相続発生!親の死亡で受け取れるお金の申請方法と申請期限
- 相続手続き
「お父さんが亡くなって、お母さんのこれからの生活が心配だわ・・・しばらくは葬儀や入院時にかかった費用の支払いでお金がかかるし・・・たしか、遺族年金がもらえるはずだと思うけれど、お母さんに手続きできるかしら。私もよく分からないから調べないと・・・」
大黒柱であったお父さまが亡くなられた場合、残されたご家族の生活を守るためには、相続の手続きをできるだけ速やかに、効率よく進めたいと思いますよね。相続発生直後は、様々な支払いなどで、何かとお金がかかるものですし、その都度、相続人の方が立て替えているのでは、負担が大きくなりますよね。
相続財産を支払いに充てるためには、(遺言書がなければ)まずは遺産分割協議を整え、手続きに必要な書類を揃えて相続手続きをおこなうことが原則であって、解約までには数ヶ月の時間を要してしまいます。2019年の民法改正により、分割協議が整う前であっても、ある一定の金額までを「仮払い」で受け取れるようになりましたが(詳しくは3章)、相続では、速やかに申請手続きをすれば、受け取れる「給付金」などもあります。このお金は、自動的に受け取れるものではなく、申請手続きが必要です。「申請しなければ、いつまでも受け取れないお金」となりますのでご注意ください!
本記事では、親御さんが亡くなられたときに受け取ることのできるお金と、その申請方法についてまとめました。期限が定められている手続きもありますのですぐに確認してみましょう!
目次
1.親が亡くなったときに受け取れるお金には「申請」が必要
お父さまやお母さまが亡くなられてしまったときに、遺されたご家族(相続人)がすぐに生活で困ることがないように、公的制度(健康保険や年金)から給付され、受け取ることのできるお金があります。また、亡くなられた方の所得税や、すでに支払い済みの生命保険料などの還付が受けられる場合もあります。いずれも決められた期限内に申請手続きをおこなう必要があります。
図1:親が亡くなったときに受け取るお金の申請期限
2.親が亡くなったときに受け取れるお金の種類と申請手続き
親御さんが亡くなられたときに受け取れる可能性があるお金(給付金)の種類を以下となります。すべてが受け取れるわけではなく、亡くなられた方の年齢や家族構成などにより受け取れないものもあります。詳しくは、各章を読み進めて下さい。
【親が亡くなったときに受け取れるお金(給付金)】
①未支給年金(2-1:本来は、亡くなられた方が受け取るはずの未支給年金があった場合)
②遺族年金
(2-2:亡くなられた方が国民年金、または厚生年金の被保険者であり、受給対象者に該当した場合)
③児童扶養手当(2-3:ひとり親となったお子さんがいた場合)
④葬祭費・埋葬料
(2-4:亡くなられた方が国民健康保険、もしくは健康保険に加入していた場合、葬儀を執り行った方に対して)
⑤高額療養費(2-5:保険適用分の医療費が自己負担限度額を超えていた場合)
⑥所得税の還付金(2-6:亡くなられた方が個人事業主、または不動産収入などがあった場合)
⑦健康保険料の還付金(2-7:徴収されないはずの保険料を支払ってしまった場合)
2-1.未支給年金
亡くなられた方が、すでに年金を受給されていた場合には、受給停止の手続きを速やかにしなくてはなりません。同時に未支給分(本来受け取るはずの年金)の請求が必要です。
年金は、偶数月の15日に、前2ヶ月分の年金がまとめて支払われ、亡くなられた月分までを受け取ることができます。たとえば、8・9月分の年金は、通常「10月15日」に支給されます。もし、9月に亡くなられた場合は、遺族の方(受給条件あり)が故人に変わり、この2ヶ月分の年金を受け取ることができます。
未支給年金を受給できるのは、亡くなられた方と生計を同じくしていた遺族となり、①配偶者②子③父母④孫⑤祖父母⑥兄弟姉妹⑦それ以外の3親等内の親族の順番になります。
表1:未支給年金の請求手続き
請求先 |
申請書類 |
必要書類 |
年金事務所 |
未支給【年金・保険給付】請求書 |
①亡くなられた方の年金証書 |
2-2.遺族年金
遺族年金は、亡くなられた方が「国民年金、または厚生年金保険の被保険者であった場合」に、その方によって生計を維持されていたご家族が受け取ることができるお金です。遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、それぞれ受給要件と支給対象者が定められています。
2-2-1.遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金加入中の方が亡くなられたとき、その方により生計を維持されていた18歳到達年度の末日までにある子(障害の状態にある場合には20歳未満)のいる配偶者、または子が受け取ることができるお金です。
遺族基礎年金の額については、「配偶者とお子さんが受給権者」の場合と、「お子さんのみが受給権者」の場合では異なりますので、分けてご説明いたします。
【年金額(令和3年度の場合)】
①配偶者に支給する遺族基礎年金の額
780,900円+子の加算額
第一子・第二子の子の加算額:224,700円
第三子以降の子の加算額:74,900円
②お子さんのみに支給する遺族基礎年金の額
780,900円+第2子以降の子の加算額
第一子のみ:780,900円
第一子と第二子:780,900円+第二子の子の加算額224,700円
(この金額を子2人で割った金額がひとり当たりの金額となります)
第一子と第二子と第三子:
780,900円+第二子の子の加算額224,700円+第三子以降の子の加算額74,900円
(この金額を子の数で割った金額がひとり当たりの金額となります)
2-2-2.遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金保険に加入中の方が亡くなられたとき、その方により生計を維持されていたご家族(①妻・子・55歳以上の夫②55歳以上の父母③孫④55歳以上の祖父母の順番)が受け取ることができます。遺族基礎年金と併せて受け取ることができます。
【年金額】
亡くなられた方の収入や保険料の納付月数などにより金額が異なります。
2-3.児童扶養手当
父または母が亡くなられた「ひとり親家庭」のお子さんのために、地方自治体から児童扶養手当が支給されます。支給対象者は、日本国内に住所があり、18歳の誕生日の属する年度末までの子、もしくは20歳未満で障害(1級・2級)のある子を監護している父、母、もしくは父母に代わって子を養育している方となります。
受給には一定の所得制限があります。お住まいの市区町村役場の窓口に認定請求をおこない、審査に通ると受給することができます。お子さんの対象年齢が終わるまでは請求できます。
図2:ひとり親家庭は、忘れずに児童扶養手当の支給申請をおこなう!
遺族年金を受給していても、その額が児童扶養手当の額 より低い場合には、差額分の手当が受給できます。
お子さんが1人の場合、児童扶養手当は月額43,160円(令和3年度:全額支給の場合)なので、年金等の月額がこの額より低い場合に差額を受給できるということになります。
2-4.葬祭費・埋葬料
亡くなられた方が、国民健康保険 もしくは後期高齢者医療制度に加入していた場合は葬祭費、会社員の方などで国民健康保険以外の健康保険に加入していた場合は埋葬料が、葬儀を執り行った方に対して支給されます。申請期限は「2年以内」となっており、期限を過ぎると給付金を受け取ることはできません。健康保険の資格喪失届と一緒に申請することをお勧めいたします。
表2:加入する健康保険と給付金額・申請先・申請期限
加入先 |
給付金の金額 |
申請先 |
申請期限 |
|
葬祭費 |
国民健康保険 |
3~7万円 |
亡くなられた方の市区町村役場の窓口 |
葬儀をおこなった日の翌日から2年以内 |
埋葬料 |
健康保険組合 |
5万円 |
亡くなられた方の勤務先の健康保険組合/協会けんぽ |
亡くなられた日の翌日から2年以内 |
図3:葬祭費の申請は資格喪失届を提出するときに一緒におこなうと忘れない!
※葬祭費・埋葬料について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
2-5.高額療養費
高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額となった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、払い戻される制度です。
自己負担限度額は、年齢や所得に応じて定められています。ご本人が亡くなられた後にご家族が変わって請求することもできますので、医療費が高額だったときは速やかに申請しましょう。
申請方法は、国民健康保険の場合は亡くなられた方のご自宅宛に、診療月から約3ヶ月後くらいに「高額療養費支給申請書」が送付されます。健康保険組合の場合は、組合により異なります。自動的に払い戻されることもあるようです。必要な添付書類なども含め、一度確認されるとよいでしょう。
表3:高額療養費の申請手続き
加入先 |
申請先 |
申請書類 |
必要添付書類 |
申請期限 |
国民健康保険 |
亡くなられた方の市区町村役場の窓口 |
診療月から約3か月後に「高額療養費支給申請書」が送付される |
①高額療養費支給申請書 |
診療月翌月~2年以内 |
健康保険組合 |
亡くなられた方の勤務先の健康保険組合 |
健康保険組合のHPからダウンロード |
①高額療養費支給申請書 |
診療月翌月~2年以内 |
2-6.所得税の還付金
亡くなられた方が個人で事業をおこなっていたり、不動産収入などがあった場合は、相続人が故人に代わりに所得税の申告をします。(準確定申告という)申告期限は、亡くなられたことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。
高額な医療費を支払っていたり、ふるさと納税をおこなっていた場合などは、還付金が受けられる可能性があります。還付金のみの申告期限は5年です。
図4:準確定申告をすると還付金が受け取れるケース
※準確定申告について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
2-7.健康保険料の還付金
健康保険料は月単位で計算され、前月分の保険料が差し引かれる仕組みです。月の途中で亡くなられた場合、その月分の保険料は徴収されません。資格喪失手続きが間に合わず健康保険料が差し引かれた場合は、健康保険組合から還付通知書が送付されます。
国民健康保険、もしくは後期高齢者医療制度に加入されていた場合は、亡くなられた方の市区町村役場に、健康保険組合に加入していた場合は亡くなられた方の勤務先の健康保険組合に還付申請をします。
申請期限は2年となっており、期限を過ぎると時効により還付されなくなりますのでご注意ください。
3.亡くなった親のお金(相続財産)を使う場合の注意点
亡くなられた方のお金(相続財産)は、亡くなられた時点では、相続人全員の共有財産となり、遺産分割の対象となります。特定の相続人が無断で引き出すことを防ぐために、金融機関は亡くなられた時点で口座を凍結するのが、原則となります。
亡くなられた方が所有されていたお金(相続財産)を使う場合の注意点についてご説明いたします。
3-1.亡くなった親のお金は遺産分割が終わるまで自由に使えない
亡くなった親のお金は相続財産なので、遺産分割協議が成立し、引き継ぐ相続人が決定するまでは、原則、自由に使うことはできません。トラブルを避けるためにも、ほかの相続人の同意を得ずに亡くなった親のお金を引き出したり、使ったりするのは絶対にやめましょう。やむを得ない理由がある場合は、使用目的や支払い明細などをきちんと残しておきましょう。
図5:遺産分割協議が整うまでは亡くなった親のお金を勝手に使うことはできない
3-2.銀行口座は凍結され払戻しができなくなる
金融機関は、口座名義人が亡くなられたことを把握すると口座を凍結(停止)し、預貯金の出入金ができなくなります。葬儀費用や当座の生活費などに充てるお金がどうしても必要な場合は、「相続した預貯金の仮払い制度」の利用を検討しましょう。きちんと手続きをすれば、最大150万円まで(同一の金融機関ごと)の預金を引き出すことが可能です。
図6:亡くなった親の口座は凍結され預金の引き出しができなくなる
※預金の相続について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
※分割協議前の仮払い制度について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
3-3.親のお金を使うと相続放棄できなくなる
万が一、亡くなった親に多額の借金があった場合、相続財産となる親の預金を使ってしまうと相続放棄できなくなります。「相続することを承認した(単純承認)」とみなされてしまうからです。やむを得ない事情があっても、お金を引き出し、使ってしまうと相続放棄が認められない可能性がありますので十分注意してください。
親が亡くなられたときに受け取れるお金(2章)の中でも相続財産となるものは相続放棄をするときに受け取ってはいけません。
【相続放棄をしても受け取れるお金】
・未支給年金
・遺族年金
・葬祭費・埋葬料
【相続放棄をすると(するならば)受け取れないお金】
・高額療養費の還付金
・健康保険料の還付金
・所得税の還付金
※相続放棄について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
4.まとめ
親御さんが亡くなったときに受け取れるお金について、ご理解いただけましたか。生活を支えていた方が亡くなられたら、経済的な負担を軽減するためにも給付金制度は、忘れずに申請して受け取りたいですよね。
給付金を受け取るには、申請期限に注意して、速やかに手続きをしてください。ご自身がいくら受け取れるのか、また申請に必要な書類など、詳しいことは申請先である市区町村役場の窓口、健康保険組合、年金事務所などにご相談されることをお勧めいたします。
OAGでは、給付金申請のお手続きなどを含め、あらゆる遺産整理、相続手続きのサポートができますので、ご不安な点があれば、まずはお気軽にご相談いただければと思います。