価を軽減する「借地権割合」を表しています。借地でない場合は、3章の計算に移ります。
図4:借地権割合
※路線価について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
3.【ステップ2】差し引き算で旗竿地を評価する
2章で路線価がわかりました。3章では差し引き算で旗竿地の評価をします。旗竿地を含む最小面積の長方形を「想定整形地」と言います。想定整形地の評価対象外の部分を「かげ地」と言います。差し引き算は、「想定整形地」から「かげ地」を差し引いて旗竿地の評価をします。
図5:差し引き算
3-1.奥行価格補正率を使って計算する
土地の奥行きの距離に応じて奥行価格補正率が使えます。それぞれの奥行価格補正率を使って想定整形地とかげ地の評価額の計算をします。
想定整形地の評価額 = 路線価 ×奥行①の 奥行価格補正率 × 面積
かげ地 = 路線価 ×奥行②の 奥行価格補正率 × 面積
表1:奥行価格補正率表 (国税庁のホームページより一部抜粋)
奥行距離(m) | 普通住宅地区(地区区分) |
4未満 | 0.9 |
4以上6未満 | 0.92 |
6以上8未満 | 0.95 |
8以上10未満 | 0.97 |
10以上12未満 | 1.00 |
12以上14未満 |
1.00 |
14以上16未満 | 1.00 |
16以上20未満 | 1.00 |
20以上24未満 | 1.00 |
24以上28未満 | 0.97 |
28以上32未満 | 0.95 |
3-2.計算例
計算例を使って、旗竿地を実際に計算してみましょう。
計算例1)
普通住宅地 旗竿地200㎡ 想定整形地 350㎡ かげ地150㎡
路線価 200千/㎡
図6:旗竿地の計算例1のイメージ図
想定整形地=200(路線価)×0.97(奥行価格補正率①)×350㎡=67,900千円
かげ地= 200(路線価)×1.00(奥行価格補正率②)×150㎡=30,000千円
旗竿地=67,900-30,000=37,900千円
旗竿地の1㎡あたりの評価額=37,900÷200=189.5千円
旗竿地は次に不整形地の補正をして更に評価を下げることができます。不整地の補正については、次の4章でご説明します。
3-3.奥行が短い場合
全体の整形地の奥行距離が短いため奥行価格補正率が1.00未満の数値となる場合には、隣接する整形地の奥行価格補正率もその数値とします。
(×かげ地の奥行距離が短いために、奥行価格補正率が1.00未満になる場合、かげ地の奥行価格補正率は1.0で計算します。)例えば、かげ地奥行5mの場合、奥行価格補正率は0.92ではなく、1.00で計算をします。かげ地の奥行補正率を1.00に補正しない場合、通常の路線価より価格が高くなってしまう不合理が生じます。
計算例2)奥行が短い場合
普通住宅地 旗竿地180㎡ 想定整形地280㎡ かげ地100㎡
路線価 200千/㎡
図7:旗竿地 計算例2の図
想定整形地=200(路線価)×1.00(奥行価格補正率)×280㎡=56,000千円
かげ地= 200(路線価)×1.00(補正後奥行補正率)×100㎡=20,000千円
旗竿地=56,000−20,000=36,000千円
旗竿地の1㎡あたりの評価額=36,000÷180=200千円
4.【ステップ3】不整形地補正で補正して評価する
3章の差し引き算をして計算した1㎡あたりの評価額に、不整形地補正を適用し、最終的な旗竿地の評価額を計算します。
4-1.2つの不整地補正率の低い方で計算する
不整形地補正の計算方法は2つあり、補正率が小さい方で計算します。ただし補正率の最小値は0.6で、0.6未満の補正率でも0.6で計算します。少数点以下第2位未満は切り捨てます。
〈不整地補正の2つの計算方法〉
・不整形地補正率×間口狭小補正率
・間口狭小補正率×奥行長大補正率
不整形地補正率表、間口狭小補正率表、奥行長大補正率表は、国税庁のホームページにあります。
表2:不整地補正率表 国税庁のホームページより
かげ地の割合は、(想定整形地の面積-不整形地の面積)÷想定整形地の面積で計算します。
普通住宅地区の地区区分は表のとおりです。
表3:地積区分表 国税庁のホームページより
地区区分/地積 | A | B | C |
普通住宅地区 | 500㎡未満 | 500㎡以上750㎡未満 | 750㎡以上 |
表4:間口狭小補正率表/ 奥行長大補正率表 国税庁のホームページより
間口狭小補正率は、間口距離より求めます。
奥行長大補正率は、奥行距離を間口距離で割った値を表に当てはめます。
奥行長大補正率=奥行距離÷間口距離
4-2.計算例(3-2)の続き
それでは、各々の補正率表を使って計算例1の続きを計算しましょう。
不整形補正率の求め方
かげ地の割合=(想定整形地の面積−不整形地の面積)÷想定整形地の面積
(350-200)÷350=0.428…
旗竿地の面積は200㎡なので、表3より区分Aになり、表2より不整形補正率は、0.85
間口狭小補正率は、間口が4mなので表4より0.94
奥行長大補正率は、25(奥行距離)÷4(間口距離)=6.25なので、表4から0.90
・不整形地補正率×間口狭小補正率 0.85×0.94=0.799 →0.79
・間口狭小補正率×奥行長大補正率 0.94×0.90=0.846
3-2では、1㎡あたり189.5千円まで求めました。
それに、上記の計算方法の小さい方を選択して、小数第二位まで切り捨てます。
189.5千円×0.79=149.705千円 1㎡当たりの評価額
149.705千円×200㎡=29,941千円 計算例1の旗竿地の評価額
以上、3つのステップで旗竿地の評価額を求めることができました。
5.旗竿地の評価は専門家へ依頼がオススメ
旗竿地の評価は、上記の3つのステップで求めることができますが、整形地の計算よりも複雑です。また間口が2m未満の場合や、いびつな旗竿地の場合はさらに複雑な評価方法となります。上記の計算方法で概算を求めて、相続税がかかりそうな場合は、一度専門家に相談することをオススメします。
6.まとめ
旗竿地の評価は、四角の整形地と比べて、様々な補正率が適用できるので評価が下がります。
本記事では、ステップ1で路線価の求め方、ステップ2で差し引き算による奥行補正率、ステップ3で不整形地補正による補正率について説明し、旗竿地を3つのステップで評価する方法をご説明しました。本記事を参考に旗竿地の評価を計算し、相続税がかかりそうな場合は相続に詳しい税理士へ一度ご相談するとよいでしょう。