銀行口座を死亡後そのまま使ってはダメな理由と口座凍結への対処法

  • 相続手続き

「亡くなったお父さんの銀行口座から葬儀費用と入院費を引き出してしまった。」
「銀行口座が凍結されたら生活費はどうしたらいいの?」

お父さまが亡くなられたら、すぐに銀行口座が凍結されて預金の引き出しができなくなるのではとご心配のことでしょう。亡くなられた方の預金を葬儀費用や当面必要な生活費に充てたいから、銀行口座をそのままにしたいとお考えかもしれません。

亡くなられた方の銀行口座をそのままにしておいても法的なペナルティはありませんが、円滑に相続手続きができなくなるリスクがあるためおススメできません。                                  

本記事では、亡くなられた方の銀行口座をそのまま使い続けてはいけない理由と口座凍結の注意点を解説いたします。銀行口座の払い戻し(解約)手続きについても参考にしていただければと思います。

1.銀行口座は死亡後そのままにしてもペナルティはない

銀行口座は、払い戻しや名義変更などの相続手続きをいつまでにしなければならないという期限はありません。亡くなられた後そのままにしていてもペナルティはありませんが、相続には期限のある手続きがあります。

特に注意すべき期限は、亡くなられてから3ヶ月以内の「相続放棄」亡くなられてから10ヶ月以内の「相続税申告」です。亡くなられた方の銀行口座から預金を引き出してしまうと、相続放棄ができなくなる可能性があります(2-2参照)。

また、相続税の申告が必要な方は、相続財産の価値(評価額)を調べるために銀行から「残高証明書」を取得する必要があります。相続税の申告をしなかったり遅れたりするとペナルティの税がかかることがありますので注意が必要です。

図1:銀行の相続手続きには期限がない

※遺産相続の期限について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

2.亡くなられた方の銀行口座を使い続けてはいけない

口座が凍結されるまでは(3章参照)、亡くなられた方のキャッシュカードと暗証番号が分かれば、預金を引き出すことができますよね。ただし相続人が複数いる場合は、預金を勝手に引き出してはいけません。

本章では、亡くなられた方の口座の取り扱いについてご説明いたします。

2-1.亡くなられた方の預金は相続人全員の共有財産

亡くなられた方の預金は相続財産ですので、相続人全員の共有財産となります。預金を引き出す場合は、原則として相続人全員の同意を得なくてはなりません。他の相続人が知らない間に預金を引き出してしまうとトラブルになるリスクもあります。

図2:亡くなられた方の預金は相続人全員の共有財産となる

2-2.自分のために預金を使うと相続放棄ができなくなる

銀行口座の預金を引き出し、ご自身のために使うと「相続することを承認した(単純承認)」とみなされます。単純承認をすると相続放棄ができなくなりますので、相続財産を調査、確定して引き継ぐことを決めるまでは、亡くなられた方の預金を使わない方がよいでしょう。

葬儀費用であっても、相続財産で支払ってしまう相続放棄ができなくなる可能性が非常に高いので注意が必要です。

※単純承認について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

3.銀行に亡くなられたことを伝えると口座は凍結される

通常は、相続人が銀行に亡くなられたことを伝えたときに口座が凍結されます。死亡届を出すと市町村役場から銀行に連絡が入って自動的に口座が凍結される、あるいは銀行間で亡くなられた情報を共有しているということはありません。

亡くなられた方の預金は相続人全員の共有財産となりますので、預金をどのように遺産分割するかが決まり、銀行口座の凍結解除の手続きをおこなうまでは、出入金は停止されます。

図3:遺産分割協議は口座凍結後におこなう

3-1.口座凍結前に公共料金等の引き落とし口座の変更が必要

亡くなられたお父さまの銀行口座を公共料金やクレジットカードの引き落とし口座として使っている場合は、すぐに口座凍結してしまうと支払いが滞ってしまいますよね。各種契約状況をひとつひとつ確認してから、口座の名義を行わなければなりません。

図4:口座名義は速やかに変更しておく

口座名義は速やかに変更しておく

※口座凍結について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

3-2.早急にお金が必要なときは「相続預金の仮払い制度」を利用

「相続預金の仮払い制度」とは、遺産分割前であっても相続人が葬儀費用や生活費を必要とする場合には、一定の金額であれば亡くなられた方名義の預金の払い戻しを受けることができるという制度です。他の相続人の同意を得ずに、銀行ごとに相続人おひとりにつき150万円までの範囲で払い戻しを受けることができます。

図5:遺産分割前でも「相続預金の仮払い制度」を利用すれば一定金額まで払い戻しができる

※遺産分割前の相続預金の仮払い制度について詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

4.銀行口座の相続手続き3ステップ

銀行から預金の払い戻しをおこなう手続きを3ステップでご説明いたします。相続手続きのお申し出から振込まで約1ヶ月かかります。

ステップ①:必要書類を収集する(表1参照)
ステップ②:銀行所定の「相続届」を記入して提出
ステップ③:口座が解約され払い戻しが完了

図6:銀行から払い戻しを受けるまでの3ステップ

表1:相続手続きに必要な書類の例相続手続きに必要な書類の例

※預金の相続手続きについて詳しくはこちらをご覧ください。(当サイト内)

5.銀行口座の預金が少額のときはそのままで良い

亡くなられた方の預金が少額で、必要書類の取得費や交通費よりマイナスになってしまう場合は、相続手続きをせずにそのままにしておいても問題はありません。

ただし、銀行口座は死亡後そのままにしておくと休眠預金になります。2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引のない預金等(休眠預金)は、預金保険機構に移管された後、民間公益活動に活用されます。預金が取り上げられて引き出せなくなるのではないかとご不安かもしれませんが、引き続き取引銀行で引き出すことができますので、相続手続きを進めることは可能です。

6.まとめ

銀行の相続手続きには期限がないので、亡くなられた後に銀行口座をそのままにしておいてもペナルティはありません。しかし、亡くなられた方の預金は相続人全員の相続財産となりますので、他の相続人の同意を得ずに使ってしまうと、トラブルになったり相続放棄ができなくなる可能性がありますので注意が必要です。

亡くなられた方の公共料金等の引き落とし口座を名義変更した後、速やかに口座を凍結しましょう。相続財産を確定し遺産分割協議をして預金を引き継ぐ相続人が決まったら、口座凍結を解除して相続手続きを進めることができます。

他の相続人の同意を得ずに口座から引き出してしまった場合などは、相続専門の税理士に相談しましょう。

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