相続放棄申述受理証明書が必要な3つのケースと申請方法

  • 相続手続き

亡くなられたお父さまに多額の借金があり、債権者から督促がきてお困りのことと思います。

「相続放棄したことを証明して債権者の請求から免れたい。」とお考えではないでしょうか。

相続放棄申述受理証明書は、相続放棄の申し出が受理されたことを第三者に証明する書類です。相続放棄すると家庭裁判所から郵送される書類ではなく、ご自分で申請して取得する必要があります。

本記事では、相続放棄申述受理証明書が必要なケースや取得時の必要書類など申請方法を詳しくご説明いたします。

1.相続放棄申述受理証明書は相続放棄したことを証明する書類

相続放棄申述受理証明書とは相続放棄したことを債権者など第三者に証明する書類です。

相続放棄申述受理証明書を取得する流れは、①相続放棄を家庭裁判所に申述して受理されると②相続放棄申述受理通知書が郵送されます。③相続放棄申述受理証明書は相続放棄の証明が必要なときに請求して取得します。

①相続放棄の申立て(STEP1~STEP4)
②相続放棄申述受理通知書の受領(STEP5)
③相続放棄申述受理証明書の請求、取得

図1:相続放棄が認められるまでの流れ

※相続放棄の手続きについて詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

2.相続放棄申述受理証明書と相続放棄申述受理通知書の違い

「相続放棄申述受理通知書」は家庭裁判所が相続放棄を受理したことを相続放棄の申述をした人に通知する書類です。「相続放棄申述受理証明書」は相続放棄をしたことを第三者に証明するための書類となります。

「相続放棄申述受理通知書」は必ず発行されますが1枚のみとなり再発行されません。相続放棄の証明として「相続放棄申述受理通知書」のコピーで良いと言われる場合も多いです。「相続放棄申述受理証明書」は求められた場合に申請して提出をします。取得枚数の制限はありません。

図2:相続放棄申述受理通知書の例
SO0105_01

図3:相続放棄申述受理証明書の例
SO0105_02

3.相続放棄申述受理証明書が必要となる3つのケース

「相続放棄申述受理証明書」が必要となる主な3つのケースをご紹介します。

3-1. 債権者に相続放棄を証明するとき

債権者から相続放棄した証明書を提出してほしいと言われることがあります。この場合には「相続放棄申述受理証明書」が必要となりますが、通常ご自分で相続放棄申述受理証明書を取り寄せる必要はありません

債権者は利害関係人として「相続放棄申述受理証明書」の交付申請ができますので、その旨を伝えて債権者自身で取得してもらいます。「相続放棄申述受理通知書」を確認して、事件番号・受理年月日を知らせればよいということになります。

3-2. 他の相続人が相続登記をするとき

相続登記とは、不動産の所有者が亡くなられたときに不動産の名義を相続人に変更する手続きです。

相続放棄申述受理証明書は、相続放棄をしない相続人が不動産の相続登記をする際に、相続人の中に相続放棄した人がいることを証明するために必要です。ただし「相続放棄申述受理通知書」で申請することが認められていますので相続登記のためだけに証明書を取得する必要はありません。

登記申請に添付する書類は原本添付が原則です。相続放棄申述受理通知書で申請する場合は原本還付を依頼しましょう。

3-3. 他の相続人が金融機関の相続手続きをするとき

相続放棄をしない相続人がいて、相続手続きで亡くなられた方の銀行口座を解約または名義変更するときに、相続人の中に相続放棄をした人がいることを証明するために「相続放棄申述受理証明書」の提出が必要になることがあります。

4.相続放棄申述受理証明書の申請方法

相続放棄申述受理証明書は、「相続放棄申述受理証明書交付申請書」に必要書類を添付して相続放棄を受理した家庭裁判所(亡くなられた方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)に提出します。裁判所の窓口で直接、あるいは郵送で申請することができます。

家庭裁判所により申請書の様式が異なったり、必要書類にも多少の違いがありますので、申請先裁判所に確認しましょう。

4-1.取得できる人

相続放棄申述受理証明書は、相続放棄の申述をしたご本人と利害関係人が交付申請できます。 利害関係人とは、債権者、相続放棄をしていない他の相続人、受遺者などが該当します。

4-2.必要書類と費用

相続放棄を申述した方が申請する場合に必要な書類はこちらです。相続放棄申述受理証明申請書は裁判所HPよりダウンロードすることができます。

裁判所のHPはこちら→https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/syosiki03/index.html

1. 相続放棄申述受理証明申請書
2. 証明書発行手数料 1通につき150円分の収入印紙
3. 身分証明書(運転免許証、健康保険証など)と認印
4. 相続放棄申述受理通知書
5. 返信用郵便切手と返信用封筒(郵送申請の場合)

※氏名・住所が申述時と異なる場合は、戸籍謄本・住民票等が必要です。

利害関係人が申請する場合は、利害関係を証明する書類が必要になります。詳細な書類については個々により異なりますので、事前に申請先裁判所にご確認いただくことをおススメいたします。

1. 相続放棄申述受理証明申請書
2. 証明書発行手数料 1通につき150円分の収入印紙
3. 身分証明書(運転免許証、健康保険証など)と認印
4. 利害関係を証明する書類(金銭消費貸借契約書、訴状、競売申立書、競売開始決定、債務名義等の各写し、担保権が記載された不動産登記簿謄本、その他債権の存在を証する書面など)
5. 返信用郵便切手と返信用封筒(郵送申請の場合)

4-3.申請期限は30年

裁判所の相続放棄に関する書類の保存期間は30年です。30年を過ぎると、相続放棄の申述をしたという情報の照会と「相続放棄申述受理証明書」の発行ができなくなります。債権の時効は5~10年なので債権者に提出する可能性はありませんが早めの申請をおススメいたします。

5.相続放棄申述受理通知書を紛失したら申述の照会が必要

「相続放棄申述受理証明書」の取得には事件番号が必要です。事件番号は裁判所に申立て手続きをした時に付与され「相続放棄申述受理通知書」に記載されます。通知書を失くしてしまった場合は、事件番号、受理年月日を確認する必要がありますので、証明書の申請の前に 「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」をおこないましょう。相続人が申請する場合の流れをご説明いたします。

1.照会の申請ができる方 相続人または亡くなられた方の利害関係人(債権者等)
2.申立先 亡くなられた方の最後の住所地の家庭裁判所
3.手数料 無料
4.照会の申請にあたり必要な書類 照会申請書と被相続人等目録
5.必要添付書類[相続人が申請する場合] ・亡くなられた方の住民票の除票(最後の住所がわかるもの)
・亡くなられた方の発行から3か月以内の戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(死亡の旨の記載のあるもの)
・照会者の戸籍謄本(照会者と被相続人との関係がわかるもの)
・照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)
・返信用封筒と返信用切手
・相続関係図

相続関係図とは亡くなられた方とすべての相続人との関係を図式化したものです。手書きのもので結構です。相続関係図を添付することで、申請のときに提出した戸籍謄本などの原本を返してもらえます。

利害関係人からの照会の場合は「利害関係を証明する書面(金銭消費貸借契約など)」も必要です。

6.まとめ

「相続放棄申述受理証明書」は提出を求められたときに取得する書類です。利用する機会は多くないかもしれませんが、相続放棄をされた方は「相続放棄申述受理証明書」と「相続放棄申述受理通知書」の違いや必要となるケースをおさえておきましょう。

相続放棄したのに債務の返済を求められた場合は「相続放棄申述受理証明書」を提出することで、相続放棄をしたことを証明することができます。また、相続放棄をしていない他の相続人が相続登記や金融機関における相続手続きの際に相続放棄した方の協力を得られないために取得する場合もあると思います。

相続放棄申述受理証明書を取得すべきか迷っている方や取得を依頼したい方は相続に強い専門家にご相談されることをおススメいたします。

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