残高証明書が相続で必要なケースとは?取得する方法と3つの注意点

  • 相続

「相続手続きのために、亡くなった父の預金を確認していたら、相続人の姉が、残高証明書を取得した方が良いと言ってきたが、相続の手続きをするのに通帳があるだけではだめなのだろうか?残高証明書の取得って、どうすればよいのだろうか?

亡くなられた方の金融機関の相続手続きを進めていく中で、他の相続人の方や、相続税申告を依頼した税理士から、残高証明書を取得するように言われ、残高証明書は絶対に必要な書類なのだろうか、どのように取得すればよいのだろうか?という疑問点を解決したいと思っていらっしゃるのではないでしょうか。

残高証明書とは、証明したい日付の口座残高についてその金額で誤りがない」ということを金融機関が証明する書類です。相続発生日時点の正確な残高を証明できる書類なので取得しておくと安心です。

本記事では、残高証明書の提出が必要となるケースやその理由、残高証明書を取得する方法、取得する際の注意点などを順にご説明していきます。相続手続きの一助になれば幸いです。

1.相続で必要な残高証明書は「相続発生日時点の残高」が証明されたもの

残高証明書とは、証明したい日付の正確な残高を公に証明できる書類です。相続の場合は、相続発生日(亡くなられた日)の残高を証明したものが必要となります。

残高証明書は「残高のみ」が証明され、その日までの入出金の記録(履歴)などが、詳しく記載されるわけではありません。相続において、金融資産の残高を正しく把握することはとても大事なことですが、手続きをスムーズに進めるためには、過去の履歴が明確に証明できる通帳を揃えておくことも必要です。

相続手続きを進める上で、残高証明書の取得は必須ではない場合もありますが、通帳自体を紛失していた場合や、近年普及しているネット銀行(インターネットバンキング)の利用で通帳は存在せず、ログイン情報もわからないため、残高の確認ができないといった場合には、残高証明書などの取得は必要でしょう。

また、投資信託や有価証券などの金融資産についても、相続発生日時点の取引情報の確認が必要です。借入金があった場合も借入金残高を正確に把握するためは残高証明書を取得されることをお勧め致します。

1:残高証明書の見本

2.相続で残高証明書が必要になる主な2つの場面

残高証明書は必ず必要ではないとご説明しましたが、残高証明書を取得した方がよいケースがあります。それは相続人同士でどのように相続財産を分割するのか話し合う遺産分割協議また相続税の申告をするときです。

2:残高証明書が必要となる2つの場面

2-1. 遺産分割協議をするとき:相続人間で残高証明書を共有する

相続人同士で、相続財産をどのように分けるのかを話し合う遺産分割協議では、亡くなられた日時点で財産がどのくらい残っていたのかを明確にする必要があります。残高証明書は、金融機関が残高を証明している書類なので、金額を疑う余地はありません。

遺産分割協議において、相続財産の内容を明確に示さないことは、揉め事に発展する一番の要因になります。金額がさほど高くなければ取得する必要はないといえますが、ある一定の金額を証明するのであれば、残高証明書を取得しておく方が信頼性は高まり、相続トラブルを未然に防げる可能性があります。

遺産分割協議をスムーズに整えるために、金融資産に関しては、履歴が分かる通帳とともに、残高証明書を相続人間に開示し、共有することがポイントになります。

 

2-2. 相続税申告をするとき:税務署に残高証明書を提出する

亡くなられた方の残された財産が、相続税法で定められた基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えていた場合、財産を引き継ぐ相続人等は、相続税の申告をしなければなりません。

相続税の申告をおこなう際に、金融資産の残高を証明する書類として、残高証明書を添付する必要があります。金額がとても少ない場合には、残高証明書を取得せずに、通帳のコピーを添付することなどで構わない場合もあります。

残高証明書を取得するには、金融機関に依頼してから、1週間から10日間ほどの日数を要しますので、申告期限の直前になって慌てることがないように、余裕を持って準備されることをお勧め致します。また、定期預金などの場合は、利息の金額分まで証明してもらう必要があります。詳しくは、4章の3でご説明いたします。

3.残高証明書を取得する方法

残高証明書は、お取引のある金融機関の窓口、もしくはカスタマーセンターなどを通じて、手続きをおこないます。事前に必要な書類を揃えてから手続きを進めるととてもスムーズです。

3-1.申請先は各金融機関窓口(カスタマーセンター)へ

残高証明書は、口座を開設された支店などに、直接依頼していただくと最速での取得が可能となります。開設された支店が遠方などの理由がある場合は、同じ金融機関であれば、全国どこの支店においても依頼を受け付けてもらえますので安心です。違う支店に依頼した場合、取得までにより時間がかかる可能性がありますのでご注意ください。

3-2. 申請できる人は相続人もしくは委任された方

残高証明書は相続人であることが証明できれば、お1人で申請することが可能です。相続人全員の同意、または委任状などは必要ありません

相続人の方のご意向であれば、代理人の方に依頼することも可能です。代理人になれる方は、金融機関によっては、親戚の範囲や士業の方だけに限るなどの制約がありますので、事前に確認されることをお勧め致します。代理人の方に依頼する場合は、依頼する相続人の方の実印を押した委任状が必要となります。

3:一番良いのは相続人ご自身が口座開設窓口へいく

3-3. 必要書類

残高証明書取得を申請する際に、金融機関で提出を求められる書類は、以下のとおりとなります。

【必要書類】

亡くなられた方の除籍謄本(ご逝去の事実を確認するため)

窓口に行かれる相続人の方の戸籍謄本(相続人であることを証明するため)

 ※①②は、法定相続情報一覧図を提出する場合は不要です。

 ※は、法定相続人を確認するために「亡くなられた方の出生からご逝去までのつながったすべての戸籍謄本」が求められる場合があります。

 ※は、相続人全員の戸籍謄本の提出が求められる場合があります。

窓口に行かれる相続人の方の印鑑証明書(発行後6ヶ月以内)と実印

 ※亡くなられた方に借入金がある場合、発行後3ヶ月以内の印鑑証明書が必要です。

窓口に行かれる方の本人確認書類(運転免許証などの顔写真付の証明書)

残高証明書発行依頼書(事前に入手して必要事項を記載しておくとスムーズです。)

代理人に依頼される場合は、上記の他に、依頼する相続人の実印を押した手書きの委任状と、代理人の方の本人確認書が必要となります。

4:残高証明書発行依頼書の見本

3-4.手数料は11,000円弱から数千円

残高証明書を取得する際には1通単位で手数料がかかり、その金額は金融機関によって異なります。大よそ700~800円程度、海外の口座などの場合は、数千円かかる場合もあります。

残高証明書は支店ごとに発行されます。開設している口座数が多いと、手数料だけで思わぬ出費になり兼ねません。取得する際は、可能であれば、相続人同士で相談の上、通帳の履歴だけで十分確認できるという場合は、無理に取得する必要はないでしょう。相続税の申告用で必要な場合などは、税理士などの専門家に相談されてからご判断ください。

3-5. 発行までに約1週間~10日間かかる

残高証明書は依頼してから、約1週間から10日間ほどで発行されます。原則、金融機関より郵送で送られてきます。一部の銀行では、提出書類に不備がなければ、窓口で即日発行してくれる場合もあります。

4.残高証明書を取得する際に注意すべき3つのこと

日常生活において、あまり取得する機会のない残高証明書ですが、相続を理由に残高証明書を取得する場合、特に注意すべき点が3つあります。煩雑な相続手続きを進める中で、慌てて手続きしていると、思わぬミスでせっかく取得した証明書を無駄にしてしまうこともありますので、十分注意して申請するようにしてください。

4-1. 相続を理由に残高証明書を取得すると口座は凍結される

残高証明書通常、名義人本人が取得するものです。相続を理由に、相続人が残高証明書の発行依頼をするということは、口座の名義人が亡くなられたことを金融機関に伝えることになりますので、依頼したその時点で口座は完全に凍結され、入出金が一切できなくなります

もちろん、ほかの相続人の方も、勝手に預金を引き出すことができなくなりますので、相続財産を確保できるという点では安心です。しかし、公共料金などの自動引き落としや、家賃収入などがその口座でおこなわれていた場合、凍結されてすべての取引ができなくなっていると不都合が生じるため、残高証明書の発行依頼をする前に、口座変更などの手続きを優先しておこなってください。

4-2. 残高証明書を請求する日付(基準日)はご逝去日

残高証明書の発行依頼書には、残高を証明する日(基準日といわれる)を記載する箇所があります。相続手続きで必要とされる「証明する日」は、「亡くなられた日」となります。金融機関より基準日はいつですか?」と確認された場合、亡くなられた日をお答えください。

依頼する日と勘違いされる方がいらっしゃいますが、亡くなられた日時点の証明でなければ、相続手続きの書類としては意味を成しませんのでご注意ください。

4-3. 定期預金などは既経過利息の計算まで依頼する

残高証明書は、通常、証明日の残高のみ、記載されます。相続財産に、定期預金などが含まれる場合は、亡くなられた日時点までの利息分も相続財産となりますので、既経過利息の計算まで依頼し、証明してもらうように注意してください。

特に、相続税申告の添付書類として使用する場合は定期預金については、既経過利息も証明してください」と金融機関に伝えていただくと間違いありません。既経過利息の記載は、無料で対応している金融機関がほとんどですが、別途手数料がかかる場合もあります。

5.まとめ

相続で必要となる残高証明書とは、相続発生時点で亡くなられた方の口座残高がいくらであったのか、正確な金額を金融機関が証明したものです。主に遺産分割協議をする場面や、相続税の申告をする際の添付書類として活用されます。

残高証明書の取得手続きは、金融機関の窓口などで、原則、相続人の方がおこないます。戸籍謄本や印鑑証明書などの必要な書類を揃えて依頼し、書類に不備な点がなければ、約1週間から10日間ほどで取得することができます。

相続を理由に、残高証明書を依頼することは、その時点で口座が凍結されてしまうことになりますので、入出金が必要な場合は事前に口座変更手続きをおこなってください。相続税の申告用に残高証明書を取得する場合は、証明日は亡くなられた日とする点、利息などが見込まれる場合は、既経過利息の計算まで金融機関に依頼することに注意してください。

残高証明書は、相続財産の正確な評価をするために必要となる大事な書類となります。取得するには、日数を要する場合がありますので、手続きは余裕をもって進めていただければと思います。

相続税申告で損をしたくない方へ

相続税の納税額は、その申告書を作成する税理士により、大きな差が生じます。
あなたが相続税の申告をお考えであれば、ぜひ当税理士法人にご相談ください。

OAG税理士法人が選ばれる
8つの強み

  1. 01【設立35年の歴史】国税OBが作った税理士法人(国税OBが多数在籍)
  2. 02相続専門税理士が多数在籍(グループ従業員数450名 / 士業関連の有資格者150名)
  3. 03申告実績:9500件以上(グループ累計)/ 年間:1200件以上
  4. 04女性税理士が多数在籍(きめ細やかな対応)
  5. 05相続関連の専門書多数発行
  6. 06トータルサポート(グループ内ですべてワンストップ)
    相続税申告、遺産整理、登記、不動産売買、弁護士対応など
  7. 07明瞭な料金設定
  8. 08税務署に指摘されない(税務調査の非対象)約98%

OAG税理士法人に依頼する
3つのメリット

  1. 考え方に幅のある「財産評価」を知識とノウハウで適切な評価をする
  2. 遺産分割を次の相続(二次相続)も視野に入れ、税額軽減の創意工夫をする
  3. 専門用語を使わないお客様目線の対応