相続税申告が心配な方必見!申告必要の判断基準と申告期限・必要書類
- 相続税
「遺産を相続したけれど、相続税申告は必ず必要なのかしら…。」
「相続税申告の必要書類は何を提出したらよいのだろう。」
はじめて相続をご経験された方は、相続税申告が必要かどうかも分からないという方が多いのではないでしょうか。相続税申告が不要な方もいらっしゃいます。令和3年分において、亡くなられた方のうち相続税申告書を提出をしなければならない方の割合は9.3%でした。(令和3年分における相続税の申告事績の概要:国税庁)
相続税申告が必要な方は、亡くなられてから10ヶ月の期限内に、必要書類を正しく揃えて確実に申告しなければなりません。
本記事では、相続税申告が必要かどうかの判断基準と相続税申告期限までの相続手続きの流れ、相続税申告時の必要書類について、詳しくご説明いたします。相続税申告をしない場合のリスクについても参考にしていただき、今すぐ相続税申告の準備に取り掛かって頂きたいと思います。
目次
1.相続税の申告は「遺産総額が基礎控除額を超えるとき」必要
相続税の申告はすべての方に必要なわけではありません。遺産総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超えるときに、相続税の申告が必要になります。(障害者控除や相次相続控除など各種税額控除が適用される場合は申告が不要となるケースがありますが、ここでは省略させていただきます。)
たとえば、お父さまが亡くなられて、お母さまとお子さん2人が相続人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)になります。遺産総額が8,000万円のとき、基礎控除額を超える3,200万円(8,000万円-4,800万円)に対して相続税がかかるということになります。
図1:相続税の基礎控除額の計算式
図2:遺産総額が基礎控除額を超えるときに相続税の申告が必要
※相続税の基礎控除について詳しくはこちらをご覧ください。
ただし、相続税を減額できる特例である「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を適用して遺産総額が基礎控除額以下になった場合は、相続税の納税は不要でも申告は必要です。
図3:相続税を減額できる特例を適用して相続税が0円の場合は申告が必要
配偶者の税額軽減 |
配偶者が相続した財産は、1億6,000万円または配偶者の法定相続分のいずれか大きい金額まで相続税がかからない |
小規模宅地等の特例 |
亡くなられた方の自宅や賃貸アパートなどに使われていた土地は、一定の面積まで土地の評価額を80%または50%減額する |
※相続税が0円でも申告が必要なケースについて詳しくはこちらをご覧ください。
2.相続税申告は亡くなられてから10ヶ月以内
相続税の申告には期限があり、「亡くなられたことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。申告期限が土・日・祝日に当たる場合は、その翌日が期限となります。相続税の納税期限は申告期限と同じ日です。
図4:相続税申告期限は亡くなられたことを知った日の翌日から10ヶ月以内
2-1.亡くなられてから相続税申告までの流れ
亡くなられてから相続税申告までの相続手続きについて、時系列で確認しましょう。相続放棄の期限である3ヶ月以内に相続人を確定し、相続財産を把握して、相続を承認するか放棄するかを判断します。
遺言書がある場合には、遺言書の内容のとおりに遺産分割します。遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議をして遺産分割します。遺産分割協議に期限はありませんが、相続税の申告・納税期限までに終わらせることをおススメします。
図5:亡くなられてから相続税申告までの相続手続きの流れ
※相続手続きの流れについて詳しくはこちらをご覧ください。
2-2.相続税の申告手続きの進め方
相続税の申告は、税務署から納税通知が送付されるわけではありませんので、相続税の申告が必要かどうかをご自身で判断して手続きを行わなくてはなりません。
相続税申告書は、亡くなられた方の住所地の税務署の窓口に持参あるいは郵送によりに提出をします。平成31年1月以降に発生した相続に関して、相続税申告書をe-taxで提出できるようになりました。ただし、税額を自動計算してくれる機能がなくご自身で計算しなければならないため、相続税申告の難しさは変わりません。
3.相続税申告の必要書類
相続税申告の際は、「相続税申告書」と相続税申告書に添付が必要な書類があります。添付書類は、「すべての方に共通して必要な書類」と「申告内容により必要な書類」に分けられます。書類の取得先は、市区町村役場や銀行、証券会社など様々です。亡くなられた方の戸籍謄本の取得など時間がかかることもありますので、早めに準備を進めましょう。
必要書類のチェックリストはこちら→https://www.oag-tax.co.jp/souzokuzei/cms_r6Dxv/wp-content/uploads/2019/04/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88.pdf
3-1.相続税申告書は国税庁ホームページで取得
相続税申告書は、国税庁のホームページでダウンロードあるいは最寄りの税務署窓口で取得することができます。
3-2.相続税申告書に添付する書類
相続税申告書に添付する必要書類のうち「すべての方に共通して必要な書類」は、「身分を証明する書類(表1・表2)」と「財産の分け方に関する書類(表3)」です。
表1:相続人全員の本人確認書類
表2:相続人であることを証明する書類
次に必要な書類は、「財産の分け方に関する書類(表3)」です。遺言書がある場合と、遺言書がなく遺産分割協議書を作成している場合で異なります。遺産分割協議書には相続人全員の印鑑登録証明書の原本添付が必要です。
表3:財産の分け方に関する書類
※法務局の遺言書保管制度を利用している自筆証書遺言は検認不要
「申告内容により必要な書類」は「相続財産に関する書類(表4・表5)」です。相続財産の種類によりご自身に当てはまる書類を取得しましょう。
表4:預貯金、有価証券など動産以外の財産の評価に関する書類
表5:不動産の評価に関する書類
亡くなられた方に負債がある場合等は、「債務や生前贈与財産に関する書類(表6)」を用意します。
表6:債務や生前贈与財産に関する書類
相続税を減額できる特例である「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を適用する場合は、納税の有無にかかわらず、相続税申告が必要となります。「特例の適用を受けるために必要な書類(表7)」を用意します。
表7:特例の適用を受けるために必要な書類
※相続税申告に必要な添付書類について詳しくはこちらをご覧ください。
4.相続税申告をしないとペナルティの税がかかる
相続税申告を必要な方が相続税申告期限までに申告をしない場合、ペナルティの税がかかります。期限後申告をした場合、法定納期限の翌日から納付した日までの日数に応じて、「延滞税」が課されます。申告期限までに申告・納税を行っていない場合は「無申告加算税」が課されます。また、相続財産を故意に隠すなど悪質な場合は、「重加算税」が課されることになります。
ペナルティを避けるためにも、相続税申告期限までに申告を終わらせることが大切です。
表8:相続税申告期限を過ぎたらペナルティの税がかかる
延滞税 |
相続税申告期限を過ぎた場合に、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される税金 |
無申告加算税 |
正当な理由なく申告期限までに申告しなかった場合に課される税金 |
過少申告加算税 |
税務署の指摘により申告額が少なかった際に修正申告する場合に課される税金 |
重加算税 |
財産を意図的に隠ぺい・仮装した場合に課される税金 |
※相続税の無申告について詳しくはこちらをご覧ください。
5.まとめ
相続税申告は、遺産総額が基礎控除額を超えるときに必要です。基礎控除額は法定相続人の数が増えると大きくなります。まずは相続人の確定と遺産総額を把握するために財産の調査をしましょう。
相続税の申告期限は亡くなられてから10ヶ月以内です。相続財産の内容により、申告に必要な添付書類が異なります。多岐にわたる必要書類を集めて、相続税申告をご自分で行なうことは非常に難しいでしょう。相続税申告をしないと、ペナルティの税がかかったり相続税を減額できる特例が適用できなくなるリスクがあります。
相続税申告が必要な方は、相続に強い税理士にご相談されることをおススメ致します。