親から借金した際に贈与と疑われないための7つの対策
- 贈与税
わが家も分譲マンションを購入しよう。そう思い立ったら、通勤に便利なエリア、子どもの教育環境が良いエリアなどなど、吟味してローンのシミュレーションをしてみる。あれ・・・?月々の支払いが高い!!!
そんなときご両親から1,000万円ほど貸してあげる。との言葉をもらった。単純に1,000万円を口座に振り込んでもらって頭金に使い、そのあとは返済可能なときに少しずつ返済していけばよいのだろうか。
契約書も返済ルールも決めていないと贈与税と扱われる場合があります。正しい手順を学んで、正しく親からお金の借入をしましょう。
目次
1.ご両親から借金したのに贈与と疑われる4つのパターン
ご両親にお金の相談をしたところ、贈与はしてくれませんでしたがお金に困っているなら。ということで、貯蓄の一部を崩して貸してあげても良い。という話をもらった場合を考えます。全額を借りられるケースは少ないため銀行からの借入とご両親からの借入の2本の返済が生じて大変となりますが、ご両親への返済は多少の融通がきくかな。と安心感もあります。ただ、親子間の借金はついつい管理も甘くなりがちですので、贈与とみなされないための注意が必要です。
1-1.パターン1:返済が不可能な高額な借金
ご自身の収入から返済が不可能な金額を借り入れてしまうと、ご両親からの贈与が前提であるとみなされてしまいます。毎月の返済額をしっかり決めて返済をしないと借入とはいえないため、借り入れる金額はしっかりと返済計画の立つ金額にすることが大切です。
1-2.パターン2:契約書が無い借金
口約束では、贈与なのか借入なのか分かりません。また返済の契約があるかどうかも第三者からみたら分からないことから、一般的に贈与だと判断される可能性が高いです。借入金額、金利、返済方法などの文書にして、契約書を交わすことが大切です。
1-3.パターン3:無利子の借金
金利をゼロにして貸し出しをした場合には、金利相当分を贈与していることになります。市場の金利よりは優遇された金利を設定することは問題ありませんが、極端に低くならないように注意しましょう。また、金利相当分が贈与となる場合、その年の贈与額と合算して110万円を超える部分には贈与税が発生します。
1-4.パターン4:返済期限が無い借金
返済期限がなくいつでも好きなときに返済できる状態や、年によっては全く返済をしないことがあるなど、本来の借入をしている実態があるのに借入をしている状態とはいえないため、借金の総額が贈与の対象となります。
2.ご両親から借金をする際におこなうべき4つの対策
ご両親から借金をしたのちに、返済能力があって返済期間中に順調に返済をしているなど、借入に対して十分な対応をしているにもかかわらず、贈与だと言われてしまうケースもあります。そうならないためにもしっかりした対策が必要です。
2-1.対策1:契約書(金額・金利・返済方法)の作成をおこなおう
契約書は、「金銭消費貸借契約書(双方が捺印し保管)」または「借用書(借主が作成し貸主のみが保管)」を作成します。今回は双方の食い違いなどトラブルが起きにくい「金銭消費貸借契約書」の作成時に必要な項目・注意点を説明します。
<契約書に記載する9つの項目>
1.契約書の作成日付(年・月・日を必ず)
2.借主の氏名・住所・押印
3.貸主の氏名・住所・押印
4.借入する金額
5.お金を渡した日付
6.返済方法・返済期日
7.利息
8.遅延損害金
9.期限利益の喪失
<契約書作成の注意点>
・決まったフォーマットはありません。上記の9項目を忘れずに記載する。
・契約書は、お金の受領日に交わすまたは、契約後にお金を渡す。
・署名は必ず直筆で行う。印鑑は三文判でも構いませんが、必ず実印とする。
・金額は改ざん防止のため漢数字の大字(壱・弐・参・・・)を仕様した方が良い
・1万円以上の場合は収入印紙が必要
図1:金銭消費貸借契約書のフォーマット
2-2.対策2:返済の証拠を残そう
先に記載したとおり返済の実績が無い場合には、贈与と言われてしまいます。よって手渡しで渡してしまうと返済の証拠が残らないため、ご両親の金融機関の口座へ振り込みをして返済をすることが望ましいです。また、その振込口座は返済に利用するため、必ずご両親が管理する口座であることが必要です。
2-3.対策3:金利は必ずつけよう
先に記載したとおり金利を付けない場合には、金利相当分が贈与として扱われます。よって金利の設定はおこなった方が良いです。ではいくらの金利に設定すれば良いのでしょうか。これは、用途ごとに市場の金利が異なるため、その用途に合わせて設定すればよいです。親子間ですので、市場価格より多少安くても問題はありません。
例:
住宅ローンの場合⇒変動で年0.6~0.8%
車のローンの場合⇒変動で年2.5程度
2-4.対策4:返済が可能な金額を借りよう
金銭消費貸借契約書を結んでも、結果的に返済の実績が無ければ贈与となります。この契約書で結んだ内容が返済可能であるかどう、しっかり吟味をしましょう。ご両親から「返済できるときで良い」と優しい言葉をもらっても、贈与としてとらえられた場合に、大きな税金が発生しますのでしっかり考えましょう。「もし返済ができない場合はしなくても良い」という内容でしたら、3章で説明する贈与税の非課税枠を利用して、税金無しで贈与を受けることが得策です。
3.実は返済不要。というときに活用したい3つの対策
ご両親から借金をする際に、返済をどこまで求められるかに寄りますが、将来を見こして考えた場合に、無税で贈与をしてしまう方法と、借入が必要な分をご両親に持ち分を持っていただき、相続の際に受け取る方法も考えられます。制度を上手に活用しましょう。
3-1.対策5:返済が不要の場合には、贈与税の非課税枠を活用
住宅や車、開業資金などを借りる場合が多いと思います。住宅の場合は特例がありますので特例を活用し、車や開業資金については毎年の非課税枠を活用できないか検討しましょう。
3-1-1.住宅取得資金ならまとまった金額が非課税に!
直系親族(親や祖父母)から住宅を取得するための資金の贈与を受ける場合、一定の金額まで贈与税が非課税となる制度があります。この制度を使うと、一般的にいう毎年の贈与税の非課税枠110万円(暦年贈与)とは別に、ある程度まとまった金額を非課税で支援してもらうことができます。この制度を、「住宅取得資金等の贈与税の非課税」と呼びます。この制度を最大限活用しましょう。
表:住宅取得資金等の贈与税の非課税枠
※住宅資金の贈与について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
3-1-2. 車、開業資金などの場合は、毎年の「110万円の非課税枠」を活用しましょう。
この制度は贈与を受ける側が年間110万円(1月1日~12月31日)までの受け取りであれば非課税というものです。つまり、ご両親から3人の子どもに贈与する場合は、1年であれば110万円×3人=330万円まで、10年間続ければ最大で330万円×10=3,300万円まで現金を贈与しても非課税となります。
仮に500万円を借り入れる場合、すぐに必要であればご自身でローンを組み、年間の支払いが110万円以内であれば、贈与をうけた資金でローンの返済をしていくことも可能です。
図2:暦年贈与の活用
【注意点】
(1)この制度を活用する場合、年間で110万円以下であれば贈与税の申告は不要。
(2)贈与を受けた預金管理は、必ず受け取った本人がおこなう。渡す側が管理している場合には、「名義預金」として対象とならないケースもある。
(3)毎年同時期に同額贈与すると、あらかじめ贈与する額が決まっていたとみなされ、一括贈与して判断されることもありますので、その都度時期や金額の工夫が必要。
3-2.対策6:評価を下げて残りの財産を相続。不動産は持ち分を分けよう
不動産を購入する場合には、不動産の持ち分を分けることができます。例えば夫婦でそれぞれローンを組んで自宅を購入する場合には、50%ずつのローンであれば持ち分は1/2ずつになります。これと同様に4,000万円の自宅を購入する場合には、ご自身が住宅ローンを3,000万円借りて、ご両親に1,000万円の資金を出していただき、自宅の持ち分を25%持ってもらうことができます。
現金で1,000万円の贈与をするより、1,000万円支払って購入した不動産を相続する方が圧倒的に価値を下げることができる。価値を下げた持ち分を相続時に自分のものにします。
ただしデメリットとしては、親にも不動産取得税や固定資産税がかかること、親の相続時には他の相続人との分割協議をおこなう必要がでてくることです。
3-3.対策7:相続時精算課税を活用して、自由な財産を贈与しよう。
この制度は60歳以上のご両親が好きな時に2,500万円までのまとまった財産を20歳以上の子どもに贈与しても贈与税がゼロとなる制度です。自由な目的で利用できる財産をもらう場合には贈与税がかかりますが、この制度を利用すると複数年に渡って贈与を受けた場合も含めて2,500万円までは税金はかかりません。2,500万円を超えた分に関しては、一律で20%の贈与税が発生します。
ご両親が60歳以上というポイントがクリアできるかどうかが、活用できるかどうかの境目となります。
4.まとめ
ご両親から借入をするべきか、思い切って贈与をうけるか、いずれにしてもご両親の財布や口座からからお金を取り出して使用する場合には、最初にはっきりと返済について決めておくことをお勧めします。
家族間だからこそ、お金の貸し借りについていい加減な話を進めるとトラブルに発展しやすくなります。
ご両親から借金をする場合には、「金銭消費貸借契約書」の作成からはじまり、しっかりと返済までおこないましょう。贈与税だと指摘されしまうと、意外に大きな税金を納めることになります。(1,200万円の贈与に対して、207万円の贈与が発生)
相続をみこして、お金の借入ではなく贈与となるよう、非課税枠の話もしながら説得してみてください。